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無人島生活58話 無人島クッキング

「ここまであからさまに印をつける?」


「印付けな忘れてまうやん。仲間内でしかみい品のんやから、わかりやすくてええんやって。この印の場所にワ〇ピースがあるんやって」


「ここはラフテルじゃないって。怪しいわよ。絶対罠かなんかに決まってる」


「だけど、わざわざ棺の中に入れていたんだぞ」


 隊長が地図の赤い×印を指さして言った。


「わざわざ厳重にこの地図を保管しているということは、何かがあるということではないだろうか。一度見に行くだけ行かないか?」


 隊長の言うことにも一理あると思うが、見に行きたいとは思わない。


「そうだね。僕も興味あるよ」


 ゴリッチも潤弥に同調した。


「キャプテンシルバーの大秘宝。この世のすべてはそこにある! 実に面白い」


 龍之介も興味津々という態度だった。

 だからキャプテンシルバーって誰だよ。

 宝島かよ。

 

「では、我々みんなで行ってみようじゃないか!」


 隊長は声を大にしていった。

 またはじまった……。

 男ってやつはどうしてこんな宝の地図とか好きなのだろう……?

 

「さっそく行こう!」


 隊長は地図を片手にエイエイオーをするように右手を振り上げた。

 男たちは鼻息荒く準備をはじめた(ボケもいます)。


「ちょっと待って! 今から行く気? 行くのはいいけどせめて、仕事をすべて終わらせてからにしてよ。冬ごもり中荒れた畑の手入れとか、なくなった食料集めたりとかしなきゃいけないんだから」


 家庭的なエリーはまず目の前の課題を男たち(ボケ含む)に突きつけた。

 ブーブーと男たち(ボケ含む)は抗議の声を上げた。


「そんなん後回しでええやん。付き合い悪いで」


「そう、じゃあ今日の晩御飯はいらないのね。わかった、あたしと紅さんだけ食べるから、あなたたちは宝を探しに行ってきなさい」


「冗談やって、ちゃんと仕事を片付けなあかんな。だから、飯抜きだけは勘弁してえな」


 食い意地の張ったボケを思いとどまらせるのは、赤子の手を捻るようなものだった。


「男どもはどうするの? ご飯抜きでもいいなら行ってきな」


 男どもはソワソワと肩を寄せ合い話し合いをはじめた。

 ソワソワソワソワ。


「おい、さすがに飯抜きは辛いぞ……」


「ふむ、やつがれは本気だろう」


「そうだね……食べ物を抜かれると僕のグ〇メ細胞がオートファジーを起こしてしまう……」


 どんな設定背負わされてんだよ……。


「うん……仕方ない……エリー君の機嫌は損ねない方が身のためだ」


 話し合いの結果、「わかった。では一週間後にすることにした」ということで話はまとまったようだった。


 エリーたちはまず食べ物を集めに森に入った。

 まだ食べられそうな果物屋、穀物は殆どなかった。

 パロパロの実が少しと、カカオの実みたいな果物が少し。


 これだけではさすがに七人分のエネルギーが補えないので、ゴリ爺さんは海にダイビングに、カ婆さんは岩場に貝獲りに行ったそうな~。


 ゴリ爺さんが海に潜っていると、どんぶらこどんぶらこと、大きなサメが流れてきました。


 覚醒ゴリ爺さんがサメの鼻を叩き割ると、中から大きなイカがおぎゃあおぎゃあと生まれました。


 一方そのころ、貝獲りに来ていたカ婆さんが岩場を探していると、どんぶらこどんぶらこと岩場を転がる大きな貝を見つけました。


 カ婆さんが持ってきていたナイフで、貝の隙間を叩き割ると中から、ぷくぷくに肥え太った貝柱がおぎゃあおぎゃあと生まれました。


「という経緯で、大きなイカと大きな貝を手に入れてきた」


 隊長とゴリッチは金の斧と銀の斧を見せる湖の女神のように、戦利品を見せた。


「ツッコミどころが多すぎるけど、まあ獲って来たのは本当だからいいわ」


「今日の夕飯は何にするん? 久しぶりのごちそうやで」


 エリーは体長2メートルほどはあろうかというイカと、1メートルはありそうな貝を見て献立を考えた。


「そうね。じゃあ、イカの素焼きと、イカの刺身と、イカそうめんと、イカの塩ゆでと、イカと芋の煮物と、イカリングと、貝の素焼き、貝とイカの汁物、以下省略、イカだけに」


 みなは聞くだけでテーションを上げた。

 

「無人島クッキングのお時間です」


 突如はじまった無人島クッキングなる番組。

 どこからともなく三分クッキングの音楽が流れはじめた。


「今日はイカと貝を使った海鮮料理を作っていきましょう」


 エリーは巨大イカをナイフで切りはじめた。

 無人島生活をはじめてエリーの調理スキルは爆発的に上がっていた。

 今なら海原○山ですら納得する料理が作れるだろう、フフフ。


「巨大イカは食べやすい大きさに切ってください」


 イカはまだ生きており、触手をくねらせ暴れた。

 襲い掛かって来た触手をエリー抜刀した。


 無人島生活でゴリッチや隊長ほどはいかないが、修行編を終えているエリーも戦闘力が上がっている。

 今のエリーなら大蛇にすら勝てるかもしれない。

 持ち主の手を離れた触手だが、まだいきよく動いていた。


「触手が襲ってくる場合があるので、気を付けましょう」


 誰も突っ込む人がいないので、一応突っ込んでおくが、ダイオウイカにでも遭遇しない限り、まずありません。

 食べやすい大きさに切ったイカを焼いて、茹でて、揚げて、と調理していった。


「油は植物から取った天然ものです。植物から採取するのが面倒な場合は市販のものをご利用ください。塩は海水から作ったものを使用。これも市販のものをご利用ください」


 焚火の上に鍋を吊るして、煮物の調理をはじめた。

 森の中に埋まっていた芋の皮を剥いて、イカと一緒に煮る。

 煮物の調理を終えたら木皿に開け、続いて乾かした海藻でダシをとり、貝を鍋に入れてしばらく煮た。


 塩で味を調えて汁物を作った。

 まだいきがよくあばれるイカを食べやすい大きさに切って、イカの刺身とイカそうめんを作る。

 イカの踊り食い。


 石焼きで貝とイカを焼いた。

 ジューという香ばしい匂いと音が、食欲をそそった。


「砂を噛まないように石はよく洗い落としてください」


 テーブルの上には貝とイカのフルコースが並んだ。

 

「続いて、皮を剥いたゆで卵をイカで包みダシと一緒に煮ていきましょう」


 料理名のわからない料理を即席で作った。

 テーブルから溢れんばかりに、皿が並んだ。


「こんなに料理が並ぶの見るの久しぶりやで」


 モーリアン、歓喜の涙。

 

「じゃあ、食べましょうか。じゃんじゃん焼いて。まだまだあるから」


 いただきます、と手を合わせてみんなは同じテーブルを囲み夕食をはじめた。

 まるで冬眠から覚めた熊のフードファイターのように、みんなは料理を胃袋に詰め込む。


 あれだけデカかった貝やイカは次々に消化される。

 ワイルドだろ。

 食べられるイカや貝も我が生涯に一片の悔い無し、と感無量そうに見えた(そう見えただけかも?)。


 あれだけあったイカと貝は切れになくなり、吸盤一つ余らなかった。

 風船みたいになった腹をみんなはさすりながら、一息ついた。


「こんなに食べられたのは久しぶりやで」


「本当ね」


「おいしかった~」


 女子たちはご満悦。


「これもゴリッチと隊長のおかげね」


「いや~、そんなことないよ」


 謙遜するゴリッチと隊長。

 後片付けは男たちが引き受けた。

 湖から汲んで来た、水で木皿を洗う。

 

 作業を分担するのは争いを生まないための鉄則だった。

 それは夫婦間でも言えることで、妻ばかりに家事をやらせてはならない、その逆もしかり。

 家事は分担、これ鉄則!


 冬が終わり、冬眠後の熊並みに飢えていたみんなは腹いっぱい食べることができたのだとさ。

 めでたしめでたし――。

挿絵(By みてみん)

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