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無人島生活22話 風呂に入りたいッ★

 はい、というわけで、砂浜に打ち上げられていたドラム缶を、湖に運んできたのである。


 ドラム缶の中は空だった。どこの国から流れてきたのかは知らないが、無人島だと言うのに流れ着くごみの多いこと。こんなところまでプラごみが流れ着いているのだから……。


 2050年には魚の数よりも、ごみの方が多くなるという話をどこかで聞いたことがあるが、本当だな、と無人島生活をはじめて、考えることになったエリーなのである。


 ゴリッチとカバー隊長にドラム缶を担がせて、湖まで運んできたはいいが、どうやってお風呂を沸かしたらいいのだろうか?


 こういうときに頼りになるのが、「ねえ、龍之介。ちょっと頼みがあるんだけど」そうド〇えもん的立場の中二病だ。


 中二病は刈り取った羊の毛を、綺麗に何度も何度も洗い、乾かし、コットンみたくなったウールで毛糸を作っているのだった。


 コットンを両手でこねて、細長く伸ばすとあら不思議、ちゃんと毛糸になっている。こうやって毛糸を作るのだな、とエリーは新鮮な気持ちになった。


「頼み? 我は今忙しい。後にしてくれ」


 中二病はコットンをこねるのに夢中で、こちらを向かない。


「そこを何とかお願い」


 エリーは手のひらを合わせ頭を下げた。


「お風呂を作って欲しいの」


 龍之介はウールから顔を上げて、疑問に首をかしげた。


「実はね。浜辺にドラム缶が打ち上げられていたの。結構大きいやつ。あなたなら、ドラム缶でお風呂作れるでしょ」


 隊長が話を持って来たときには、龍之介の姿はなく、ドラム缶のことを知らないのだ。どこに行ったんだ? と思ったら羊の毛を洗っていたわけだ。


「当たり前だ。我にできないことなどない」


「作ってくれる?」


「よかろう」


 ちょろいな、とエリーは心の中でニヤリと笑う。

 で、中二病をドラム缶を運んできた湖まで連れてきたのであった。


「これが、例のブツか」


 中二病はドラム缶を隅から隅まで、観察した。


「ふむ、錆も大したことはない。流されて間もないのだろう」


「で、どう。作れそう?」


「これしきのこと、隊長や百獣の王でも作れるだろう。二人はどこに行った?」


「ゴリッチは魚を獲りに、カバー隊長はどこに行ったのか知らないわ」


 無人島生活に慣れ、近頃は想い想いの時間を取れるときが増えた。

 この島は果物や、植物が豊富で、想像していた過酷さを殆ど経験していないのだ。何よりも、危険動物がいないことが精神的に負担が少なくなっている要因だ。この島に不時着できたことが、不幸中の幸いといっていい。


「まあいい。我一人で十分だ」


 いちいち言動が鼻につくが、ここは何も言わないでおこう。


「この蓋どうするの? これ切り抜かなきゃ、入ることすらできないわ。どうやって、開けるつもり?」


 ドラム缶はキャップ式になっていた。

 小さな注ぎ口から、ガソリンなのか石油なのかは知らないが、出して利用していたようである。缶切りのようなものがあれば、簡単に開けることができるだろうが、ここに缶切りなどあろうはずもない。


 いや、カバー隊長ならもしかすると持っているかもしれないが、あの馬鹿の姿は見当たらなかった。


「造作もないことだ。こんなものそこら辺に落ちている石を使えば、開けられる」


 龍之介は先のとんがった、手ごろな石と、平たい石を二つ探し持って来た。


「刮目せよッ!」


 龍之介はドラム缶の蓋の横(缶切りの刃が入るところ)にとがった石を当てて、平たい石で思いっきり叩いた。わずかに、凹みができたが、穴は開かない。


「想像以上に耐久度があるようだな。だが、時間の問題だッ」


 三度一点集中で石を打ち付けると、ドラム缶の隅に穴が開いた。かなり、根気がいる作業だが、意外に中二病は根気がいい性格だった。


 数か所切れ込みを入れると、龍之介は大きな石を持ってきて、蓋の中央を何度か叩いた。すると、あら不思議でもないか、当然の如く蓋はドラム缶の中に落ちた。


 ドラム缶はまったく使われていないのか、新品みたく綺麗だった。

 油っぽくもないし、錆てもいない。

 なんという幸運。

 もし、油でギトギトしていたら、どうやって洗おうか? と悩んでいたところだった。


 湖の水で洗ったら、水が飲めなくなってしまうし、海にまた持って行くのも一苦労だし、何より環境汚染になる(無人島でそんなこと言っていられないが)。その心配は無用だった。


「開いたわね。洗わなくて大丈夫なの?」


 龍之介はドラム缶の中を手のひらで触れた。

 

「新品そのものだ。なぜ、このような物が流れ着いている?」


「どっかの国が使わずに海に流したんじゃないの? それかタンカーに乗せていた空のドラム缶が何らかの拍子に海に落ちちゃったとか」


 龍之介は顎を手で触りながら、しばらく考えていたが自分なりに納得したようだ。


「それもそうだな。別に深く考えることではない」


「そうよ。何はともあれありがたいじゃない。考えている時間があるなら、早く作ってよ」


 人使いが荒いエリー。

 龍之介は湖の(ほとり)に穴を掘りはじめた。


「何してるの?」


「火を焚くための堀を作っている」


 続いてそれなにり大きな石をいくつか探してきて、掘った穴の外塀に並べはじめた。続いて、その上にドラム缶を乗せる。ドラム缶の下に空洞ができた。

 

「バケツを持ってきてくれ」


 龍之介はドラム缶を固定していた。

 今のままではグラグラ動き危なっかしいので地面を整えている。

 

「わかった」


 何であたしが、と愚痴をこぼしそうになったが、さすがに頼んでいる立場上、頼まれたら行わざるを得ない。


 エリーは洞窟の中に置いていたバケツを持って、龍之介の下に戻った。

 ガンガンガン、と金属を打つような音が聴こえる。


「はい。バケツぅ……」

 

 樹々が生い茂る樹間を抜けて、バケツを掲げたときだった。

 エリーはとんでもないことをしている最中の龍之介を目撃したのだった――。

    挿絵(By みてみん)

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