無人島生活27話 一方そのころ★
豪華客船みたいな大きな船でなくてもいい、贅沢は言わない七人が乗れるほどの小さな船でいいから通ってくれ……、と神だか仏だかに祈りながら潤弥は海を眺めていた。
砂浜に体操座りでボ~と地平線まで続く海を眺めている。
狼煙を焚き、衛星か飛行機、ヘリコプター、はたまた未確認飛行物体でも何でもいいから見えるように『SOS』の三文字を材木を並べ、大きく書いている。
見張り番はここ半月交代で受け持って来たが、希望ある変化は何も起きていない……。せめて海鳥でも飛んでいてくれ……。海鳥が飛ぶということは、近くに陸地があるのだと昔何かで見た。
その海鳥がいないのだから、本当に陸地はないのだ……。
どうしてこんな目に遭わなきゃいけないんだ……。
自分が何をした……?
売れるまで女のヒモになっていたのがいけないのか?
多くの女を振って来たのがいけないのか?
それとも、あいつを見下していたのがいけないのか?
それともそれとも、あれか? いや、あれかもしれない……。
はたまた、あれが原因で……。
こうして考えてみると、意外に罰が当たることあるんじゃね? ことに気付いた潤弥。だが、ここまでの仕打ちはないんじゃないか神様……。
これもあのマネージャーのせいだっ!
小ズルそうな顔をした男。
微笑むと目が三日月型になり、吊り上げられた口元はニコちゃんマークそのもの。ひょうひょうと人を小馬鹿にした話し方は好きになれない。
このまま生きて帰れなければ、マネージャーの枕元に化けてでてやる……。怨念の炎をたぎらせていたとき、潤弥の心を体現させたみたいなバキバキバキバキ、ととんでもなくデカい音が聴こえた。
「何だ何だッ」
黒ひげ危機一髪のように飛び起きて、音の聴こえた方を振り向いた。バキバキバキバキと連続して樹が折れる雷に酷似した音が聴こえる……。
いったい何だ?
またゴリラが樹を倒してるのか?
「たく。驚かせるな」
悪態をついて、ドスっと再び砂浜に腰を据える。
それからでもバキバキバキバキと聴こえるてくるが、潤弥は深く考えることもなくただただ海を眺めていた。この無人島に来て、精神的に成長したホスト。
そのときは突如訪れた。
地平線にポツンと黒い点が動いているのを見た。
潤弥は唖然と言葉を失う。
間違いない……。あれは……船だっ。
潤弥は薪を火の中に慌ててくべ、とにかく手を大きく振り大声で叫んだ――。
*
一方そのころ「お風呂に入りたいッ」と駄々をこねていたツッコミ担当はというと、竹林地帯にいたそうな。
決してかぐや姫を探しいるわけではない。
中二病とツッコミが探しているのは、普通の竹みたいに中が空洞になっている樹なのである。つまりは、竹林地帯に来た時点で二人の目的は達成されていた。
中二病は自作の斧で竹みたいな樹を根元から切り倒す。
竹と同じで横からの衝撃にはとてつもなく強く、縦に亀裂が入るだけで倒れる気配を見せない。打撃攻撃は殆ど受け流されている。ノコギリでもあれば楽に切れるのだが。
「我のアックス・スラッシュが効かぬとはな」
エリーは竹のような樹を引っ張って、力いっぱい反らせた。
これで多少なりとも力の分散を抑えることができる(はず)。
竹を反らせたその姿は、断頭台の上で首を垂れる罪人の姿を彷彿とさせられ何故か心が痛んだ。
「ご苦労」
石斧を天高く掲げて、一気に振り下ろすと樹の繊維を断ち切った。
その反動で力いっぱい竹のような樹を押さえていたエリーは、力余り尻もちを盛大についた。
「イタッ……!」
倒した樹は中が空洞のおかげで、5メートルほどある割にとても軽かった。ゴリッチがいなくとも、優に運ぶことができるほどだ。
痛い目を見たが、これでお風呂に入れることを思うと苛立ちなど起きない。
「これでできるのよね?」
「材料さえそろえば造作もないことだ。フフフハハハハ」
てなわけで二人は後ろと前を持って、樹を運ぶことにした。
えっさこらと樹を運んでいるとき、バキバキバキバキと鼓膜を突き刺すけたたましい爆音が、すぐ近くから聴こえた。
エリーは持っていた樹を落として、耳を覆った。こだましながらエコーを繰り返す音が小さくなり、やっと口を開く。
「何この音……」
「樹が倒れる音だろう」
「何で樹が倒れるの?」
「我が知るわけないだろう。百獣の王が修行でもしているのではないか」
また島の隅々まで走り抜ける爆音が鳴る。
やはり何かおかしい。
「ゴリッチでもこんなことしないって……。何かあったんじゃない……?」
「何があると言うんだ、この島で?」
「わからないけど……。何かは何かよ……」
しばらくしてまた樹々がなぎ倒される音が鳴り、止んだ。
田舎の花火大会で次打ち上げられる花火を待つような心境で爆音に備えていたが、最後の花火が終わった後みたいにし~んとしたままだ。
しばらく迷った末エリーは切り出した。
「様子を見に行きましょ」
「本気か?」
「嘘いってどうするの」
エリーは音のした方角に恐る恐る進みはじめた。
渋々龍之介もあとに続く。竹林地帯をしばらく歩いていくと、樹々の倒れている一帯に出た。竜巻が通過したあとを連想する、一直線に樹々がなぎ倒されている。
こんな人知を超えたことができるのはゴリッチしかいないが……。
何があったというのか?
「どうした?」
追いついた龍之介は立ち尽くすエリーが見た光景を目の当たりにして、絶句した。
「やっぱり、何かあったのよ……」
エリーはなぎ倒された樹々が倒れた方角を見た。
すべての樹が西側に倒れていることを見ると、この現象を引き起こした何かがいるということだ。
「おいッ。どこに行くッ!」
エリーはなぎ倒された樹々が示す方向に駆けだした。
背後から龍之介の呼び止める声が聞こえるが、完全に無視を貫く。
そしてエリーは見たのだった。
とてつもなく巨大な蛇とノーガードで打ち合いを繰り広げているゴリッチを……。
そのときテンプレ全開でエリーが小枝を踏んだせいで、ゴリッチはこちらに気が付いた。気を削がれた一瞬の隙をつき、蛇はゴリッチにすかさず巻きついたッ!
エリーのせいでゴリッチは頭から飲み込まれたのだった――。




