17.夢を叶える
「ランド・ブレークファーストだ。ランドビーと呼んでくれ。」
「プルノ・ポールトです。今日もよろしくお願いします。」
昨日は自己紹介もせずに、ロールさんに稽古をつけてもらったから、改めて自己紹介することになった。
「コート・ロールです。昨日は本当にごめんなさい。今日からは落ち着いて、指導するので、よろしくね。」
ロールさんは昨日とはかわって、気性が落ち着いている。お腹がいっぱいなのだろうか。
チンタマを含む大半の隊員たちは今日も走り込みをしている。
チンタマは今朝行きたくないと半泣きだったが、なんとか走っているようだ。
「それでなんですが、カルロス様がランドビーくんとポールトくんのことをとても評価していました。なぜかというと、根性があるからです。まず根性があること。そして、運動能力が高いこと。その二つが評価されて、カルロス様のチームでトレーニングしているのです。それはすごいことなのですよ。」
「ふーーん。でも、俺たちは色々達成しなければいけないから、そんなことは当たり前だ。」
ランドビーは褒められても、以前より喜ばなくなった。
喜んでいる場合ではないと。
「そうだなランドビー。褒められることは嬉しいですが、それよりも情報がたくさんほしいです。」
ポールトも落ち着いた雰囲気を醸し出している。
「幼いながらに色々抱えているのですね。深くは聞かないことにします。何かあれば、この私を頼ってください。信用ないかもしれませんが……」
「頼らせてもらいます。」
「あら、嬉しい。」
ロールはしゃがみ込んで、ポールトの肩をもって、再び頬にキスをした。
「はやく稽古しようぜ。」
ランドビーは昨日ロールにボコボコにされたことの借りを返したくて、ウズウズしている。
「そうですね。では、稽古を始めますが、改めて伝えます。あなたたちはわかっていないと思いますが、この年齢でカルロス様に一目置かれているのは本当にすごいことなのです。つまり、すごいということをまず自覚してほしいのです。
その上で、1ヶ月後に控えるA国侵攻ですが、2人は実践ではまだ通用しません。」
「いや、俺たちは実践をめちゃくちゃ経験してきたし、毎日特訓してきたんだ。」
ランドビーはすかさず、言い返した。
「もちろん、戦闘能力が自然に身についてきたものもあると思います。戦ったことはあまりないでしょうが、実際に運動能力が高いから、それで通用するかもしれません。
しかし、そんなザコい敵を倒しても意味はないと思います。強敵を倒してこそ、君たちの目標に届くのではないでしょうか。何の目標かは知りませんが。」
2人は頷いた。
「私はあなたたちの目標なんて興味ありません。強ければ何でもいいのです。強ければ、この世界を生き抜くことができます。ということで、特訓するわけなんですが、まだまだあなたたちは弱いです。だから、これを使って、特訓してもらいます。」
ロールがそう言って持ってきたものは重そうな物体だ。
「これは重りといって、足首や手首に巻き付けて使うものです。実際につけてみてください。」
2人は初めて見る重りに戸惑いながらも、重い鎖を足首に巻き付けて、手首にも装着した。
重すぎて、2人は座り込んでしまった。
——なんだこれ……重すぎるだろ
「みんな初めはそんな感じになるので、気長に慣れていってください。」
ロールさんはその後も色々説明してくれた。
俺たちの運動能力と大人の運動能力の間には大きな差があること。
戦闘において、運動能力がとても大事なこと。
運動能力を伸ばすには重りをもって、運動することで伸びること。
そして、自分で考えて、トレーニングすることが上達の近道であること。
「色々教えてくれて、ありがとうございます。話が変わるのですが、2つ聞きたいことがあります。
1つ目は世界脱獄集団について、何か知っていることはありませんか?
2つ目がこの世界から戦争がなくなる方法はありますか?」
重りで座り込んだままのポールトは情報を集めようと、ロールに尋ねた。
ロールは眉をひそめて、ゆっくりと話し始めた。
「1つ目については、カルロス様に聞いてみるといいわ。カルロス様はああ見えて、博識なの。」
確かに、オールバックの髪で筋肉ムキムキだから、賢そうには見えない。
「2つ目については……私も考えたことがあるの。それはどうして知りたいの?」
「フルトム隊長の夢だから」
ランドビーは強い眼差しをロールに向けた。
「そう。フルトムさん……ちょっと意外だったわ。
まあ、戦争をなくすことはとても難しいわ。
私は諦めてしまったの。
目の前の仲間がどんどん死んでいったけど、止めることは無理だった。
戦争はなくならないと思ってしまった。
そこから私は自分が生き残ることだけ考えて、今まで戦ってきたの。
軽蔑するでしょ。」
2人は首を横に振った。
「でも、勘違いしてほしくないのは戦争がいつかなくなると信じてるし、あなたたちならできそうと思っちゃった。私の諦めてしまった夢もついでに叶えてくれる?」
「もちろんです」
「ああ」
2人は改めて、戦争をなくしたいと強く決意した。
その後、ランドビーとポールトは重りをもって、自分で考えて、特訓を重ねた。
初めは上手に動くことはできなかったけれど、徐々に慣れていき、重りを持って、3週間が経った頃には、完璧に使いこなしていた。
カルロス副隊長に世界脱獄集団について、質問したかったけれど、カルロス副隊長は忙しく、時間をとってもらうことができなかった。
そうして、A国侵攻の前日になった。
「2人とも、もう重りを外していいわよ。」
ランドビーとポールトは重りをつけてから1度も外さず、食べる時も寝るときも重りとともに過ごしてきた。
2人は重りを外して、手首と足首を回した。
「ふうーーめっちゃ体が軽くなって、今ならロールおばさんをボコボコにできそうだぜ。」
ランドビーはぴょんぴょん飛び跳ねて、今にも殴りにかかりそうだ。
「あら、生意気な」
「俺もロールさんボコボコにできそうです。」
ポールトもニヤニヤしながら、戦う姿勢を取った。
すると、ロールは瞬間移動をする構えをみせ、瞬間移動した。
——動け、体を動かせ
体は以前より身軽になり、体を動かすことはできたが、2人はお腹をグーで殴られてしまった。
——くそ
「そんな急に、強くなられたら、私の立場がなくなってしまうもの。ランドビーとポールトはまだまだ、強くならないといけませんよ。
あ、そうだ。カルロス様が少し話すことができるとおっしゃっていたので、食堂でまた会いましょう。」
ロールは優雅に訓練場を出ていった。
「まだまだだな。」
「ランドビー落ち込んでるのか?」
「落ち込んでねーわ。あと1週間もしたら、おばさんボコボコにできるわ」
乾燥している空気の中、2人は訓練場を出て、食堂に向かった
「カルロス副隊長、お久しぶりです。」
「ああ、悪かったな。話したいことがあるって言ってたのに、なかなか時間が取れなくて」
ランドビーとポールトとチンタマは食堂で芋と卵とレタスを貰って、カルロス副隊長の近くの席に座らせてもらった。
カルロス副隊長の夜ご飯はパンと牛肉と果物の盛り合わせで、豪華すぎる食事である。
「おっさん、お肉を分けてくれ。」
ランドビーはよだれを垂らして、羨ましそうな目をして、カルロスに頼んだ。
「無理だ。はやく、ナンバー10入りするのだな。」
カルロスは笑って、きっぱり断った。
「カルロス副隊長はチン長何センチですか?かなり大きそうですが……」
チンタマはくだらないことが気になった。
「30センチだ。君面白いな。」
カルロスは大笑いして、チンタマの肩をたたいた。
「でっか。」
ランドビーとポールトも大笑いした。
「それで話というのは何だ?」
「はい。世界脱獄集団について何か知っていることはありますか?」
ポールトが尋ねた。
カルロスは目の色を変えて、話し始めた。
「世界脱獄集団をその年で知ってるとは、君たちは大人だ。
まあ、明日にはA国侵攻だ。A国侵攻で生き残っていたら、教えてやろう。だから、3人は生き残れよ。」
カルロスは牛肉を頬張り、水で流し込んだ。
3人は頷いた。
「ところで、お前たちはチームだろ?チーム名とかスローガンとか決めてるのか?」
「…………スローガンって?」
ランドビーは首を傾げる。
「俺たちはカルロス団という名前で、300人がカルロス団に所属してる。
直属の精鋭の兵だから、とんでもなく強い。
3年前の大戦以降誰も死んでない。
というのも、スローガンが『自分が生き残ることだけ考えろ』というスローガンだからな。
みんな生き残ってるんだ。
何だったら、お前たちもカルロス団に入るか?」
「いや、いい。ランドビー団として活動していく。」
ランドビーはすぐさま断った。
「もっといい名前を考えろよ。」
「カルロス団もなかなかだろ。」
ランドビーが少しキレてるのをみて、カルロスはクスクスと笑った。
「ランドビーもっといい名前考えようぜ。」
「俺もポールトに賛成」
ポールトとチンタマはランドビー団にかなり納得のいってない様子である。
「……名前は考えておいてやる。スローガンは『夢を叶える』だ。」
「スローガンはいいんじゃね?なあ、チンタマ」
「そうだな。下ネタで世界を救わせてもらうぜ。」
みんなが笑った。
そして、A国侵攻当日を迎えた。
エピソード17.夢を叶えるを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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