10.神の塔
極限の状態で一夜を明かし、ランドビーたち以外のB4隊員も寒さの限界を迎えようとしていた。
朝日は昇ったが、大雪であり、体が悲鳴を上げている。
さらに、空腹の問題、敵襲の問題を解決できたわけではない。
しかし、B隊の制服は防水機能が備わっているため、制服が乾き、制服を着ることはできた。
また、B隊の制服は防寒着にもなっているため、これで寒さは少し緩和することができる。
しかし、時間が経つごとに気温が低くなってきており、異常気象のこの世界でも、稀にみる大雪となっている。
制服を着るということは木の屋根の役割が無くなり、頼みの焚き火が消えてしまうということである。
この隊員のなかで指示できるのはB3に昇格したランドビー、ポールトと元からB3の護衛兵トールだけである。
そして、この3人は現状を打開する策は持ち合わせていない。
「俺もう腹減りすぎて……全員ぶん殴りたくなってきた」
ランドビーは相変わらず、空腹になるとストレスを貯めて、誰かに発散しようとする。
「まだ、1日も経ってないだろ。5日間は何も食べなくても大丈夫だ。」
護衛兵トールは3年前の大戦時に8日間、何も食べずに過ごした。
だから、5日間ぐらいは子供でも耐えられると考えている。
「トールさん、何か良い策はありますか?俺は何も思い浮かびません。耐えるしかないと思ってます。」
ポールトはチンタマダンスを踊りながら、夜が明けた後のことを考えていたが、結局何も思い浮かばなかった。
「正直、良い策はフルトム隊長のように思いつかない。
隊長がよく言ってた情報を集めることもこの状態では難しい。
じゃあ、何かを捨てるしかない。
空腹の問題を捨てるのか、寒さの問題を捨てるのか、敵襲の問題を捨てるのか。
この中で捨てられるのは敵襲の問題だ。
敵が退散、もしくは敵と鉢合わさないことに懸けて、B国の中央にある中央本部を目指し、みんなで移動する。
寒さの問題は体を動かして耐える。
食料の問題は解決できないから、タイムリミットは3日だ。」
「それだ。」
ランドビーは深く考えず、直感でこの提案を受け入れた。
「絶対テキトーだろランドビー……。では、それでいきましょう!トールさん流石です!」
「は?俺は賢いから考えなくてもいけるんだよ。ポールトの方こそ、何も考えてないだろ。」
ポールトは一夜考えて、策が思いつかなかったので、トールが簡単そうに導き出したことに感心した。
ランドビーは頭が悪いと言われることが心外である。
それから、情報を集めながら、移動を開始した。
敵襲の問題を捨てると言っても、できる限り敵と鉢合わさないように敵が来た東の逆方向の西に向かって移動を始めた。
この世界は大陸となっており、B国は大陸の南西に位置しており、南東にはアップルパイ国、通称A国がある。
今回の襲撃は南東から襲撃されたため、A国によるものだと護衛兵トールは考えている。
だから、B国の中央、北西に向かうことにした。
「この方角に進めば、B隊の中央支部と本部があるはずだ。しかし、遠すぎる。この辺詳しいやついないか?」
5、6時間大雪の中を歩いたが、村や建物が見つかる気配はない。大雪のせいで遠くが見えないというのもあって、余計に見つからない。そして、空腹、寒さでみんな静かである。
護衛兵トールは1時間歩くたびに、詳しいやつがいるか確認しているが、誰もいない。
しかし、もう少し歩くと、大きな塔が見えてきた。
「——あ、小さいころにお父さんとここに来たかも」
突然、思い出したかのように話し出したのは昨夜女子のリーダーを務めたチナという18歳の女の子。
「チナ姉さん今日も谷間の放物線は凄まじい」
チナの前を歩いていたチンタマが後ろを振り返り、ここぞと言わんばかりにセクハラ発言を放り込む。
もちろん、チナに思いっきりグーで頭を殴られる。
チナはピンク色の髪、ロング、前髪パッツンと特徴のある髪型で、褐色の肌に加えて巨乳、当然チンタマは常習的にセクハラを繰り返している。
「神の塔と言って、大昔、大陸が統一されていて、5つの国に分かれる前、この世界の神様が塔を建てたらしいよ。塔の中は入れるから、一旦みんなで温まろうよ!」
チナがチンタマのセクハラ発言を真顔で受け流し、みんなに笑顔で提案する。
「もちろんだ。こんな建物があるとは俺たち運が良い。みんな休憩だ。」
トールは快く、承諾した。
5,6時間静かだったB4隊が生気を取り戻し、早歩きで神の塔へ向かった。
「結構でけ——、こん中で食べ物探そうぜ、もう俺限界だ。」
神の塔を間近で見たとしても、ランドビーは食べ物のことしか考えていない。
10メートルほどある塔の中に入っていくと、螺旋階段状になっており、頂上まで登れる構造になっている。
「入ってみると結構広いな。トールさん一度人数確認しますか?」
ポールトは落ち着いて、人数確認をするべきだと思った。
ポールトは冷静な性格である。いや、冷静な性格になったというべきだろうか。
ルイに「1人でウサギ狩って来いよ」と言ってしまった日から、反省し、落ち着いた雰囲気に変化した。
さらに、ランドビー、ルイ、大切な人の盾になることを目標にするのであれば、冷静でいなければならないと思った。
「ああ、人数を確認しよう。なんとか全員入ったな。」
護衛兵トールは100人を超える隊員が全員入れるか分からなかったが、ギリギリ全員入ることが出来て、安堵した。
「ランドビーはどこ行った?」
ポールトはランドビーがいないことに気づいた。
「あ、ランドビーくんなら螺旋階段上っていったよ。」
女子のリーダーであるチナがランドビーの行方を見ていた。
ポールトはすぐさま螺旋階段を上り、ランドビーを追う。
「ランドビー何してるんだよ。」
ポールトは螺旋階段を下りてきたランドビーに尋ねる。
ランドビーはだいぶ怒っている様子である。
「食い物がねぇ。」
短髪坊主で髪の毛がないにも関わらず、髪の毛を抜く勢いで頭をかくランドビーは壁を蹴りながら、螺旋階段を下りていく。
「あと、30分後には出発するから、準備しておくように」
護衛兵トールが全員に聞こえるように大きな声で伝える。B4隊員たちは少し体が休まったのか、声を揃えて返事をした。
「うぉ————————」
ランドビーは発狂しながら、壁を蹴りながら、みんなのいる1階に下りてきた。
そして、我慢の限界がきたのか、右隅の壁を思いっきり殴った。
——痛………くない
すると、右隅の壁が崩れ、地下に続く隠し階段が出てきた。
——な…なんだこれ
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