無人島生活24話 派手な色しているには、している意味があるから★
この島で唯一危険な生物がいるとすれば、それは毒蛇だった。
誰も実際に噛まれたことがないので、毒蛇なのかどうかわかっていないが、『俺様は毒蛇だっ!』というオーラを全身から醸し出した蛍光色の蛇なら何度も見た。
綺麗なバラには棘があるではないが、大抵蛍光色や目立つ色をしている奴には毒がある。毒キノコしかり、ヒョウモンダコしかり、サンゴヘビ属しかり、だ。
そのような色のことを警告色というそうだ。
自身の脅威となりえる捕食者に、『俺には毒があるからそれ以上近ずくな』『俺に触れれば火傷するぜ』などど警告しているらしい。いわゆる、生存戦略。
あまり知られていないようだが、あのカラフルな天道虫も毒がある。
まあ、毒があると言っても、死に至るような猛毒などではなく、ただただ苦いというだけのこと。つまりは『俺は喰っても美味くないぜ。とてつもなく苦いんだからなっ』と警告してくれているのだ。
苦虫を嚙み潰したような、などと小説などで使われることがあるが、あれは天道虫のことだろうか?
なぜ、このような関係のない話をしているかと言うと、今目の前に黄色、赤、黒の警告色をした蛇がいるからなのだ。
蛇と対峙しているのは百獣の王、霊長類最強、生ける伝説、人間ゴリラ、ゴリラ、ゴリラゴリラゴリラと数々のあだ名を持つ、ゴリッチだ。
海で魚を獲っているいるのではなく蛇を獲っていたゴリラ。
赤、黄色、黒のシマヘビのような蛇は顔を持ち上げて、毒牙を剥きゴリッチに威嚇している。どちらが先に動くかを牽制している、膠着状態。
刹那ッ、先に動いたのは蛇だった。
蛇はバネのように尻尾で地面を蹴ると、弾丸のようにゴリッチに喰らいつこうとした。ゴリッチの動体視力は、放たれた弾丸を視界にとらえるほど(誇張し過ぎ)。
蛇の動きなど、止まっているようにしか見えなかった。
ひらりと横に飛びのき、蛇の攻撃を余裕でかわすゴリラ。
宙を舞う蛇は、フィールド全体を最大限、自分の手足のように利用する。
そこら中に生える樹を足場にして、蛇は四方八方からゴリッチに攻撃を仕掛けた。右から、左から、背後から。だがゴリッチに攻撃は当たらない。
真上から蛇が襲い掛かったとき、決着がついた。
ゴリッチはうなじに襲い掛かろうとする蛇を後ろ手につかみ、捕獲した。尾を振って、バタバタ暴れる蛇。
「済まない」
ゴリッチは心の中で詫び、そして感謝を伝えて、カバー隊長から借りたナイフで頭を切り落とした。頭を切り落としてからも、蛇はしばらく暴れていた。
持っていた編み籠に蛇を入れる。
編み籠の中には、三匹の蛇が入っていた。蛇とて貴重な食糧で、たんぱく質。無人島で生き残るには、何でも食べるしかないのだ。蛇には悪いが、ゴリッチは蛇狩りにいそしんでいた。
蛇を探して森の中を彷徨い歩いていると、そいつは突然現れた。そう蛇だ。だが、通常の蛇ではない。
何が通常の蛇と違うかというと、デカさが尋常ではない。
そのデカさに、さすがのゴリッチでも怯むほどだ。
樹の幹に蜷局を巻いているので、ハッキリとしたことはわからないが、ゴリッチの見た手では、優に四メートルを超えているであろう、アナコンダのような巨大蛇。胴の太さは樹の幹並みに太い……。
色は土のような褐色で、腹ばいは白い。網目のうろこが目の錯覚を引き起こす。樹の幹が巨大蛇の締め付けで、ミシミシと悲鳴を上げていた。
どうして、こんな蛇がいるんだ……?
小動物がこれほど繁殖しているのに……?
まるで、異界から突如現れたかのように……。
巨大蛇は巻き付いていた樹の幹を締め上げて、破壊した。
顔を高々と上げて、ゴリッチを睨み下ろす。ここで、逃げては今後の脅威になることは確実。ここでやるしかないっ。ゴリッチはただ一人で、巨大蛇に闘いを挑む覚悟を決めた。
巨大蛇は巻き付いていた幹を放して、地面に下りた。
蛇との距離は二十メートルほど開いているが、それでも圧倒的な威圧感は肌を刺すほどにヒシヒシと伝わってくる。陸を泳ぐように体をくねらせて、ゴリッチを囲い込む蛇。
五メートルほどの距離に迫っている。
蛇のリーチを考えると、射程距離内だろう。気を一瞬でも抜こうものなら、間合いを詰められ命はない……。ジョーズとの決戦のときもそうだったが、この死と隣り合わせの緊張感は何とも言えなく、昂るものがある。
現代社会で忘れ去られていた、人間の闘争本能っ。
この無人島生活で野性を忘れたゴリラは、戦闘民族の血が先祖返りしようとしているのだ。
細長い舌を出して、威嚇する巨大蛇。ゴリッチも持っていた編み籠を下し、ベーシックな構えを取る。蛇とゴリラの間では、目に見ることのできないイメージ上で、数多の闘いのシミュレーションが繰り広げられていた。
数多ある戦闘から、一番勝率の高い闘いを選抜するための膠着状態。牙も持たず、鋭い爪も持たず、強靭な肉体も持たない非力な人間がこの生存競争を勝ち抜いてこれたのは、イメージできたから。
危機をいち早く察知し、未来を見据え、準備をすることができたから人間は生き残ることができた。ホモサピエンス、ゴリッチは考える。この短時間で、戦闘シミュレーションを何百通りも考える。
頼れる武器はカバー隊長からもらったサバイバルナイフ一本、そして、己の拳ッ! 面白い。
自分の力を試したい、どこまで己の力が通用するのかを確かめたい、とゴリッチは強く想った(武闘家ではなく、アスリートですッ!)。
今、巨大蛇とゴリラの命を懸けた闘いが、始まろうとしていた――。
「あれ、あのコーナーはどこいったん? 何でまたこの朝のニュース番組みたいなセットに戻っとん?」
「いや、打ち切りではないみたいよ。もう一応全キャラを登場させたから、それで終わったみたい。それでまたQ&Aのセットに戻ったってわけ」
「Q&Aってゆうても、何をしゃべれって言う? もうしゃべることもないで」
「うちらが暮らしているところ無人島やろ。つまりや、トイレないやろ。無人島でのトイレ事情や。みんな無人島でのトイレ事情を知りたがっていると思うねん」
「何言ってんのッ! モデルやアイドルはトイレしないの。これ常識よ」
「エリーっち、嘘はあかんで。生きてるんやったら、う〇こ、するはずやろッ!」
「あなた……あなた……。女の子だったら、そんなこと大っぴらに言っちゃダメッ!」
「何でえな? 女の子でもう〇こくらい言うわ。うちの友達なんて、よういうで。女がう○こ言ったらあかんいうのは、男の女に対する幻想や」
「いつから下ネタ系のボケをやるようになったのッ。あたしはそんな子にあなたを育てた憶えないわッ」
「育てられた憶えないわッ。で、どうなん。うちは無人島でも一日一回快調やで」
「みんなも草むらにトイレしに行きよるで。やけど、エリーっちのトイレだけは見たことないわ。いったいいつしよん?」
「ピ―――――――――――――――――――――ッ!。視聴者のみなさん、ごめんなさい。これは放送事故だから。じゃあ、次回」
「逃げるなんてせこいで。視聴者はエリーっちのトイレ事情を知りたがっとるんやからッ!」




