無人島生活17話 おばけなんてないさ、おばけなんてうそさ――★
いいか悪いかわからないが、まあ多少なりとも暖は取れるだろう、とエリーは洞窟を覗き込みながら思った。
175㎝のエリーの身長と同じ高さの入り口。
頭を下げなくても、ギリギリ当たらないのだから、入り口の高さは175㎝だろう。横は100㎝ほどか?
ドーム状に広がっているのではなく、長方形の形で奥に続いているようだ。奥が暗く何も見えない……。
「隊長。ライトかして」
言って手を差し出すと、隊長はエリー手にひんやりと冷たい金属を載せた。
「ライターじゃなくて、ライト」
「ああ、済まない」
隊長はライターと入れ替えるように、「だから、ナイフじゃなくて、ライトだってッ!」エリーの手に置いたのはナイフだった。
「あかんで、カバーっち。ボケが弱いで。もっと、インパクトのあるもん渡さな。電話ゆうたらバナナ、バナナゆうたらゴリラ、ゴリラゆうたら、ゴリラゴリラゴリラを渡すとかやな」
ボケの伝道をするモーリアンにツッコミを入れている暇はない。
てか、その理屈が理解できない。
何でゴリラ?
「だからッ! 今は漫才やってる暇ないんだよッ!」
エリーは怒鳴って、無理やり隊長からライトを奪い取った。
奪い取ったライトで、洞窟の奥を照らすと想像以上に深いことがわかった。恐る恐る洞窟内に入って、どれほど深いのかを確かめる。
お化け屋敷とか苦手なエリーは引き腰だった……。
エリーの恐怖心がミュージックとなって具現化したのか、あの不気味な音がどこからともなく聴こえる……。
ああ、こんなときになんで想い出しちゃうちゃか……。違うことを考えて気持ちを紛らわせようとするが、まるで本当にミュージックが流れているかのように耳から離れなかった……。
「トゥルルル、トゥルルル、トゥトゥ♪ トゥルルル、トゥルルル、トゥトゥ♪ トゥルルル、トゥルルル、トゥトゥ♪」
「てッ! 世に〇奇妙〇物語のミュージックッ! あんたが流してたんかいッ!」
エリーは洞窟の入り口で、呪文のようにトゥルルル、トゥルルルル、トゥトゥ♪ と唱えるモーリアンの下に駆け寄り胸倉をつかんだ。
「いや~、雰囲気を盛り上げたろう思うたんやわ。BGMは大切やろ」
「選曲間違ってんだろうがッ! そのトゥルルル、トゥルルル、トゥトゥ♪ はな、ホラーだろうッ! ド〇え〇んのららららららららら、かッ。サ〇エ〇んのお魚加えたドラ猫を歌って、お願いだからッ!」
ブンブンゆすられ、モーリアンは脳震盪を起こしそうになった。
「こ……怖いわ……エリーっち……。そこまで怒らんでええやん……。もしかして、ホラー映画や遊園地のお化け屋敷駄目な人なん? それやから、あのとき諭吉を焚火にくべる暴挙にでたんやな。暗いの怖いから」
ギクリ……ここで舐められたらメンツが立たんッ……ひと昔前のスケバン思考のエリーなのである。
「べべべべべべべべべ、べっつに~……。ゆゆゆゆゆ、幽霊何て怖いわけないじゃんッ。何なの? 何言ってんの? 子供じゃあるまいし。おばけなんてないさ、おばけなんてうそさ、ねぼけたひとがみまちがえたのさ、よッ。幽霊の正体見たり枯れ尾花よッ。あんた、幽霊なんか信じてるのッ。バッカ見たいッ」
「いや、てんぱってるやん」
「てててててて、てんぱってねえしッ。誰がてんぱってるの? ねえ、誰が……? おばけなんて信じてる人の気が知れないんですけど~……」
「エリーっち……目が血走って怖いで……。大丈夫やて、人間には苦手なもんの一つや二つあるもんなんやから。それに、お化けを怖がる女子なんて、萌えやんッ! エリーっちが幽霊怖がってたってうち馬鹿にしたりせえへんで。何なら夜トイレ付いてったりまちゅよッ」
「だからッ、幽霊何て怖くないって言ってんじゃんッ!」
そのとき、「わッ!!!!!!!!」とモーリアンがとてつもない大声を上げた。
「ひッ……」
エリーは腑抜けた声を上げ、その場に頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ほら、やっぱり幽霊怖いんやん」
「ここここここ怖くねえしッ!」
「意地張った小学生にしか見えんで。それに、涙目やん」
「涙目じゃねえしッ! 目にゴミが入ったんだしッ!」
「わっ!!!!!!!!」
またもエリーは肩を弾ませて、その場に尻もちをついた。
「ほら、やっぱ怖いんやん」
「ちげえしッ! おっきな音に驚いただけだしッ!」
「いや、キャラ変わっとるやん。大丈夫やから、どんな臆病な子やとしても、おねえちゃんがついとったるからな。おお、よちよち」
「だからッ! ちげえしッ!」
「おお、そうでちゅか。一緒にトイレ行きまちょね」
モーリアンはつかみかかって来たエリーの手をとって、洞窟の奥に引っ張って行く。エリーはお化け屋敷に入った子供のように、モーリアンの肩に手を添えて一向に離れようとしない。
「怖くないでちゅか。怖かったらママに抱きついてもええんやで」
「だからッ」
と、そのときだった、洞窟は行き止まりになった。
「なんやねん。しょぼいお化け屋敷やな。何かでろよ」
愚痴をこぼすモーリアンに対し、胸を撫でおろすエリー。
洞窟の奥行きはだいたい、30~40メートルほどだろうか? それなりに、幅もあり、水が流れ出ていることもなかった。洞窟は一年を通して、気温が一定に保たれているようだ。
「これで終わりか」
後から追いついた、カバー隊長は言った。
「うん。広さは申し分ない。湖からも100メートルほどの距離にあり、海からも徒歩十分ほどだ。ここに拠点にしたいと思うがどう思う」
「あたしは構わないわ」
「うちも別にええで」
「そうか、では、落ちている岩などを整理して、取り掛かろう」
「取り掛かるって何をするの?」
「雨風が入らないように、扉を付ける」
言ってカバー隊長の後に続き外に出た。
外に出ると、龍之介も皆と合流していた。
「みな、そろっているようだな。ちょうどいい。ここを拠点にすることにする。異論はあるだろうか?」
みなに訊ねると、異論の声は上がらなかった。
「よし、では、日が暮れる前にできるだけ、仕事を済ましておきたい。洞窟を整備する者と、食料を集める者に別れよう」
隊長が言ったとき、「ちょっと、待ってくれよ」と潤弥が声を上げた。
「何だね?」
「食料を集める前に、水浴びしたいぜ。汗、泥、砂でイライラしてんだ」
「うん。そうだな。実は私も同意見だ。女性陣は構わないだろうか?」
「ええ、浴びてきなさいよ。さっぱりするわよ」
ということで男衆は四人肩を並べて、100メートルほど先に進んだ森の中にある湖に向かったのである。
「覗くなよッ!」
立ち去り際、潤弥は振り返り言った。
「誰が男の裸なんて覗くかッ」
肩を怒らせ言うエリー。
「ホンマやでッ! うちはBLなんて全然、全然興味ないわッ! BLなんて……BLなんて」
と、言いながらもモーリアンはニヤニヤしながらよだれを垂らした。
「わたしは~、BL大好きだよ~。ゴリラとホストの絡みと、兵士と中二病の絡みが見てみた~い」
紅は目を輝かせながら言った。
「紅っちあんたわかってないで、誰がゴリラとホスト、兵士と中二病の絡みを見たい思うねん?」
ボケマシーンにしては真面なこというな、とエリーは感心した。
「ゴリラと兵士、中二病とホストやろッ!」
「誰がそんな絡み見たがるんじゃッ!」
たまには真面なことを言うな、と感心したのが間違いだった。
「何でなんッ。みんなゴリラと兵士、中二病とホストの絡みを見たいと思っとるで」
「誰が思うんじゃッ! 考えるだけで、吐き気がするわッ」
エリーは気持ち悪い想像をしてしまい、本当に吐き気を催した。
「みんな見たがると思うけどな、ゴリラと兵士の絡み。なあ、紅っち」
「ほんと~、みんな見たがってると思うよ~。ゴリラとホストの絡み~」
と腐女子二人は男たちのBLを夢想するのであった――。
「めんどくさいのよね。こうやって、話しが終わってんのに、ストーリーに関係ない話をうだうだするの。こっちは本編で疲れてるって言うのに。呼び出さないで欲しいわよ」
「てか、うちらどうやってここ来とん? 南の島にいるんちゃったん?」
「17話にもなって、いまさらそれ? はじめに言うべき話じゃないの?」
「南の島にいるはずやのに、何でここにおるんかな? て訊いたんやわ」
「あたしに訊かないでよ。これは触れてはならないブラックボックスなの。細かいことを詮索したら消されるの。だから、その話には触れちゃダメ」
「まあ、そう言うことだよモーリアン君。この世には触れてはならないことが沢山あるんだ。私のグリンベレー時代の仲間に戦闘機のパイロットが何人かいたが、みなUFOを見たという。だが公にはしなかった」
「てかいつからいたの? 急に話しに割り込んで何話し出すの?」
誰も答えない内から、隊長は続けた。
はじめから考えさせる気がないのだ。
「それはだね。そんなことを言えば、頭のおかしな奴だと思われて、飛行機に乗せてもらえなくなるからさ」
「このまま出てこなければ、忘れられそうだったので出てきたんだよ。許してくれエリー君」
「まあ、いいわ。じゃあパッパと終わらせちゃいましょう。まずは読者が一番気になっているであろう、ことから訊くわね」
「あなたみたいな人がグリンベレー何かに入れたの? グリンベレーにいた戦士には見えないんだけど」
「どこからどう見てもグリンベレーではないか。いったい誰が疑う?」
「みんなとちゃうで、うちはカバーっちがグリンベレーのバカ戦士やって信じとるもん」
「バカが付いている時点でいじっているだけにしか見えないんだけど」
「いじってへんて。これはな、愛嬌何やって。ほらあれやあの人かて、アホの○〇ゆう愛嬌で呼ばれとるやん。アホゆうたら〇〇。〇〇ゆうたらアホ。あれと同じやで」
「へ~。だけど、本人はアホって言われるとめちゃくちゃ怒るって聞いたことがあるけど」
「私は構わないから、モーリアン君を許してやってくれエリー君」
「ゴリッチといい隊長といい。それだからこのボケがつけあがるのよ」
押し黙るエリー。
厳しい目でエリーを見すえるモーリアン。




