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無人島生活57話 ”ワ〇ピース„は実在する!!!

 冬ごもりは終わり、無人島は再び温かな、てか熱すぎる光に照らされた。

 雪は降らなかったが、朝露のついた木の葉から雪解け水のようにキラキラとした雫が流れ落ちた。


 新たな季節を告げる空気を肺一杯に吸い込んで、エリーは伸びをした。

 さて無人島脱出頑張るぞォー! 

 と新年の抱負を決めるかのようにハキハキとした気持ちで自分を奮い立たせた。


 この状況で自分を奮い立たでもしないと、やっていられない。

 どんなに清々しい気分もすぐに終わりを告げ、また絶望を感じた。

 ああ……あと何回冬を越せば帰れるのだろぉ~……。


 もうこのままここで土に還るのだろうか……。

 森の中に転がる骨が否が応でも頭をよぎり、絶望の谷に突き落とされた。


「起動哀楽の激しい女やな」


 モーリアンがエリーの顔を覗き込んだ。


「どないしたん、喜んでいたと思ったら急にジャーキーをとられた犬みたいな顔して?」


「え? あたしそんな顔してた?」


「世紀末に現れるモヒカンが『おまえはもう死んでいる』って告げられたときみたいな顔やったで」


「どんな顔よ?」


「お、笑ったな。深刻な顔せんと笑っとったらいいことが起こるねん。笑う門には蛇が来るゆうやろ」


「それをいうなら福でしょ。わざと間違っているでしょ絶対」


 エリーは微笑みながら言い返した。

 ああ本当に認めたくはないが、みんながボケくれるおかげで、こんな孤独な島でも精神をおかしくしなくて済んでいるのだから、感謝しなければいけないな、とエリーは思った。


「エリーっち、今日付き合ってくれるか?」


「何に?」


「お宝を運ぶんや」


「お宝って、この前ここ掘れワンワンで見つけたあの宝のこと?」


「そうや、ここ掘れワンワンで見つけたあの宝や。冬の間ずっと気になっとったんや」


「いいけど、あたしたち二人だけじゃ、あんなの運べないわよ。隊長かゴリッチに付いて来てもらわないと」


「というわけでや、ゴリッチ付いて来てや」


「合点承知!」


「どっから現れた?」


 ご都合主義的タイミングでどこからともなく現れたゴリッチが同行することとなった。


 またまた深い森の中を進む。

 すでにエリーたちにとって、緑深い森は庭と同じだった。

 野生児エリーの大冒険!


「どこだっか憶えているの?」


「まかせとき、うちの鼻は宝を探し出す探知機なんやで!」


 モーリワンに導かれ、エリーとゴリッチは宝の埋まっている場所についた。

 掘り返された土はすでに馴染んでおり、もう雑草まで生えていた。


 再びシャベルで掘り返すと、そこには一目で宝箱だとわかる棺があった。

 ここまであからさまに宝箱感を強調されると、逆に宝箱感がなくなってしまう。


「これがみんなの話していた宝か」


 ゴリッチは何百キロもあるであろう棺を、空の段ボール箱を持ち上げるみたいな軽々しさでひょいっと持ち上げた。


「そうか、あのときはゴリッチ留守番してたもんな。中見てみいな。凄いで」


「じゃあ、開けてみるよ」


 ゴリッチが棺の上蓋を開けると、中から煙があふれ出た。

 煙が晴れると棺を開けたゴリッチはおじいさんになっていた。


 となりにいたモーリアンも煙を体の半分だけかぶってしまい、半分だけおばあさん、半分だけぴちぴちの若者という怪物になってしまった、と言うのは嘘。


「これが宝か。ピカピカだね」


「ピッピカチュウーやろ」


「だけど、大海賊の宝にしては少なすぎるんじゃない?」


 ゴリッチはダイヤモンドみたいな宝石をつかみ取り、光にかざした。

 ブリリアント削りで、取り込んだ光が何面にも拡散された。


「それやねん。ゴリッチも気になったか。うちもそれが気になっとったんや。大海賊キャプテンシルバーの宝が、こんなはした金だけやあらへん。まだこの島のどっかに宝が眠っているはずや」


 そんな大海賊知らねえぞ。


「もしかして、今から宝を探すって言わないわよね……? こんだけ金銀財宝があれば十分でしょ。欲をかくと痛い目を見るよ」


「大丈夫や。うちの幸運スキルがあれば、見つけられる!」


 自信満々に拳を握りしめてモーリアンは言い切った。


「その根拠のない自信はどこから来るのよ?」


 ゴリッチは百以上あろう宝箱を担いで、一度拠点に戻った。


「取って来たのか」


 みんなは甘いものに寄り集まる蟻のように、宝箱の周辺に近寄って来た。


「そやで、これでうちら大金持ちやな」


「文明社会に戻れればの話だけどね」


 潤弥は宝箱を開けて中に入っている宝石や金貨をテーブルの上に並べはじめた。


「なにしとん?」


「どんな宝があるのか見てるんだよ」


 金貨や銀貨、宝石の埋め込まれた短剣、色々な色の宝石、ネックレス、指輪、髪飾り、今まで見たことのないほどの宝の数々だった。


「これが最後だ」


 そういって潤弥が最後に取り出したのは宝石などではなかった。

 縦長の木箱だ。


「これは何だ?」


 今まで興味ないふりをしていた龍之介が、潤弥の取り出した()()に興味を示した。

 それは、厳重な木箱に収められていた。

 潤弥は木箱を開けて、中から宝ではないあるものを取り出した。


「わからねえけど、紙だな」


 脱色したり、変色したりして年季の入ったただの紙。

 丸められており、紐で縛られ閉じられていた。

 龍之介は潤弥から丸められた紙を受け取ると紐を解いて、テーブルの上のお宝を払いのけた一角に広げた。


「何が描かれているんだ?」


 みんなはテーブルを囲んで、広げられた紙を覗き込んだ。

 絵? いや違う。地図のように見えなくもない。


「地図かしら?」


 色々な方向から地図を見てみたが、何の地図なのかわからない。

 世界地図ではない。

 もっと限定的な地図だ。


 龍之介は顎に手を置いて、考え込んでいた。

 何かを閃いたというふうに眉をしかめると、龍之介はゴリッチにあるものを持って来いと命じた。


 ゴリッチは言われるがまま、落とさないようにしっかりと抱えて、洞窟の中から命じられたものを持って出てきた。


「持って来たよ」


 ごみでも払うみたいに龍之介はテーブルの大半を占める宝石を地面に払落しスペースを作った。


「何してくれてんや! 一銭を笑う者は一銭に泣くやで!」


 当然モーリアンは怒り、守銭奴みたいに慌ててお宝を拾いはじめた。

 そんなことなど無視して、龍之介はみなに言った。


「これを見ろ、この紙に描かれているのはこの島の地図だ」


 島に来て間もないころ神々の頂に登り、龍之介が石板に描いたこの島の地図と、宝箱に入っていた地図は酷似していた。


 そして、宝箱に入っていた地図には赤い×印がある一か所についていた。

 神々の頂の麓に意味深な×印し。

 お宝をすべて宝箱にしまい終えたモーリアンは叫んだ。


「そこにキャプテンシルバーのワ〇ピースがあるんやな!」


 ワ〇ピースではないだろうが、その印がつけられた場所に何かがあるのは確かだと誰もが思った――。

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