第十七話「見えてしまった形」
空は、晴れていた。
雲一つない。
——なのに。
軽くはない。
丘の上。
春日部たちは、そこにいた。
「……見えるか」
光秀が言う。
「うん」
春日部は、目を細めた。
下。
広がる陣。
一つじゃない。
「多いね」
思わず、口に出る。
整っている。
それぞれが。
無理に繋がっていない。
だが——
繋がっている。
「……あれ」
長重が、指をさす。
「旗が、違う」
視線を追う。
一つ。
また一つ。
別の紋。
さらに——
「……いるな」
慶次が笑う。
「増えてる」
軽い声。
だが。
事実だった。
一つの軍ではない。
いくつもある。
「……あれ、柴田じゃない?」
春日部が、小さく言う。
確証はない。
だが。
「配置が、それっぽい」
重い。
正面を固める。
(あの人なら、やる)
そして——
「奥」
大谷が言う。
「さらにいる」
視線の先。
遠い。
だが、見える。
別の軍。
動いていない。
待っている。
一拍。
「……動きが揃っている」
大谷が、静かに言う。
沈黙。
風が、わずかに吹く。
「……それって」
春日部が、呟く。
一拍。
「味方ってことじゃん」
誰も否定しない。
それで、十分だった。
(繋がってる)
全部が。
「……挟まれる形か」
光秀が言う。
短く。
それだけで、理解できる。
沈黙。
風が吹く。
「……ねえ」
春日部が、口を開く。
「これさ」
一拍。
「最初から、こうするつもりだった?」
誰も答えない。
だが。
否定する者もいない。
「……時間稼ぎ」
小さく、呟く。
あの戦。
(変だったんだよね)
「引かなかった理由」
あの撤退。
(普通じゃなかった)
「止まらなかった理由」
全部が、繋がる。
「……そういうことか」
息を吐く。
(最初から)
(戦う気、なかったんだ)
沈黙。
「いいねえ」
慶次が笑う。
「面白くなってきた」
春日部は、笑えなかった。
(これ)
一拍。
(勝てるの?)
視線の先。
動かない軍。
待っている。
その中心に。
一つ。
動かない影。
見えるわけがない。
距離がある。
それでも。
(……いる)
そう思った。
「……来るね」
誰に向けたでもなく、言う。
風が吹く。
陣が、動き出す。
ゆっくりと。
確実に。
包むように。
戦は——
次の段階へ進んだ。




