18.突撃っぴーーーーーーーー
A国侵攻当日
「私はB隊ナンバー3のナッピー・ヘルビンと申すっぴ。
今回のA国侵攻の隊長を任されたっぴ。
今からA国に侵攻するっぴ。
1万人が集まる景色はいつ見ても絶景っぴ。
私の命令には必ず従ってもらうっぴ。」
あられが降っている今日、中央本部の出口にB隊5000と民兵5000、合わせて1万の兵が集まった。
マッシュルームカットで性別不詳のトップ3ヘルビン。
目の周りを黒く塗りつぶしており、パンダのような見た目である。
身長もランドビー、ポールトより少し大きいくらいで全く強そうに見えない。
ヘルビンは大きな台に乗って、兵を見下ろしている。
その両隣に、ヘルビンの護衛とみられる護衛兵が2人、その横にカルロス副隊長が立っている。
「ちなみに、私は戦闘できないっぴ。
弱すぎるっぴ。
でも、頭の賢さはB国で一番っぴ。
私を信頼するっぴ。」
白い制服を着たヘルビンは右上についている黒色のBの文字を手で叩いて、得意げな様子である。
「あんなチビ、信頼できないだろ。」
ヘルビンよりもチビなランドビーが文句を言う。
ランドビー、ポールト、チンタマはA国侵攻に向けて、装備を準備し、身に付けている。
「お前が言うな」
ランドビーより少し大きいポールトが頭を軽く叩いた。
「ヘルビンさんは胸のあたりが盛り上がってないので、男の子に見えますねーー。
女の子だったら、なんか歪んじゃいそうです。」
チンタマはヘルビンの性別に関して、誰も意見を求めていないのに、勝手にお気持ちを述べ始めた。
「あんなチビ、女に決まってるだろ」
ランドビーがヘルビンを指さしながら、腹を抱えて、笑った。
——シュッ
ランドビーの顔の真横に鋭い弓矢が通過した。
ランドビーほんの少し動けば、当たるところだった。
「そこのガキっぴ。次、私のことを笑ったら殺すっぴ。」
真剣に聞いていた兵たちに緊張感が走る。
ヘルビンの横にいる2人の護衛兵のうち、左の護衛兵がランドビーの真横を狙撃した。
「うぁ――――ご、ごめんなさい!!」
チンタマは慌ててランドビーの頭をもって、頭を下げさせた。
「なにすんだよ」と言いかけたランドビーの口をポールトは手で押さえて、もう片方の手で、ランドビーの首を絞めた。
それを見たヘルビンは大きく7回頷いた。
「今回のA国侵攻はA国の土地を奪うための戦争ではないっぴ。
このあいだ、A国がB国に侵攻してきた仕返しっぴ。
国王様からA国の戦力を削って来いと命令を受けたっぴ。
つまり、皆はA国の兵を殺しまくれっぴ。
さらに、名のあるA国の兵士の首を取れば、報酬が渡され、昇格されるからみんな頑張るっぴ。
民兵も夢があるから頑張るっぴ。」
兵士たちから歓声が上がった。
やる気が出てきたようだ。
「カルロス副隊長何か言いたいことあるっぴ?」
カルロスは軽く首を振った。
「じゃあ、行くっぴ。」
もう一度、兵士たちから歓声があがる。
ヘルビンは台から降りて、護衛兵に抱っこしてもらい、ヘルビンより遥かに大きい馬に乗せてもらった。
カルロス副隊長も馬にまたがった。
「やっとだぜ。俺らの特訓の成果を見せてやろうぜ。」
「楽しみだなランドビー」
「俺は走り込みしかやってないけど」
チンタマは真顔でそう言った。
ランドビーとポールトはケタケタ笑った。
馬に乗っているB隊の隊員はB1隊のみで500騎だけである。
カルロス団300騎、ヘルビンの直属兵——通称ヘルッピー団200騎、計500騎である。
騎馬が先に歩き、その後を歩兵が歩いていく。
「ヘルビン隊長のチームよりカルロス団の方が馬の数は多いらしいな」
チンタマはあられの中、一歩一歩着実に歩く。
「そうだな。ナンバー3のヘルビン隊長の方がてっきり多いと思ってた。」
手をこすりながら歩くポールトが淡々と言った。
「B隊のナンバー3があれとかヘンテコにもほどがあるな、カッカッカッ」
ランドビーは癖のある笑い方をして、ヘルビン隊長を馬鹿にする。
騎馬と歩兵の距離はかなりあるから、ヘルビンには聞かれてなさそうだ。
そんな雑談をしながら、歩いているとある男に声を掛けられた。
「ランドビー、ポールト、チンタマ久しぶりだな。」
ある男とは、護衛兵トールである。約1か月前から何も変わっておらず、普通の顔で、普通の髪型である。
「え?トールだ。護衛じゃなくて、戦いに行くのか?」
ランドビーは少し驚き、尋ねた。
ポールトとチンタマは再会できて、嬉しそうである。
「ああ……私情だけど、尊敬していたフルトム隊長の仇討ちをしなければ気が済まないからな。」
トールは今まで戦争で人を殺すよりも、国の護衛の方が向いていると思っていたが、フルトム隊長の死を受け、雪辱を果たすつもりである。
「トールさんはヘルビン隊長のもとで訓練されていたのですか?」
ポールトはトールとの再会が嬉しかったのか、声色が少し変化した。
「そうだ……でも、あの訓練はもう2度とごめんだ。」
「確かに、ヘルビン隊長明らかにドSだもんね」
トールは「それな」と笑った。
「ドSってなんだ?」
ランドビーはチンタマのよく分からない単語に反応した。
ポールトも頷く。
「あーーお前たちまだ9歳だもんな。要するにいじめるのが大好きな人だよ。それが発展すると、性癖とかに……お子様には早いな」
チンタマはニヤニヤしながら答えた。
もちろん、ランドビーとポールトはその先の話が気になったが、チンタマは教えてくれなかった。
チンタマは教えるのがめんどくさくて、教えなかった。
少しの間、トールと3人は和気あいあいと会話した。
「それじゃあ、健闘を祈る」
トールは別のチームに所属しており、元のチームに戻っていった。
3人は手を振った。
そうして、7日が経った頃、ようやくA国の防壁に辿り着いた。
A国の防壁はB国の防壁より少し高い。
しかし、この間の侵攻でB国の防壁がA国に容易に破られたことを考えると、この高さも楽勝なのだろうか。
B国とA国の境には、様々な建物が立っており、その建物内で一夜を明かして決戦当日の朝を迎えた。
当日の朝は珍しく、快晴である。
「な……俺らが攻めるの完全にバレてるのかよ」
ポールトはA国の防壁を見て、恐怖を感じた。
A国の防壁の上には、1000名を超える弓矢を持った兵士たちがずらりと並んでいる。
待ち構えていたかのように準備万端に見えた。
「こんなの突破できるのかよ……」
チンタマは35メートルを超える高さの防壁に加えて、弓兵が立っている姿を目の当たりにして、絶望を感じた。
A国の防壁は中央本部の五階建ての建物の二倍以上ありそうだ。
「カッカッカ……これが戦争か」
ランドビーも戦争の現実を目の当たりにし、思わず癖のある笑い声をあげた。
——ダンダンダン
低い音が鳴り響く。
大きい太鼓の音が心臓にまで鳴り響く。
「みんな聞くっぴ。
この間の戦争でB国はたくさんの人が死んだっぴ。
やられっぱなしじゃ終われないっぴ。
突撃っぴーーーーーーーー」
ヘルビン隊長の甲高い声が風の音とともに聞こえてきて、兵士たちは叫びながら防壁に向かって、突撃した。
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