無人島生活19話 二年後にバブリーディング諸島で!★
ゴリッチの必殺技『ゴリラの極み』と龍之介のヘパイストス・ザ・クリエイターの連携業で洞窟を塞ぐ扉を作ることができた。
ゴリラの極みで作った角材を、龍之介はそこら中の樹に巻き付いている蔦で結び、扉を作る。
出入り口のサイドに木を打ち込んで、横開き式の扉を付ける。
洞窟の中で焚火をしても大丈夫なように、森の中にあった竹のように中が空洞の樹の幹を使って煙突を作った。
壁に所々穴を開けて、覆った出入り口にも通気口を作る徹底ぶり。風も防げて暖も取れる、一石二鳥。
わずか半日足らずで作ることができた。殆どゴリッチと龍之介が作業を行っており、エリーと隊長は眺めているだけだった。
「我の頭脳と百獣の王のパワーに掛かれば、洞窟の入り口を塞ぐなど造作もないことよ」
額に浮かんだ汗を手で払いながら、龍之介はドヤ顔で言った。
いちいち態度が気に障るが、口で言うだけの働きはしているので強くつっこむ訳にもいかなかった。
「ええ、あなたとゴリッチがいなかったら、できなかったと思う。ありがとう」
エリーは素直にお礼を言うと、龍之介は頬を赤らめて、「当然だ」と顔をそらした。
ブタもおだてりゃ何とやら、これからもおだてて生活に必要な物をいろいろと作ってもらおうとエリーは心の中でほくそ笑む。
作業を終えてひと休憩したのちに、カバー隊長が言った。
「もう一か所、扉を作って欲しいところがあるんだが、いいだろうか」
「我は構わんが」
「僕も大丈夫だけど」
龍之介とゴリッチはカバー隊長を見ながら、同時に答えた。
「よし。それでははじめようか。君たち二人なら、あっという間にできるだろう」
と、いうことで二人はブタもおだてりゃ何とやら的に、新たにもう一か所の扉を作ることになった。隊長の後に続き、断崖の麓を歩くこと一分ほどのところにもう一か所の洞窟があった。
その洞窟は小さく、高さは175㎝のエリーの頭すれすれ、少し頭をかがめなければ、たんこぶを作ってしまうほどだった。
「ここに扉を付けてどうするの?」
率直な疑問だった。
ドワーフならともかく、人間が住むには余りに不便すぎる。
「良い質問ですね」
隊長は池上〇のようなニュアンスで言って、「食料の保管室を作りたいんだ」と答えた。
「食料なら、あの洞窟に溜めればいいじゃない」
「いや、そう言う訳にもいかないんだ」
「どうして?」
「これから冬に備えて多くの食料を備蓄しておかなければならない。あの洞窟にそれだけの食料は保管できないんだ」
自称グリンベレーの戦士だけあって、言っていることは真面に思われる。エリーにはサバイバル能力も知識もないから、自称経験者の意見を通すことにした。
「そう。それじゃあ、ちゃっちゃと作っちゃってよ」
鶴の一声ならぬエリーの一声で、ゴリッチと龍之介はゴリラの極みッ! とヘパイストス・ザ・クリエイターッ! を使って小さな洞窟の出入り口に扉を作ったのである。
ちょうど扉を作ったころに、食料調達に出ていた三人が帰ってきた。
三人は抱えるようにして両手いっぱいに果物? を持っていた。バナナのような果物や、ドリアンのような果物、ラ・フランスみたいな果物が見えている。
「大量やで」
ご機嫌な声でモーリアンは言った。
「本当ね。変なものでも持って帰ってくるのかと思ったけど、普通に食べられそうでびっくりしたわ」
「うちらをどない使えん奴や思ってんねん」
「ゴリラくらいには使える奴だと思ってるけど」
「ゴリッチに失礼やろッ」
「あんたも失礼でしょ」
漫才を終えて、「想像しとったもんより良いもん出来てるな」モーリアンは洞窟に取り付けられた扉を見て感心したように言った。
「フフフ、当然だ。我の手に掛かれば――」
龍之介の決め台詞を最後まで聞かない内に、モーリアンは、「で、ノコギリや斧もないゆうのに、どないして作ったん?」と疑問を口にした。
「あんたがッ、常識的なこと訊いてるッ。悪い物でも食べたんじゃないんでしょうね……。それとも熱あるの……?」
エリーはモーリアンの額に手をかざし、熱がないか確認した。
「ほんまにッ、エリーっちはうちをなんやと思っとんッ。うちかて真面なことくらいゆうってッ」
熱はないようでエリーはひとまず安心した。
「ははは、ごめんごめん。ノコギリや斧がないのにどうやって作ったかって訊いてるのよね。話しても信じてもらえないと思うけど、ゴリッチのパンチと龍之介のクリエイティブ能力の賜物よ」
何言ってんだあたし?
自分の目で見ていなければ、絶対に信じなかっただろう。
「パンチで樹を倒したゆうん?」
「そう。信じられないでしょ」
エリーが訊き返すと、「ほんまにゴリッチすごいな。うちにも見してえな」と持っていた果物をその場に置いてゴリッチに迫った。
ゴリッチは観客の前で芸を披露する大道芸人のように、壮絶な修行で身につけたゴリラの極みッ! を披露する。
雷に似た音を轟かせながら樹は倒れた。
※倒した樹はスタッフが乾燥させて、焚火の薪としました。自然破壊ではないですッ。
「おおッ! これが噂に聞くゴリラの極みってやつやなッ!」
興奮に鼻息荒いモーリアン。
「会得すんの大変やッたやろ」
ゴリッチ 〇0歳 冬
己の肉体と技術に限界を感じ悩みに悩み抜いた結果、彼がたどり着いた結果はコーチえの感謝であった。
一日一万回 感謝のトレーニング!
気を整え、拝み、祈り、構えて、腕立て伏せ!
一連の動作を一回こなすのに当初は5~6秒。
一万回を終えるまでに、初日は18時間以上を費やした。
「ちょちょちょちょッ。また変なナレーションが入ってるってッ!」
おかしな回想シーンにエリーは横やりを入れたッ。
「ちょっ、エリーっちッ。ナレーションをさえぎらんといてえな」
「もう、前回やったからいいのッ」
モーリアンは不服そうだったが、それ以上は追求してこなかった。
「ゴリッチもしっかりと修行編を乗り越えてきたんやな」
「ああ、あの3Dじゃなく2Yを見たときにこのままじゃ駄目なんだって、自分のできることをしなきゃと決意したんだ。それから僕は冬の山にこもり、一日一万回感謝のトレーニングッ! をした」
「ちょっと……待って二人とも急に何の話をしているの……?」
エリーの問い掛けに答えることなく、二人は話を続ける。
「ゴリッチも苦労したんやな。うちも修行編では苦労したで。師匠にお笑いの呼吸やないと空気が吸えへんマスクを付けられてな、はじめは窒息するか思うたわ」
「お笑いの呼吸って何なのッ!」
「お笑いの呼吸ゆうのは、呼吸をするかのように人を笑わせる呼吸法のことやで。お笑い芸人はみんなお笑いの呼吸を会得しとるんや」
「嘘だろ」とエリー。
「ごつえらい修行を乗り越えて、うちはお笑いの呼吸を会得した。そして、師匠は最後に笑いの闘技塔にうちを放り込んだんやわ。世界各地から名のあるコメディアンたちが集まっとたわ」
「何その笑いの闘技塔って中二病的なネーミング」
「うちはお笑いの呼吸を駆使して、闘技塔を勝ち抜いていった。そして、うちは闘技塔を制覇したんやッ」
「そのッ、○UN○ER×○UN○ERの天空闘技場編とジ○ジ○二部の地獄昇柱を混ぜたような修行編ッ!」
「ほんま死ぬか思うたで」
しみじみとひとりでにうなずくモーリアン。
「エリーっちはどんな修行編を乗り越えてきたんや?」
「は? ないないないない。あんた何言ってんの?」
「えッ! エリーっちは修行編やってへんのんッ」
「意味わからんて。あんたら二人がボケてるだけでしょ」
とエリーが言うと、「みんな修行編を乗り越えてこのバブリーディング諸島にやってきてるんやでッ」と熱弁するモーリアン。
「なあ、みんなッ」
モーリアンがみなに訊ねると、「当然だッ。我に努力は似合わんがなッ」「そうよ~」「俺っちだって辛い修行を乗り越えたぜ」「私はグリンベレーで毎日が修行編だ」とそれぞれが答えた。
「うっそっ~……」
「嘘じゃないで。エリーっちが二年を無駄にしているころに、みんな辛い修行編を乗り越えてきたんやで」
エリーはみなの顔を見まわした。
不思議なことに嘘を言っているようにはみえない……。
「龍之介っちは金平塔を登って、その上にいる金平様っていう猫に修行をつけてもらったんや」
「いや……。何の修業をつけてもらうのよ? 中二病を悪化させる修行? それとも物作りの修行?」
「紅っちは兎を助けたことで、森の中にあるウサギハウスってところの兎仙人に修行をつけてもらんやで。兎仙人のつんつんやパフパフのセクハラ行為に耐えてきたッ」
「何で耐える必要あんのよッ。兎仙人ってなにッ! あの亀に乗ってるハゲ仙人の親戚かなんかッ! てかそれ修行じゃなくないッ!」
「カバー隊長は教官から修行を付けてもらったんや。教官と書かれた石を拾ってくるゆう過酷な修行や、そして牛乳配達の修業も乗り越えてきた。その辺で拾ってきた石に教官って書いてもすぐに見破られるから、インチキもでけへんのんやッ」
「それ修行に入るのッ! てか、どっかで聞いたことあるんですけどッ」
「潤弥っちは重力が十倍の状況でも女を口説けるように修行したッ」
「一人だけベクトル違うじゃないッ」
「どうやエリーっち。みんな二年間を無駄にしてへんのんや」
「二年って何? そんな修行自体が無駄だと思うけどッ! てか、そんな設定いつからあったの?」
「今からでも遅ないで。エリーっちも修行編をやらなあかんわ。はじめから強いなんて邪道やわッ。みんな泥臭い修行編を乗り越えてきたんやでッ」
「殆ど修行じゃなくないッ!」
「どうなんや、エリーっち。修行編をやるんかッ」
モーリアンはエリーに迫った。
「ちょっと、何……? 本気なの……? あんた達も見てないで助けてよッ」
モーリアンの追及に後ずさりしながら、エリーはみなに救いを求めた。だがしかし、みなの目は冷たかった。
「ちょっと、黙って見てないで、このボケマシーンをどうにかしてってッ……」
「おまえ往生際が悪いぞ」
言ったのは潤弥。
「俺っちたちが代わりばんこに稽古を付けてやるから、修行編をやるんだッ」
稽古をつけるって何?
「そうだぞエリー君。逃げちゃ駄目だッ」
逃げちゃ駄目って何から?
「我がサポートしてやるから心配しるな」
心配しかないんですけど……。
「そうよ~。わたしなんてね……わたしなんて……あの爺に……あの爺に……」
おまえは兎仙人に何をされたんだッ!
「僕が体得している技を教えてあげるよ」
ゴリラの技なんてあたしが使えると思ってんのか? ゴリラの極みか? ゴリラ式観音か? スペック考えろ、スペックッ! かくして、エリーの修行編が幕を開けるのであった。
「そんなわけないから!」




