表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/12

銀の予兆(サイン)

地下聖堂で放たれた黄金の光は、岩盤を突き抜け、この荒野の空へと突き抜ける柱となって立ち上った。


「なんだ……あの光は!」


カエルムの集落で、酒場のカウンターに座っていたギルドマスターのバルドが、窓の外を指さして叫んだ。それは、灰色の雲を切り裂き、空を淡い銀色に塗り替えていく、見たこともないほど神聖な輝きだった。


荒野の門番たちや、泥まみれで一日を終えようとしていた冒険者たち、そして物乞いをしていた子供たちまでが、一斉に足を止めて空を見上げた。


「おい、まさか……あんな色は、古い記録にある『銀霧』じゃないのか?」


誰かが震える声で呟いた。かつての繁栄を知る長老たちが、涙を流しながら膝をつく。

これまでこの荒野を覆っていた毒々しい瘴気が、その銀色の光に触れた瞬間に泡となって消えていく。風の匂いが変わった。常に鼻を突いていた腐敗と火薬の臭いが薄れ、代わりに、湿った土と、何万年もの年月をかけて磨かれた樹木の香りが混じり始めた。


その光景を、集落の端にある廃屋の屋根から眺めている影があった。

死神ルカのパーティを裏切ったとされる、魔王軍の斥候スカウトである。彼は腰の通信装置を握りしめ、冷や汗を流していた。


「報告だ……『囁きの谷』から、世界樹の再起動を確認。あのエルフと、裏切り者の調律師がやったのか……! このままでは、魔王軍が築いた荒野の支配権が根底から覆るぞ!」


彼の背後には、闇に溶け込むような不気味な黒い鳥が数羽、報告を待つように羽を休めている。

荒野の静寂は終わりを告げた。この変化を「福音」と呼ぶ者たちと、それを「排除すべき脅威」と見なす者たち。両者の間で、大規模な衝突が不可避な状況へと突き進んでいく。


一方で、地上の喧騒を知る由もない地下聖堂で、オリビアとルカは互いの短剣から伝わる鼓動を感じていた。


「……地上に届いたみたいね」


オリビアの瞳に、祭壇の光が宿る。彼女の手には、勇者が遺した意志が宿る短剣が握られている。


「ああ。だが、これからが地獄の始まりだ。この光は、魔王軍にとって何よりも目障りな信号だぞ。奴らが黙って見ているはずがない」


ルカは短剣を鞘に納めると、オリビアに向かって初めて、曇りのない表情で微笑んだ。


「行くぞ。俺たちが始めた『調律』の仕上げだ。地上へ戻り、この芽を守り抜く。それが、俺たちが生きる意味になったんだからな」


地上では銀霧の復活に希望を見出す人々が溢れ、地下では新たな覚悟を決めた二人が立ち上がる。

オリビアとルカの「調律の旅」は、個人の冒険から、世界を左右する戦いの渦中へと足を踏み入れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ