19.戦の天才
B隊はA国の防壁に突撃を開始した。
民兵が突撃役で、後方からヘルビンの直属兵のヘルッピー団とカルロス団が弓で援護を行う。
民兵は中央を一点突破しようと突っ込むが、次々と矢で倒されていく。
それでも、民兵は突撃し続けて、ようやく防壁の懐に何人かが入っていく。
そして、防壁にはしごをかけることに成功した。
「とにかく中央っぴ。」
中央に集中して、どんどん民兵を突撃させる。
「……ひどい」
後方で待機を命じられたチンタマは次々と倒れていく民兵をみて、目を伏せた。
ポールトとランドビーは何も言葉を発することなく、ただただその惨状を見つめている。
A国の弓兵が防壁の懐に入り込んだ兵を狙っているが、なかなか当たらない。
ヘルッピー団とカルロス団の弓兵たちは防壁の上にいるA国の弓兵を着実に射抜いていく。
「中央にもっと人を持ってこい」
そのように指示したのはA隊ナンバー10のソーダ・クルダである。
ソーダ・クルダはヘルビンと同じく頭脳派の兵であり、安定感が評価されている。
A国の兵たちは着実に減っていく弓兵を補充するために、左右の弓兵を中央に持ってくる。
「なんでわざわざ防壁を破ろうとしてるんだよ。もっと違う場所から攻めたらいいだろ。あのチビ」
ランドビーが疑問に思ったことを口にする。
確かに、ランドビーの言う通り、遠くの方には、防壁が途切れているところがある。
「足場悪くて通れないとか、罠が仕掛けられている可能性があるんじゃないか。俺もよくわからないけど。」
チンタマは推測を述べた。
「なるほどな。ヘルビン隊長からしたら、小細工ができない防壁を突破する方が簡単ということか。」
ポールトは納得した顔で、頷いた。
はしごを上っている民兵も出始めたが、その民兵はA国の弓兵に撃ち落されていく。
「そろそろっぴ。次私が両手を挙げたら、指示通り動くっぴ。」
ヘルビンはB2隊2500名を集めて、指示をし、B2隊を左右に配置する。
中央では、民兵をたくさん送り込んでいるが、なかなか突破できない。
B2隊が準備できたことを確認し、ヘルビンは両手を挙げる。
——タッタッタッタ
左右に分かれたB2兵は同時に防壁に向かって、静かな足音で素早く走り始めた。
A隊ナンバー10のクルダはヘルビンの考えていることをある程度読んでいたが、思った以上に早く仕掛けてきたこととB2隊の素早さによって、遅れを取ってしまう。
「さっきの配置に戻せ!!」
クルダは慌てて、配置を戻そうとするが、B2隊の兵たちは防壁の懐に侵入することができた。
そうなると、弓では打ちにくくなる。
「もう間に合いません!!」
B2兵は手慣れた手つきではしごをかけ、上り始める。
左右に残っていたA国の弓兵も対応しようとするが、B2兵は盾を持っているため、弓矢が防がれてしまい、左右両方とも、防壁の上に登られてしまった。
B2兵は剣でA国の弓兵を次々と倒していく。
両側から挟み撃ちの形となり、A隊は詰みである。
「っく……退散だ……A隊ただちに退散しろ!!」
クルダの命令を聞いたA隊の兵士たちは階段を猛ダッシュで下りていく。
しかし、B2の兵士たちが逃すはずもなく、防壁を下りようとしているA隊の兵士たちの背中を刺していった。
「A隊ナンバー10のソーダ・クルダを仕留めろ!!」
B2の兵士がそう叫んだが、クルダにはたくさんの護衛がついていたため、惜しくも逃がしてしまった。
逃がしてしまったが、午前中の間に防壁を突破することができ、防壁攻略は大成功であった。
一段落してから、B2兵は防壁の内側から頑丈な門を開けて、何もしてないランドビーたちはA国に入った。
「午後からが勝負だな」
ポールトは午後からが勝負だと意気込んでいる。
「緊張してきた。今のうちに、息子を揉んでおこう。
ランドビーとポールトもしっかり揉んでおけよ。」
チンタマは自分の股間を揉みながら、言った。
ランドビーとポールトはチンタマのおかげで下ネタの知識が自然と身に付いてきたので、ランドビーとポールトも自分の股間をしっかりと揉む。
「なんか落ち着くぜ」
ランドビーはニマニマしながら、揉み続けている。
午後に向けて、3人は準備万端であった。
しかし、ある報告が届く。
「は?今日は防壁で待機!?」
ランドビーが声をあげる。
「ヘルビン隊長の判断だって。よく分からんな。」
ポールトは頭を掻きながら、言った。
3人は午後の戦争に向けて、気持ちを高めていたので、この報告は拍子抜けである。
意味のわからない報告を受け、防壁付近で全兵が待機した。
待機し続けて、夜を迎えた。
今夜は日中とは変わって、0度を下回り、今にも凍りそうな気温である。
「俺ら出番なしかよ」
ランドビーは不満そうに配られた芋にかじりつく。
今日の食事は芋だけであった。
「あのチビは呑気に肉とか果物とか食ってんだろ。ふざけんな」
ランドビーはキレ散らかしている。
兵士たちは焚き火を焚いて、野宿することになった。
3人も焚き火をたいて、それを囲んで食事をとる。
「B3隊が見張りやっとけって言われるしな」
ポールトも文句を言って、芋を水で流し込む。
「明日は出番あるだろ。今日はおとなしく自分の息子の手入れをしとこうぜ。」
チンタマはチンタマのチンタマの手入れは入念である。
「そうだな、息子の手入れは重要だな」
ポールトは笑いながら、自分の股間を見つめて言った。
3人は眠い目をこすりながら、交代制で見張りを行った。
「ヘルビン様、明日も待機ですよね?」
ヘルビンの側近の護衛兵がパンを食べながら、尋ねる。
「アップルパイ国で食べるりんごは最高っぴ。
もちろん、明日も待機っぴ。」
アップルパイ国、通称A国。
簡易式の建物を建てて、豪遊するヘルビンはりんごや豚肉、パンなど思いのままに食べている。
「失礼します。」
カルロス副隊長は簡易式の建物のドアをノックして、入ってきた。
「何の用っぴ。」
「待機の理由をお伺いしたいと思って参りました。
食料を確保するために、待機されているのは分かりますが、時間をかければかけるほど、A隊の準備時間が増えて不利になります……どのようにお考えで?」
食料は防壁を経由して運んでいるため、食料の経由先を奪い返されてはB隊が餓死してしまう。
「防壁を守る」という意味で待機するのは理解できる。しかし、A国侵攻を掲げている以上、攻める必要がある。
——ヘルビン隊長は戦争でまだ一度も負けたことがない
正に戦の天才
俺なら、防壁を攻略した勢いのまま、侵攻したかった
「——天気が読めるからっぴ。
……冗談っぴ。
……待機理由なんて言うわけないっぴ。
誰が情報を漏らしているか分からないっぴ。」
ヘルビンがカルロスの問いにニコニコしながら、答える。
——まあ、聞いても教えてくれないわな
ヘルビン隊長の直属兵は2000人いるはずだが、今いる200人を除いた、残りの1800人がどこにいるか分からないし
ヘルビン隊長の右腕B隊ナンバー13ニット・ルーカスの姿もない
謎の多い人の指示は聞きづらい
「……なぜB隊に?」
数秒の沈黙の後に、カルロスが口を開く
「気持ちいいからっぴ。」
返答になっていない。
カルロスは頭を下げ、扉を開け、建物を出た。
そして、何事もなく朝を迎えた。
ランドビー、ポールト、チンタマは「今日こそは」という気持ちで朝を迎えたが、今日も待機だと知らされた。
エピソード19.戦の天才を最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!
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