14.最高のパパ
ランドビーは真っ暗な夜の中、冷たい雨を浴びながら、ずっと、何も考えずに走り続けた。
もうどれぐらい走ったか分からない。
幸いなことに敵にまだ追い付かれていない。
ママは3歳の妹のニーナを抱きながら、山を駆け上がり、急斜面を下ろうとした。
——その瞬間……
『——ママ!!』
『——ギャーーーーーーーー』
悲鳴が山に轟いた。
『っう……く……っう』
『うぁーーーーんママ!!ママ!!』
ママは斜面で足を滑らせて、悲鳴をあげた。
ニーナを庇ったため、左足に大怪我を負った。
ニーナはママが大変なことになってると分かり、泣き叫ぶ。
『ママ!!大丈夫?!』
ランドビーは駆け寄って、足の状態を確認したが、もう歩けない状態だとすぐに分かった。
『っう…ブレークファースト……私をおいてニーナと逃げなさい』
『そんなことできない』
『いいから逃げなさい』
『嫌だ……そこの岩のところまで行こうよ……』
近くに岩の窪みがあり、ちょうど隠れられそうなところを発見したランドビーはお母さんを少しずつ引っ張り始めた。
『ニーナも手伝って』
『うん……お……兄ちゃん』
ニーナは泣きじゃくりながら、小さな体でママを引っ張った。
『—— 2人ともやめなさい』
お母さんは山中に響く、大きな声で叱ったが、ランドビーは初めて、ママの言うことを聞かなかった。
ママはそれ以降何も言わなかった。
時間はかかったが、なんとかママを岩の窪みまで引っ張ることができた。
そこから、ランドビーは近くの木から枝をちぎって、ママと妹が見えなくなるまで覆い隠した。
ランドビーはママと妹とは別の場所に隠れて、敵が来ないか、見張っていたが、全く来なかった。
そうして、朝になり、また夜を迎えて、何も食べずに、2日が経った。
水はずっと雨が降っていたからなんとかなったが、食料に関しては、嵐が続いており、ランドビーが一生懸命探したが、見つけることはできなかった。
『ママ……お腹減った』
ニーナはお母さんのことを心配し、我慢していたが、つい本音を漏らしてしまった。
『ごめんね……ニーナ』
『うぁーーーーん』
ニーナはまた泣いてしまう。
謝られたくて言ったわけじゃなかったから。
ランドビーもお腹が減りすぎて、動けなくなってきた。さらに、雨で体が冷えて、意識を保つのもやっとである。
そろそろ、敵が侵略してきてもおかしくない。
そんな恐怖も抱えながら、6日目の夜を迎えた。
ママも妹もランドビーも限界を超えた限界を迎える。妹に至っては呼吸が浅くなり、呼吸困難になっていた。
『誰か……助けて……』
ランドビーは仰向けの状態で天を眺め、とても小さな声で助けを求めた。
——ガサガサガサガサ
落ち葉を踏む足音が徐々に近づいてくる。
敵かな。
もう動けないや。
ランドビーは死を覚悟した。
『——ブレークファースト』
意識が朦朧としているなか、意識を引き裂く図太い声が頭に飛び込んできた。
——パパの声だ。
『ブレークファースト……よく頑張ったな。もう大丈夫だからな。』
パパは仰向けの俺を抱きしめた。
『ママとニーナはどこにいるか、分かるか?』
『あそこにいる』
ランドビーは岩の窪みを指さして、そう言った。
『そうか、じゃあ一緒に行こうか。ママとニーナを守ってくれて、ありがとう。ブレークファースト』
パパは俺を抱っこしてくれた。
『パパ……そんなことより……その体……』
抱っこしてくれたパパの体は全身血だらけだった。
『ああ、気にするな。家族みんなで集まれば、何も怖くない。』
そう言って、パパは全身ボロボロの体で抱っこしながら、一歩ずつ、一歩ずつ、岩の窪みに向かった。
『ニーナ!!ジェシー!!』
パパは呼吸困難のニーナとニーナを抱きしめ、座り込んでいる左足に大怪我を負ったママ——ジェシーをみて、声を荒げた。
『パッパッ』
ニーナはパパがきた安心感から泣き喚く。
『ランチ……』
ママは全身血だらけのパパ——ランチをみて、言葉を失った。
『もう大丈夫だ。』
パパは痩せ細った3人、俺とニーナとママを抱きしめた。
そして、パパは深呼吸した。
『俺はこの家族が大好きだ。
ジェシー、ブレークファースト、ニーナ俺の家族になってくれて、ありがとう。
こんな未熟な俺をパパにさせてくれて、ありがとう。
もうパパは長く生きられない。
でも、それは悲しむことではない。
少し早く、天国に行くだけで、パパは家族のことをずっと見守っている。
そして、最期にやるべきことがある。
こんな未熟なパパの最期の仕事だ。
自分勝手だが、許してくれ』
『——パパを食べて欲しい』
『……』
俺は理解できず、涙が溢れ、過呼吸になった。
そんな俺を見て、ニーナもさらに呼吸を乱した。
ママは静かに涙を流した。
『パパはほんとに愛されてるな。でも、そんなに泣かれると天国で笑えないよ。』
パパはこんな状況でも微笑みながら、俺とニーナとママの頭を撫でる。
『ブレークファースト、ママとニーナのことを守って欲しい。こんな未熟なパパを許してくれ。』
そう言って、パパは俺に剣を預けた。
理解ができない。
意味がわからない。
パパを食べるなんてできるわけがない。
そんなの……そんなの……
『——俺を最高のパパにさせてくれ。』
パパは最高の笑顔で涙を目に浮かべて、息を引き取った。
嗚咽をもらして、俺は俺たち家族は最高のパパをいただいた。
エピソード14.最高のパパを最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
このエピソードで第1章は完結です。
また、第2章も投稿していくので、よろしくお願いします。
感想待ってます!!




