表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/64

無人島生活29話 予測不能な奴=トリックスター→★

「可哀想に……エリーッちもとうとう、ここの生活に耐えかねていかれてもうたか。大丈夫やで、うちがおるから、何も心配することあらへん」


 モーリアンは慈愛に満ちた声で言った。


「あんたがいるから心配なのよッ。てか、今それどころじゃないんだって……。ゴリッチが巨大なアナコンダみたいな蛇に喰われたのよッ。その蛇があたし達を追ってきてるのッ」


「幻覚だけやのうて被害妄想もか……末期やな」


「だから本当なんだってッ」


 詳しく説明している余裕はなかった。

 龍之介が割り込み、「本当だ。だから、とにかく我の話を聞け」と言うと「ホンマかいな。巨大蛇がおるん?」とモーリアンはあっという間に手のひらを返し、信じた様子。


「おいこら待て。何であたしの話は信じなくて、この中二病の話は素直に信じるだよ? 逆でしょ、逆ッ」


「日頃の行いが悪いから信じてもらえんのんやで。オオカミ少女ってやつやわ」


「それを言うならオオカミ少年でしゅうがッ。てか、あたしが嘘ついたことあった? この中二病――」


 話している途中に、龍之介が大きな声で割り込んだ。


「今漫才している場合かッ!」


 普段声を荒らげない人が突然声を荒らげると、とんでもない威力がある。


 今まで騒いでいた子供たちが、授業時間になり先生が教室に現れたとき並みに、シ~んと静まり返った。


「いいか、時間は残されていない。皆で協力して、この崖の上にある巨岩を蛇に落とす」


 この場所にいるのはエリー、モーリアン、隊長、龍之介の四人だけだった。こんな一大事に紅と潤弥はどこに行ったのだろうか?


 潤弥は多分浜辺で船が通らないかを見張っているのだろうが、紅だ。

 まさかこんな危険生物がこの島にいるなど……。

 いると知っていればみな別行動など、絶対にしていない……。


「隊長と我、奴がれは崖に登り、巨岩を落とす準備をする。アン貴様は蛇を引きつけてくれ」


 ・・・・・・静寂が一瞬帳を下す。

 

「ちょっと待ってえな? どういうことや?」


「おとりだ。あそこの崖の下で何とかして、足止めしてくれ」


 ・・・・・・二度目の静寂。


「ちょっと待てッー! 何でうちがおとりなん? うち女の子やでッ」


「この状況で女も男もない。適材適所を選んだまでだ。それに貴様は芸人だろ。体を張ってなんぼの商売だ」


「それは職業差別やッ! 体を張って野生動物を相手するのはごく一部の芸人や。うちはそのキャラちゃうッ! 適任役ならバカ隊長やエリーっちもおるやん」


「隊長は駄目だ。巨岩を押すのに彼の力がいる」


「じゃあ、エリーっちでええやん」


「いや、このステータスを見ろ。エリーの筋力はC+、貴様はC。これを見ても明らかだろう、少しでも、筋力がある方が岩を押すべきだ。それに、着様は幸運が高い。その幸運で何とか生き残れる方に我はかける」

 

 龍之介はいったい誰が作ったかわからない、プロフィールを具現化させて指示棒片手に解説した。


「わかったな。今はご都合主義で蛇が来ていないが、諦めずに追ってきているのなら、すぐ近くまで迫っているだろう。我々は崖に上がる、あの場所で足止めをするんだ。いいな」


 言い捨てて、龍之介たちは駆け足にスロープを登りはじめた。

 

  










 ここはどこだ……。

 俺様は何をしている……。

 身動きができない……

 まるで母親の胎盤の中みたいだ。

 

 とても落ち着く。

 とても温かい。

 とても静かだ。


 どうしてここにいるのだろう?

 ここはどこなのだろう?

 確か俺様は……何をしていた?

 意識がまどろみ何も想い出せない……。

 

 とても大切なことをしていたはずなのに……。

 想い出せない……。

 胎盤の外でガヤガヤと音がする。

 

「ゴ……チ……オ……ロ……。ゴ……――オ……」


 この音は何だ。

 とてもうるさい……。

 もう少し寝かせて……くれ……もう少し……。











 崖の上で手が上がった。

 あそこに巨岩が見えるから、つまりここに落ちてくるというわけか。

 なるほどやで。


 鋼鉄のハートを持っているモーリアンですら、一抹の不安を感じずにはいられなかった。


 潤弥がもしこの場にいたら、泡吹いて失神していたことだろう。

 それを思うとこの場所にいないのは幸いかもしれない。

 

 この場所に足止めしろと言っても、どうしろってゆうんや? 

 モーリアンは考える葦となる。

 相手は蛇、うちの笑いが通用するとは思えへん。

 さて、どうしよか?


 こんなときあのホストがいれば、おとりのおとりとして使ってやるのに……。そのとき前方の草むらがガサガサと揺れた。


 噂をすれば影。もしや、ホストが絶妙なタイミングで帰って来たんかッ、と希望の光が差した。


 だが、そのようなご都合主義が何度も続くはずがない。

 にょろにょろと長い舌を出し入れしながら現れたのは、モンスター(巨大蛇)だった。ある意味、ご都合主義的なベストタイミングで現れた蛇。


 ドッキリちゃったんやな……ハハハ……。

 崖の上を見上げると、エリーたちが手振りで大蛇の襲来を知らせる。

 わかっとるわ、ここからでも見えてるねんッ。

 失敗したらどないするつもりや?

 もし失敗しようものなら、毎日のように枕元の現れてやるで……。


 モーリアンは崖の麓に立っていた。蛇がモーリアン目掛けて真っすぐに来れば、上から巨岩が落ちてくる予定になっている(成功すれば)。


 そんな上手く行くものだろうか?

 蛇の上にそうそう上手く落ちるわけがない。

 モーリアンの危機察知能力が、絶対に失敗すると告げている。


 蛇はにょろにょろと蛇行しながら、草むらから躍り出て顔を上げた。

 20メートルほど離れているが、その巨大さはありありとわかる……。

 崖の上ではエリーがサインを送っていた。

 モーリアンは崖の上を憎々し気に見上げた。


 うちの幸運があれば何とかなるッ。

 モーリアンは意を決して、地面に落ちていた小石を掴み蛇に向けて投げた。小石は蛇に到達するまでに力を失くし落ちる。


 何度か小石を投げ、蛇はモーリアンの存在に気付いた。

 シャーッ。二本の鋭く伸びた牙をむき出しにして、蛇は威嚇した。

 警戒しているのか、ゆっくりと地面を泳ぎ蛇はモーリアンに迫る。

 胴が膨れ上がり、明らかにあそこにゴリッチがいるとわかる。


 そのときモーリアンはあることに気が付いた……。

 もしこの作戦が成功すれば……。

 思い至らなかったが……岩を落とすということは、ゴリッチを押し潰すということではないか。やっとモーリアンは理解した。


 エリーっち達がそのことに気付いていないわけあらへん……。

 ゴリッチもろとも殺すつもりなんか……?

 いったい何を考えとん……?

 

 仲間やろ……。

 みんな揃って島を脱出しよう、誓ったやろ……。

 自分で気が付いたときには、足が動いていた。


 モーリアンは崖の麓から離れて、蛇の注意をひきつけた。

 モーリアンの予測不能の行動に、龍之介の蛇に勝つ唯一の計画が狂った。

 

 龍之介の頭からすっかり忘れられていた。

 モーリアンは予測不能な奴(トリックスター)だったと――。

挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)「今回もほんまはこのコーナーなかったんやけど、急遽特別コーナーや!」


挿絵(By みてみん)「何かあったの?」


挿絵(By みてみん)「それがな、心のやさしい人が評価ポイントを入れてくれたねん。これはお礼をいうしかないやろ」


挿絵(By みてみん)「まさか、そんなことで急遽おまけを増やしたわけ……? やめてよめんどくさい」


挿絵(By みてみん)「ひと手間かけて評価してくれたんや。こっちは二手間も三手間もかけて誠意を伝えんなあかんのんや。読者様は神様や! 施されたら施し返す、恩返しです!」


挿絵(By みてみん)「まだ、半沢ネタにしがみついてんのかい。だからって、評価入るたびにいちいちお礼言うつもり? 連続で評価入っらどうするの。体力持たないわよ」


挿絵(By みてみん)「そんなこと心配せんでも大丈夫や。絶対そんなことないさかい」


挿絵(By みてみん)「・・・・・・ああ、それはそうね……。それはそれで悲しいわね」


挿絵(By みてみん)「やから、何か恩返しせんなあかんな。こうなったら、エリーッちにひと肌脱いでもらって、お色気してもらおうか。男ら喜ぶで」


挿絵(By みてみん)「何でやねん! あんたが一肌脱げよ! てか、一肌脱ぐって本当に服を脱ぐって意味じゃないからね」


挿絵(By みてみん)「わかったわ。ほんならゴリッチにひと肌脱いでもらおう」


挿絵(By みてみん)「誰が喜ぶんじゃ! ただのボディビルディングショーじゃねえか! ゴリッチは一肌どころじゃなくて、全部脱いでるから!」


挿絵(By みてみん)「ゴリッチ一人では引きが弱いか。ほんなら、カバーッちとゴリッチの絡みや! これなら高視聴率間違いないで!」


挿絵(By みてみん)「どんだけマニアックな読者をターゲットにしとんじゃ! せめて潤弥と龍之介でしょ」


挿絵(By みてみん)「わかった。これは百合しかないってことやな。エリーッちとうちが――」


挿絵(By みてみん)「もうええわ」


挿絵(By みてみん)「評価ありがとうやで~」


挿絵(By みてみん)「ありがとう。モチベーション上がったわ。じゃあね~」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ