26.消えろ消えろ
B隊が森の中で、馬を食べている間もA隊は森の中に攻めてこなかった。
「なんで攻めて来ないっぽ?ビビってるっぽ?」
ナンバー13のニットが疑問に思い、ヘルビンに尋ねた。
「A隊はもう後がないからっぴ。
丘の上にいる敵が破られたら、A国の中心部まで侵攻されて、A国国王が殺害されてしまうっぴ。
ニットの言う通り、ビビってると言ってもいいっぴ。」
「ヘルビン様、丘の上のA隊5万兵のうち、2万騎がどこかへ消えたそうです。
おそらく、B国側へ行ったのではないでしょうか。」
ヘルビンの側近の護衛兵がヘルビンに伝えた。
「それでも計画に変更はないっぴ。
逃げるっぴ。」
ランドビーやカルロス団やB2隊などがヘルビンのいる後方のB国側の森へ集まってきた。
「先陣を切るチームは準備完了しているっぴ?」
ヘルビンは視力がとんでもなく優れているメンタ・マーチに尋ねた。
「準備できております」
先陣を切るチームとヘルビンのチームは少し距離を取っている。
「分かったっぴ。」
「皆よく聞くっぴ。
馬に乗ってない隊員はここにいる馬に乗れっぴ。
先陣を切るチームが今から飛び出すっぴ。
こちらのチームも臨機応変に対応するから、心の準備をしておけっぴ。
カルロス副隊長は何かあるっぴ?」
ヘルビンが張りのある声で伝える。
カルロスは首を振った。
「先陣を切るチームに「森を飛び出して、直進してB国へ帰還しろ」と伝えてこいっぴ。」
ヘルビンがヘルッピー団の隊員にそう言った。
それを聞いた隊員は少し遠くにいる先陣を切るチームに伝えに行った。
「おーー馬すげーー」
ポールトは目を輝かせて、馬に飛び乗った。
ランドビーとポールトは馬車を持っているおじいちゃんに乗せてもらったことはあるが、自分が操作したことはなかったため、ワクワクした様子である。
「馬怖い怖い」
チンタマはビビりながら、馬に跨った。
「B国に帰って、お母さんにB1に昇格したって伝えないとな」
ランドビーは馬の肉を食べ、お腹いっぱいになり、戦闘モードである。
「俺もお母さんに伝えるぜ」
ポールトも戦闘モードになり、今にも飛び出しそうである。
「俺はB国に帰って、お父さんと下ネタしりとりするぜ」
チンタマも2人に感化され、戦闘モードに入る。
ヘルッピー団の隊員が「森を飛び出して、直進してB国へ帰還しろ」とヘルビンの伝言を伝え、先陣をきるチームが松明を持ち、森を抜け、B国へ向かう。
「我々も少し進むっぴ。」
ヘルビンが隊の中央から指示を出す。
先頭からB1隊5000騎、B2隊、カルロス団、ヘルッピー団、B1隊5000騎の配置となっている。
「ヘルビン様!!前方のチームが右側からA隊に襲われています!!
敵は森の外で待ち構えていたと思われます!!
我々には気づいていないと思われます!!」
「メンタ後方から敵は来てるっぴ?」
「来てないと思います。」
メンタは暗闇の中、目を凝らして伝える。
「ペースあげるっぴ。」
ヘルビンのチームはペースを上げる。
雨がどんどん強くなり、雷がゴロゴロと鳴っている。
「森を抜けたら、先頭のB1隊とB2隊は右側から来たA隊を殲滅しろっぴ。
カルロス団はその援護をしろっぴ。」
ヘルビンは馬で走りながら、指示を出す。
雨音や馬の走る音で聞こえない隊員は聞こえた隊員に確認する。
それぞれ返事をして、馬を最高速度で走らせる。
大きな村を左側の視界に捉え、森を飛び出した。
「我々は森の中で待機っぴ。」
ヘルッピー団とB1隊5000騎は森を抜ける目の前で急停止する。
——キンキンキン
森を抜けた先では、戦争が繰り広げられており、剣の交わる音が暗闇の中で鳴り響く。
左側には大きな村があり、右側からはA隊と先陣を切ったB隊が殺しあっている。
B1、B2、カルロス団が右側の敵の援護を開始する。
月明りと松明の光により、視界は良好である。
「な……トールさんは……」
ポールトは口が震える。
B隊が黒色の制服でA隊がえんじ色の制服のため、見分けがつきにくい。
しかし、とにかく大量に人が倒れている姿に恐怖した。
「——うおーーーーーー」
B1、B2、カルロス団は叫び声をあげて、A隊に突っ込んでいく。
突如として現れたB隊に不意を突かれたA隊は痛々しい声とともに次々と倒れていく。
B隊が優勢となり、B隊の隊員たちがさらに声をあげ、勢いを増していく。
「今が攻め時じゃーーーー」
カルロス副隊長は味方を鼓舞し、どんどん敵を葬っていく。
B隊がこのまま押し切れると思われたとき、雨音、雷鳴をも切り裂く声と馬の駆ける音が響いた。
「——消えろ消えろ」
声が聞こえたのはカルロスの後方——大きな村側から声が聞こえた。
カルロスは反射的に後ろを振り返る
大きな村側から馬の駆ける音が近づいてくる
少し距離は離れているが、カルロスは焦燥感を覚えた。
——この声は……
大きな村側からA隊がもの凄い速度で戦場へ近づいてくる。
「我々も飛び出すっぴ。
ついてこいっぴ。」
ヘルッピー団を先頭にB1隊5000騎を連れて、森を飛び出した。
「このままこの戦場を抜けて、B国まで一直線で走るっぴ。」
「倒れているものも起き上がり、ついてこいっぴ!!」
ヘルビンは最大の声を出し、戦場を駆け抜ける。
「トールは……どこだ……」
ランドビーはトールを探しながら、戦場を駆ける
チンタマ、ポールトもトールの名を叫び、戦場を駆ける
B隊で倒れていた兵が倒れている馬を起こして、少しずつヘルビンのもとへ集まってくる
大きな村側から飛び出したA隊はカルロスの方へ向かう隊とヘルビンの方へ向かう隊の二手に分かれた。
「ヘルビン様、左手から5000騎ほど敵が迫ってきます!!」
「分かってるっぴ!!」
ヘルビンは怒号交じりの声を出した。
——あの消えろ消えろという声は
A隊ナンバー1のクルシャ・キエーマっぴ。
絶対逃げ切るっぴ。
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