無人島生活59話 探せ!
「トイレは済ましたかー!」
「オー!」
「火は消したかー!」
「オー!」
「おやつは三百円までだぞー!」
「バカ隊長!」
「何だね。モーリアン君」
「果物はおやつに入りますか!」
「果物はおやつに入らない」
「準備はいいかー!」
「オー!」
「家に帰るまでが遠足だからな!」
「オー!」
ときは来た。
宝箱の中に入っていた宝の地図が示す×印の場所に向かう準備は完了している。
必要になりそうな道具を一通り入れた編み籠を背負い、今冒険が始まるのか?
行きたい人だけ行ってよ。
エリーは行きたくなかったが隊長が無理にエリーを連れ出した。
七人は初心の気持ちで地図が示す場所に向かっていた。
この島は崖が段々状になっており、崖の上は岩場で食料などはなさそうだからという理由で殆ど行ったことがない。
大体の当たりはついているが、龍之介の描いた地図と海賊たちが残した地図には若干の誤差が生じている。
手探り足探りで、エリーたちは小石が散乱する足場の悪い道を進んだ。
刑事は足で稼げ(刑事じゃないけど)とばかりに、とにかく歩くしかなかった。
歩こう歩こう、わたしは元気ぃ~♪ 歩くの大好き~♪ どんどん行こう~♪
坂道~♪ 岩道~♪ 骸骨通りぃ~♪
みんなで歌いながら進んでいる内に、神々の頂と勝手に呼んでいる山の麓に到着した。
海賊の地図はこの近くを示しているのだと思われる。
「この周辺だと思うけどね」
ゴリッチは海賊の地図と地形を照らし合わせる目印になるようなものがないだろうか、と周囲を見回した。
だが何百年も前の地図な上に、倍率の低いグーグルマップみたいな地図にそこまで詳細な目印になるものは当然あるはずもない。
それに×印に何があるのかもわからないのだ。
あの棺みたいに地面に埋まっているのなら、相当な労力が必要。
「この前みたいに、あんたのここ掘れワンワンセンサーは反応しないの?」
エリーはモーリアンに訊ねた。
「それが何の反応も示さんのや……。銭のにおいがしたらすぐにわかるはずなんやけど……」
銭のにおいって何だよ?
「じゃあお宝なんてないんじゃないの」
「いやそんなことはないぞ」
話しに割り込んできた隊長。
「まだ五分も探していないじゃないか。もうしばらく周囲を探してみなければ。諦めたら、そこで何とやらだ!」
シャベルを肩で支えて、周囲を探した。
適当に目印の場所を掘り返してみたりもした。
自分たちはいったい何を探しているんだ?
徳川埋蔵金を探している気分だった。
それに宝を見つけて何になる?
島にいる限り、どれだけ莫大な富を持っていても使えないのに。
無駄な労働ではないだろうか?
みんなが探している中、一人ボーっと空を眺めていたエリーは遠くで動く影を見た。
「ねえ」
「なんや?」
「あれサクラじゃない」
エリーは遠くに見える馬を指さして、モーリアンを呼んだ。
「ほんまや。こんなとこまで来るんやな」
崖はスロープ状になっている箇所もあり、動物たちが上がって来られないことはなかった。
サクラはくりくりとした瞳で何かを訴えているみたいだ。
モーリアンはサクラのもとに駆け寄り、必殺なでなでで体中をなで回す。
「サクラがついてこいって言ってるんや」
戻って来たモーリアンは不思議ちゃんのようなことを言い出した。
ボケマシーンは動物の言葉がわかる不思議ちゃんに進化した。
「そう」
「ほんまなんやって。ついてこいって訴えとんや」
何を言おうと上の空なエリーをほって、モーリアンはサクラのもとに戻った。
ああ、早く帰りたい――。
そんなことを思いながら空の雲をエリーは眺めていた。
雲は人間の想像力を掻き立て、色々なものに姿を変えた。
ソフトクリーム、パンケーキ、クレープ、色々なスイーツの姿に見えるから不思議だ。
エリーはスイーツの味を脳内で思い出しながら、空想の中で食べた。
だが満足感はない。
パンケーキ食べたい♪ パンケーキ食べたい♪ パンケーキ食べたい♪
以前流行っていたあの歌が不意に頭に流れ出した。
一度思い出すと頭から離れなくなる。
何だんだあの歌は、そもそもあれは歌なのか。
「なあ、何ボーっとしとん?」
いつの間にかモーリアンが目の前に立っていた。
「どこ行っていたの?」
「それがやで、サクラについて行った先で、でっかい洞窟を発見したんや」
「それがなに」
そう訊ねたがモーリアンは答えずに、みんなを集め「とにかくうちについてきてえな」と言い出した。
「どうして?」
「ついて来ればわかる」
みんなはモーリアンに引き連れられて、なだらかな曲線を描く山の麓を歩いた。
「いったいどこに連れて行くつもり?」
「もうすぐや」
何も知らされないままみんなは黙って後に続く。
「ここや」
モーリアンは振り返り、確かに洞窟らしき横穴を指さした。
洞窟の入り口にはサクラと小サクラが、目印のように立ち尽くしている。
「洞窟がどうしたの?」
「これを見てみ」
洞窟の入り口に髑髏の絵が彫られていた。
あからさま過ぎないか。
「髑髏のマークやで。この洞窟を進んだ先になんかあるんちゃうん?」
こんなあからさまに、マークが彫ってあるって?
もし何かあるとしても罠だろ。
髑髏は死の象徴だろ。
チ〇ッパーが知らずにドクターヒ〇ルクに食わしたキノコだろ。
「間違いない! 海賊の地図が示している×印はこれだ!」
隊長は熱く言った。
何の根拠があるんだよ。
「うむ、地図のマークと位置が一致している。かもしれない」
イーグルアイでも持ってんのか?
龍之介は洞窟の入り口に歩み寄り、髑髏のマークが彫られている壁面を調べた。
「ここに何か刻まれているぞ。これは海賊の手記に書かれていた文字と同じオタクーゴではないか。この古の文字を解読してくれ」
恥ずかしいから辞めて……。
「なになに、『俺の財宝か、欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてを洞窟の中に置いてきた!』と書いてある」
「さすがにヤバいでしょ、色々と……。てか何でそんな文句が刻まれているのよ。それあれでしょ……某有名漫画の冒頭の台詞でしょ……」
「これが元ネタなのだろう」
「そんなわけあるか! もういいでしょ帰りましょ。一応印の意味もわかったんだし」
エリーは踵を返して引き返そうとしたが、隊長に袖を掴まれて引き戻された。
「この世のすべてがこの先にあるんだぞ! 探しに行かないのか!」
「こんな危ない洞窟誰が入るか!」
「そうだぜ……。それに明かりもないじゃないか」
潤弥もエリーと同意見だ。
ナイス潤弥、エリーは心の中でグッチョブする。
「潤弥の言う通り、明かりもない」
「そういうことなら心配ご無用!」
言って隊長はジャケットポケットを漁り、中からあるものを取り出した。
「パッパラッパラ~♪ 普通のランプ~」
「どうやってしまってたんだよ! そんなもんポケットに入らんだろう!」
エリーのツッコミに答えずに隊長は道具の説明をはじめた。
「この普通のランプは暗い場所を明るく照らしてくれるという凄い機能があるんだ~。これでおばけ嫌いのエリ太くんでも安心だよ」
そんな問題じゃねえ。
「それでは、トレジャーハント開始だ!」
隊長の一声でボケ担当たちは次々に洞窟に特攻した。
マジで……。
「知らないわよ! トラップに引っかかって死んだって知らないわよ!」
エリーの叫びは洞窟の虚空に吸い込まれていった。
どれだけ待ってもボケたちは帰って来ない……。
「ああ! もう!」
「おい、おまえも行くのかよ……」
「仕方ないじゃない。連れ戻さないと」
エリーは勇気を出して洞窟に踏み込んだ。
取り残された潤弥も、一人の孤独に耐えられずみんなの後を追った。
はてさて、カバー一味は大海賊キャプテンシルバーが残した、大財宝を見つけることはできるのだろうか?
次回に続く――。




