無人島生活54話 騎士ぃぃいいいぃ……!
これが闇の対局……。
敗北した隊長と潤弥はまだ悶絶していた。
「エリーっち初心者やのに、三段の実力者である隊長に勝つなんてすごいやん。エリーっちと対局できるのが楽しみやわ」
続いてモーリアンVS龍之介の対局がはじまった。
龍之介は右翼の騎馬の道を開けるため、足軽を前進させた。
モーリアンも負けじと同じように右翼の騎馬の道を開ける。
龍之介は呪い師を前に一マス前進。
モーリアンも呪い師を前に一マス動かす。
左翼の騎馬の道を開けるため、3四足軽をする龍之介。
序盤は己の得意とする陣形にするのに費やされた。
大将の護衛は最小限に、騎士たちを暴れさせる龍之介の陣形は超攻撃型。
一方モーリアンは性格に似合わず究極のバランス型。
攻撃五分、守備五分で整えている。
動きがあったのは中盤から。
超攻撃型である龍之介は、右翼の騎馬で足軽を討ち取っていく。
モーリアンは動じない。
「甘いで龍之介っち、攻めてばかりで守備が手薄や。うちのターン。うちは1一特攻隊長を討ち取り、左翼の騎馬クラスチェンジ一角獣ー!」
先に強駒を手に入れたのはモーリアン。
モーリアンと龍之介の対局は一進一退。
ダメージを受けるのを承知で龍之介も右翼の騎馬を、龍騎士にクラスチェンジさせた。
足軽の攻撃で体力は1。
「攻撃こそ最強の防御ッ!」
駒の奪い合いがはじまった。
モーリアンは防御を固めながらも、クラスチェンジしたユニコーンの貫通効果で駒をダブルゲット。
龍之介は龍騎士の効果ジグザグ移動で防御の間を縫って、敵陣をかき乱している。
強駒のスキルであるプレッシャーで、足軽では討ち取ることができないのだ。
一歩も引かぬ白熱の対局開始から一時間が過ぎようとしていた。
お互いに駒もそろい、そろそろ詰みに入るころあいだった。
「フフフフ、そろそろ終焉だ」
龍之介は勝利を確信したかのような笑みを漏らした。
「それはこっちのセリフや」
「我は戦車で貴様の防御を打ち砕くッ!」
ドォ―――――――ッン! と背後に擬音を龍之介は人差し指を突き出した。
戦車はモーリアンのバランスのよい防御網にメスを入れた。
足軽が討ち取られる。
「足軽ッ、おまえの命は無駄にせえへんでッ。うちは呪い師を魔法使いにクラスチェンジッ!」
「我のターン。我は龍騎士で貴様の側近、騎士を攻撃ッ! 昇天龍閃ッ!」
龍は騎士に喰らいつくと、滝を登る鯉のように天に急上昇した。
大気圏まで上昇した龍は光の速さで、急降下をはじめる。
まるでジェットコースターだった。
地面が目前まで迫ったとき、加えていた騎士を地面に叩きつけた。
爆音と爆風で半径十キロ以上が吹き飛んだ。
「騎士ぃいいいいぃいいぃ……! 騎士……騎士……」
大将は騎士の下に駆け寄り手をとった。
「騎士……。ごめんな……騎士……」
「大将……悲しまないでください……。大将を護れた……私はそれだけで……本望です……。だから……死なないでください……。大将が生きている限り……我々は死なない……」
かく、騎士の体から力が抜けた。
「うちは死ねへん……。必ず必ず騎士の敵はとったる……」
大将に看取られながら騎士は静かに命を引き取った。
死ぬ逝く騎士の顔は苦痛に歪むではなく、安らかに微笑んでいた。
「騎士ィいいいいいいいい―――――……!」
騎士は温かな橙色の粒子となり空に舞い上がり消えた。
「うちは怒ったぞォ――――――リュリーザーぁあああああああぁ!」
「怒れば強くなるとでもいうのかッ」
「うちは魔法使いのスキル英霊召喚を発動。龍之介っちから討ち取った左翼の騎馬をユニコーン状態で召喚ッ!」
これでモーリアンはユニコーンを二体所有している。
「我のターンッ。我も呪い師の効果発動。英霊召喚。我に服従しろ騎士ッ」
今までモーリアンをそばで護っていた騎士が、龍之介の味方として召喚された。
「フフフハハハガハハハッ! どうだ、今まで貴様の従順な配下が、貴様に歯向かう気分は」
中ボスクラスのゲスな笑みを浮かべる龍之介。
「うちは魔法使いで足軽を隠者状態で英霊召喚ッ」
黒いボロボロのローブを身にまとった隠者がフィールドに現れた。
「隠者など何の役に立つッ。そろそろ終わらせてやろう。騎士でチェックメイトだッ!」
「よう考えてみいッ」
「なに?」
龍之介は目に見えないフィールドをイーグルアイで見渡した。
そして気が付いた。
「隠者が……」
「そうや、確かに隠者は使い物にならへん駒や。やけど、討ち取られることのない最強の駒でもある」
モーリアンは隠者を大将の盾として召喚していたのだ。
隠者が邪魔で、大将に剣が届かなかった。
「今度はこっちの番やッ。魔法使いで足軽を隠者状態で再び英霊召喚ッ」
隠者は敵大将の目の前に召喚された。
「これで詰みや」
隠者は無能な駒だが、討ち取り不可能な駒でもある。
その隠者を使い、大将の逃げ道を封じた。
「神聖打突」
龍之介の視界から一角獣が姿を消した。
「どこだ……どこに消えたッ!」
辺りを見回すが姿は見えない。
「どこに消えたッ―――――!」
龍之介は違和感にやっと気付いた。
自分の左胸に大きな風穴があいていることに。
ゆっくりと痛みが体を駆け巡り、龍之介はその場に膝をついた。
「おまえはもう死んでいる」
ユニコーンに乗ったモーリアンがそういうと、龍之介の左胸から大量の血が噴き出した。
「あべし!!!!!」
モーリアンVS龍之介の試合はモーリアンの勝利で決着がついた――。




