21.始まりの朝ごはん
「チンタマ、おばあちゃんの食料取ってこれるか?」
ランドビーが家の扉の前で背を向けて、寝たきりのガリガリのおばあさんを見守るチンタマに尋ねた。
「ああ」
「頼んだぞチンタマ」
ポールトはチンタマの肩を両手で持った。
チンタマは立ち上がり、「任せろ」と言って、家を出た。
「慎重にいくぞ、ポールト」
「おう」
ランドビーとポールトは少し話し合い、家を出て、おばあさんの家の前で待機する。
「くーーみんな食料持っていっちまったな」
「人がいても殺して、食ってやる」
坊主2人組は明らかにやばいことを言いながら、隣の家を出て、ランドビーとポールトが待機しているおばあさんの家に向かってきた。
「この家も食料なかったよーー」
ポールトが坊主2人組に向かって、にこやかな笑顔で伝えた。
「……そうなんだ。教えてくれてありがとう。」
「とでも、言うと思ったか」
坊主2人組はよだれを垂らして、ランドビーとポールトの前に立った。
ランドビーとポールトは坊主2人組を見上げ、にらみつけた。
「ないって言ってんだろ。」
ランドビーは腰に携えている剣を持ち、坊主が動いた瞬間、剣を抜く姿勢を見せる。
「ガキよ。怪しいと思わないか?いきなり、何もありません。なんて」
「教えてあげただけですよ。もうそろそろ戻って来いという連絡が来ると思いますし、早く、違う家で、食料探しましょうよ。」
ポールトは内心焦っていた。
確かに、いきなり食料ないですよと伝えて、素直に信じてくれるわけがない。むしろ、怪しすぎる。
……やらかした
「そうだな。時間もないことだし、どいてもらおうかガキ。」
坊主の1人が剣を振りかぶった。
——遅い
ランドビーは楽々回避した。
ロールおばさんの瞬間移動の方が1000倍速い
ランドビーが回避したのと同時に、ポールトはすかさず、坊主の股間に蹴りを入れた。
ポールトが体勢を崩しているのをみて、坊主が剣を振りかぶったが、振り終わる前に、ランドビーが股間に蹴りをいれた。
「……あ……あ……あーー」
坊主2人組は股間を押さえて、地面に横たわりもがき苦しんでいる
「俺らこんなに強かったっけ?」
ポールトが首を傾げる。
「警戒しすぎた。でかいだけだったな。」
ランドビーはそう言って、入念に坊主2人の股間を蹴りまくった。
ポールトは思った。
少し前のランドビーなら、闇雲に突っ込んでいた……
ランドビーが以前よりも自信をなくしていると……
坊主2人組はこっそり2人のまえから、逃げていった
「ランドビー!!ポールト!!」
チンタマが鳥1匹を肩に担ぎ、走って戻ってきた
「大丈夫だったのか!?」
チンタマが汗をふき、息をあげながら、尋ねる。
「当たり前だろ。なめんな。」
ランドビーは誇らしげに言った。
「……チンタマのほうこそ、大丈夫だったか?」
ポールトには、ランドビーが強がっているように見えた。
「ごめん。一匹しか狩れなかった」
「十分だろ。おばあちゃんに早く食わしてやろーぜ。」
ランドビーは周りに落ちている枝を集めて、火をおこし、鳥を焼き始めた。
ポールトは、ランドビーが鳥を焼いているあいだ、ある問題に頭を悩ませていた。
「おばあちゃん、鳥だ。食え。そこのゴーグルつけたやつが取ってきてくれたんだ。」
ランドビーはチンタマを指さして、おばあちゃんの口元に鳥を持っていく。
「いいの。あなたたちで食べて。」
おばあさんは口を押えて、鳥を返す仕草をした。
「なんで?」
ランドビーがもう一度、おばあさんの口元に鳥を持っていく。
「——どうやってこのおばあちゃんの面倒を見るんだ?ランドビー」
ポールトが口を開いた。
ポールトが頭を悩ませていた問題……それはこのおばあちゃんの面倒を見る人がいないことである。
この村にはこのおばあちゃんしかいない。
ランドビーたちがA国侵攻を再開したら、面倒を見る人がいない。
「ランドビー……仕方ないだろ。
これが戦争の現実なんだ。
俺たちは何も知らなかった。」
「じゃあ、俺がここに残る」
「しっかり、点呼されるぞ」
「……それでも残る」
「——民兵、B3隊、10分後に出発するから戻って来い。」
B2の隊員が村にやってきて、大きな声を出しながら、見回りをしている。
「一生ここにいるつもりか?ランドビー」
「B隊がB国に戻るまでここにいる」
「ヘルビン隊長のことだから、何日A国にいるか分からないぞ」
ランドビーとポールトは言い争う。
「——お前たち何してるんだ」
言い争いの声を聞かれたのか、見回りのB2兵にドアを開けられた。
「もう戻ります」
チンタマが咄嗟に言葉を返す。
ランドビーとポールトは言い争いを止めて、黙りこんだ。
B2兵はうっすら聞こえた言い争いの内容とこの雰囲気でなんとなく察した。
「お前たち、B隊のするべきことはなんだ?」
ランドビーはフルトム隊長の言葉を思い出す。
『B隊は国に貢献するから尊敬され、特別な待遇が用意される。それを忘れるな。』
「……B国に貢献することだ。」
ランドビーがボソッと答える。
「B国に貢献するためには、人の心を捨てろ。別に殺せとは言ってない。」
B2兵は扉を開けて、家を出ていった。
「……ランドビー行くぞ……おばあちゃんごめん……」
ポールトは重い足取りで家を出る。
「おばあちゃん……ごめんなさい」
チンタマはゴーグルに涙を溜めて、家を出る。
——分からない……フルトム隊長の夢……戦争がなくなること
それはB隊で達成できることなのか……
達成できないなら、なぜフルトム隊長はB国に貢献することが重要だと……
いや、俺は意味を理解できていないかもしれない
分からない
俺はそもそもルイを探すために、B隊に入った。
今では戦争がなくなることも目標だ。
じゃあなんで、俺は戦争しに来たんだ?
フルトム隊長の仇を取るため、ルイの情報を集めるため、強くなるため。
フルトム隊長は別に仇を取ってくれとは言ってない
ルイの情報を集めるのも戦争に行かなくてもできる
強くなるのも戦争に行かなくても……
じゃあ、俺はなんで戦争に来たんだ……
フルトム隊長が死んで、悔しかったから、悲しかったから、その勢いで戦争に来たんだ
じゃあ、どうすれば、戦争をなくすことができるのか……
じゃあ……
じゃあ……
じゃあ……
「——坊や。落ち着きなさい。」
ランドビーは手に鳥を持ったまま、気づけば、過呼吸になっていた
「はぁはぁはぁはぁ」
おばあさんは静かに話し出した
「ありがとう、こんな寝たきりのばあばのために。
ばあばね。寝たきりだから頭の中でずっと考えるのよ。この世界は残酷だって。
そんな残酷な世界に、こんな優しい子がいたなんてね。知らなかったわ。
坊やが輝いて見えるの。ばあば初めてだわ。世界がこんなに綺麗に見えるなんて。
坊やありがとう。最期に世界がこんなに綺麗だって教えてくれて。」
「……俺は分からない。戦争がどうすればなくなるのか。」
「世界がこんなに綺麗なら、戦争はなくなる。」
………
「そう。綺麗な心を持てば、戦争はなくなる。」
「坊や。その綺麗な心を忘れないでほしい。」
「坊やのすること全てが綺麗なの。」
「坊や名前は何かしら。」
「ランド・ブレークファースト」
——おばあちゃんの目が輝いている。
「……朝ごはん。美しいわ……
ランド・ブレークファースト。
あなたの心のままに生きなさい。
あなたが心のままに生きれば、この世界から戦争はなくなる。」
「ワルツ・ホープの命にかけて」
「最後に、その鳥半分ずつ、いただかないかしら?」
「……う、、、ん」
「いただきます。」
「……いた、だきます」
「ああ、綺麗だわ……世界の始まりは朝ごはんから。」
「ホープおばあちゃん……も、、う、昼だけ、ど」
「ばあばにとっては朝ごはんよ」
おばあちゃんは満足そうで綺麗な笑顔を浮かべて、息を引き取った。
ランドビーは涙を流して、身がなくなった鳥を食べ続けた。
エピソード21.始まりの朝ごはんを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
これからも「始まりの朝ごはん」をよろしくお願いします。




