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無人島生活51話 ゲテモノほど美味い

 うん……好き嫌いは言えない……。

 バラエティーとかで見たことあるけど、案外虫も美味しいって言うし……。


 巨大葉の上に獲って来た虫が沢山並べられていた。

 見ているだけで全身の毛が逆立ち、吐きそうなのをエリーは我慢した。


 カブトムシの幼虫みたいな虫はクリーミーで美味しそうだし、バッタみたいな虫は焼けば、パリパリしてスナック感覚でいけると思う……。


 ミミズみたいな細長い奴はワラビや麺類のようにすすれば……。

 エリーはポジティブに脳内変換していた。

 

「というわけで食料を持って帰ってきたわけだ」


 隊長は誇らしげに言った。


「海賊の財宝か。僕も見てみたかったな」


 ゴリッチは残念そうに言った。


「また今度ゴリッチ君にも見せてあげよう。まずは腹ごしらえをしようじゃないか、こんなに美味しそうな虫たちが手に入ったんだから」


 隊長は舌なめずりをした。

 空腹のあまりみんな脳内変換しているんだ。

 そうに違いない。


「本当だね。すごく美味しそうだ。どうして今まで気づかなかったんだろう。虫も食べられたのに」


 ゴリッチもよだれを手の甲で拭う。


「早く食べような、うち腹ペコでもう死にそうやわ」


「どうやって食うよ」


 みんなはよだれを垂らして、葉っぱの上に広げられた虫を眺めた。

 きっと猫型ロボットの秘密道具でもかかっているのだ。

 たしか、どんなに不味い料理でも、秘密道具のあるスパイスをかけるだけで美味しくなる道具があったもん。


 生で食べるのはさすがに気が引けたので、火を通すことにした。

 火を熾して、木の枝にカブトムシの幼虫みたいな虫を串刺しにする。


 吐き気がするより罪悪感を感じずにはいられない……。

 みんなみんな生きているんだ友達なんだ。

 なのに……。

 串刺しにされた幼虫から体液がにじみ出て、ジューと蒸発させた。


 龍之介とゴリッチは手際よく串に虫を刺して団子にした。

 それを火の中に入れて焼く。

 五秒ほど火に入れているだけで、マシュマロのように幼虫に火がついて燃え始めた。


 独特のにおいが鼻を突く……。

 中まで火を通すために、石焼にすることにした。

 焼けた石の上に虫を置いて、両面しっかりとやく。

 軽く焦げ目がついたらできあがり。


「はいエリーちゃん」


 ゴリッチは笑顔で四匹、幼虫が串刺しにされた枝を差し出した。

 ぎこちない苦笑いを浮かべてエリーは「ありがとう……」と受け取った。


 みんなに虫がいきわたったところで、「それでは食べよう。いただきます」隊長が串を高々と上げた。


 ここまでくれば食べるしかない……。

 命に感謝を込めて。

 と思っていても、なかなか口に入れられないのは当然のこと。

 中まで火が通ってる……? 


 枝を伝ってハンバーグを刺したときに出る、白い肉汁のような液体が垂れ下がってきた。

 エリーが幼虫と格闘しているうちに、みなは食べはじめていた。


「うん、意外に美味いな」


 あの潤弥が文句もいわず……。

 

「うまいわ。噛んだときに出てくる汁が肉汁みたいや」


 JKが流行りのスイーツを食べるみたいに、躊躇なく食べる女子。


「ほんとうね~、まるで牡蠣みたいに~クリーミー~」


 紅おまえもか!


「虫は栄養価も高く、たんぱくだ。近年では昆虫食が注目を集めている」


 まるでこれがはじめてではないみたいに、龍之介もパクパク食べる。

 ゴリッチも当然ながら、ためらいない。


「私もグリンベレー時代はよく虫を食べた。物資が届かないときは何でも食べなければ生き残れないからな。――エリー君食べないのか?」


「え……食べるわよ……」


 昔のエリーだったら『こんなもん食えるかッ!』と亭主関白・雷親父のように投げつけていただろうが、人間的に成長している今のエリーはためらいながらでも食べた。


 見ないように目をつむり、一気に一匹口に放り込んだ。

 舌の上に生温かい、ぷにぷにとした食感が……。

 これを噛むのだ……丸呑みはできない……。

 万力のようにゆっくりと顎に力を込める。


 幼虫の皮膚が凹み、プチっと弾けると中から得体の知れない汁が口の中に溢れ出た。

 軽い吐き気を感じて、生理的に吐き出しそうになるが理性で抑え込んだ。


 エリーは涙目になっていた。

 味なんてわからない……。

 口の中がねっとりとした液体で溢れている。

 海のミルクならぬ、地中のミルク……。


 みなはフードファイターの食事を、観戦する観客のような真剣な眼差しでエリーを見守っていた。


 粗噛みでは飲み込めなかった。

 外は焼けてパリッとしているが、中は固めたゼリーみたいにやわらかかった。


 やっと飲み込むと、みなは興味深そうに感想を訪ねてきた。

 目尻に薄っすらと涙を浮かべて、エリーは微笑んだ。


「慣れるまで時間がかかるかな……」


 人間的に成長しているエリーなのであった――。

 





 


 その日から、保存食の他に昆虫食も食べるようになった。

 寄生虫がいることを考慮して、火で中までしっかりと熱を通すことが大切だ。


 触角などはすべて取り除かなければ、消化されないそうなのですべてとり除く。

 まあ、これで食べられなくはない。


※ 昆虫を食べるときはしっかりと過熱調理しましょうね。寄生虫や菌、毒などがある可能性が高いです。


 見た目がグロテスクなのもあり、原型がわからないように調理した。

 葉物類と炒めたり、塩と果糖であまじょっぱくしたり、レパートリーは限られるが普通に食べるよりはましだ。


 昆虫独特の青臭いにおいを取るために、香りのいいハーブ代わりになる葉っぱと一緒に煮たりもする。

 

 昔からアイデアは不自由な暮らしから生まれるというが、わかる気がする。

 土を掘ったり、幹のすき間をほじっくったりすると、虫には困らなかった。


 こうして、エリーたちの料理レパートリーに昆虫食が加わった。

 果たしてエリーは昆虫をスナック感覚で食べられるようになるのだろうか? 

 乞うご期待!

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