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無人島生活16話 無人島でのランウェイショー★

 龍之介の言いつけ通り、適当に大きな葉っぱを沢山集めた。

 

「よし、これだけ集まれば十分だ。カバー隊長ナイフをかしてくれ」


「ああ」


 隊長は龍之介にナイフを渡した。

 皆が集めた葉っぱを厳選して、龍之介はナイフで形を整えていく。


「蔦をとって来てくれ」


 龍之介が言うと、「龍之介君」とカバー隊長は手を上げる。


「何だ?」


「紐が欲しいなら私に任せてくれ」


 言って隊長は迷彩服の内ポケット『ジャケットポケットッ!』から裁縫セットを取り出した。


「ちょっと待って……」


「どうした。エリー君」


「何で裁縫セット持ってんの?」


「裁縫セットはサバイバルに必須だからだよ」


「・・・・・・そうなの?」


「そうとも」


 グリンベレー(自称)がいうならそうなのだろう、とエリーは納得した。


「聞きたいんだけど、そのジャケットの中には他に何が入っているの?」


 迷彩服を指さしてエリーは訊ねた。


「サバイバルに必要なものが入っている」


「全部出して見せてよ」


「それはできない」


「何でよ?」


「ピンチのときに出す方がカッコいいではないか」


 何考えてんだこのおっさん?


「そんなこと言っている場合?」


 変な間が開いて、隊長はみんなの顔を見まわした。

 そして、再びエリーに顔を向けて不敵な笑みを浮かべる。


「見せろよッ!」


 言って、エリーは隊長に突っかかった。

 迷彩服を剥ぎ取ろうとするエリーと、死守しようとするバカ隊長。


「イヤ―――――辞めて。お代官様……ひらに、ひらにご容赦をっ……」


「おっさんがそんなことやっても、色気ねえんだよッ。いいから脱いでッ! 見せろよッ!」


 カバー隊長の迷彩服を引っ張るが、グリンベレー(自称)の力は本物だった。重力が何十倍にもなった星にいるかのようにビクともしない……。


 いや、本当に重力が何十倍にもなっているかのように、迷彩服重くないか? 


「エリー君、気付いたようだな」


 サングラスの向こうに薄っすらと見える目は勝ち誇ったように、ドヤっている……。


「そう、この迷彩服は30㎏あるッ。ズボンは20㎏ッ、サングラスは10㎏ッ。合計60㎏の重りになっているのだッ」


「何だよッ、その〇ラゴンボール的な設定ッ! バカだろッ! あんた本当にバカだろッ」


 通りでビクともしないはずだ……。

 てか、そんな重り背負って、あの岩山登ったってえのか……。

 バケモンだろッ。


 だが、エリーは諦めないッ。

 おっさんの服を脱がそうとする美女。


「脱げよッ」


「おやめください、そんなごむたいな……」


「だから、おっさんがやったって色気ねえって言ってんだろッ! 気色悪いだけなんだよッ!」


 足の引っ張り合いならぬ、服の引っ張り合いをしているとき、「エリーっち、そうちゃうで、『よいではないか。よいではないか』やで」とモーリアンも服の引っ張り合いに加わった。


 左右に引っ張られる迷彩服。


「おやめください、お代官様ッ……」


 カバー隊長がいうと、「よいではないか、よいではないか」と服を引っ張るモーリアン。


 二対一でもカバー隊長から迷彩服を奪うことができなかった。

 力ずくで引っ張っても引きちぎれない迷彩服、恐るべし。

 

「はぁはぁはぁはぁ……」


 エリーの体力が先に尽きて、地面にへたり込み決着がついたのである。

 

「仕方がない。なら、一部を見せてやろう」


 平然とした表情でカバー隊長は言った。


「な、なら、こんな茶番する前に見せてよ……」


 怒る気力も失っているエリー。

 隊長が迷彩服の内ポケット『ジャケットポケットッ!』から取り出したものは、コンパスと時計、ナイフ数本、ライター数個、明るいライト、釣り針と釣り糸、サングラスケースなどなど。


 地面に並べられた、それらのサバイバルグッズを見て、「まあ、ちゃんとサバイバル用品を入れているのね」と感心して、しばらくそれらの道具を眺めていた。


「チョっ待てよッ!」


「何だねエリー君」


「こんな便利なもん持ってんだったらッ! もっと早く出せよッ! ライターあんなら、ゴリッチがわざわざ枝こすらんでも火種確保できたじゃねえかッ! 時計やコンパスあんなら、わざわざ太陽の登る方角確認せんでもわかったじゃねえかッ! ライトあんなら、暗いとき照らしてくれよッ 釣り針と釣り糸があるんなら、ゴリッチがわざわざ海に出てサメと闘うことなかったじゃねえかッ!」


 一息にまくし立てるエリー。

 モーリアンはとなりで拍手を送りながら感心している。


「ヒーローは遅れてやって来るというだろ」


「そんな状況かッ」


 一息にしゃべり過ぎて、エリーはクラっとその場に再びしゃがみ込んだ。

 

「大丈夫か、エリーっち」


 心配したモーリアンとカバー隊長はすかさずエリーの下に行く。


「大丈夫かエリー君。こんな空気の薄い場所で叫び散らすから」


「誰のせいだ誰のッ」


「悪ふざけが過ぎたようですまない、ボケたつもりはなかったんだ。確かにコンパスと時計があることは知らせておけばよかったが、そのほかのライターやライト類はいざというときに取っておかなければならないから、知らせてなかったんだ。今思えば知らせておくべきだったな」


「まあいいわ。確かにむやみやらにライターやライトは使えないもんね。まあ、それだけで納得できないこともあるけど、許したげる」


 三人が漫才をしているとき、龍之介は一人黙々とヘパイストス・ザ・クリエイターッ! を使って服を作っていた。


 同じス〇ンド使いでなければ、ス〇ンドは見えない。だから、龍之介がやっていることは両手に針と糸をもって、葉っぱを縫い合わせている地道な作業にしか見えなかった。


「よし、できたぞ」


 言って、龍之介はたった三十分ほどで一着の服を作り上げた。

 とても実用的で、両手を通すところがあり、首を通すところがある。服の裾は長く、ワンピースのように見えなくもなかった。色は濃い緑や薄い緑を基調としていて、文明社会にもありそうな服だと思う。


 見た目的には申し分はないが、問題は着心地と耐久力だ。

 もし裸で腕を通した状態で破れでもしたら大惨事になる……。


「着ても大丈夫なんでしょうね?」


「問題ないだろう。耐久力のある葉っぱだ」


 エリーは恐る恐る葉っぱを縫い合わせた服を受け取って、木陰で着替えてみた。チクチクして痛いのだろうか? と思っていたが葉っぱの表面はつるつるでひんやりとしていた。


 確かに寒さはしのげないが、服を洗っている間の着替えにはなる。

 袖を動かしてみたが、機動性はばっちりだ。肩の付け根あたりはきつく縫うのではなく、すき間を開けて縫っているから、肩が見えるようになっていた。


 ここまでは申し分ないが、問題は耐久力だ……。こればかりは確かめようがないので、しばらく着ているしかないだろう。


 エリーは恐る恐るみんなの前に出た。ランウェイを歩くかのように背筋を伸ばし、颯爽と駆け抜けピタリと立ち止まる。


 堂々としているが、とてつもなく恥ずかしい……。

 みんな一緒ならともかく、一人だけ変な格好をするのは本当に恥ずい……。


「どうかしら?」


「おお、エリーっちは何着ても似合うな」


「本当に~。よ~く似合ってる~」


 女子受けは上々、エリーはひとまず安心した。

 だが、気を引き締めて一応男たちにも訊ねる。


「どう?」


「申し分ないだろう。着心地はどうだ? サイズがわからなかったのでな、少し緩めに作った」


「大丈夫。余りきつすぎるより、ふあっとしている方が好きだから」


 それを聞いて龍之介は得心したように、「そうか」とうなずいた。


「まあ、似合ってんじゃねえの」


 小学生男子のように照れ臭そうに言ったのは潤弥。


「似合っているぞッ」


 ゴリッチ。


「美しい。自信を持って大丈夫だ」


 カバー隊長。

 みんなの前で服を披露するのは久しぶりの経験で、エリーも何だか楽しかった。まさか無人島に来てまで、モデルの真似事をするなど思ってもみなかった。


 満足して、自分が着ていたオープンショルダーと短パンに着替え直す。


「どうした? 着ないのか?」


「いや……。また、夜着るわ……」


 気に食わなかったわけではない。

 この奇抜な服を着て動き回るのが恥ずかしいのだ……。

 夜に服を洗い、しっかりと絞って陰干しするだけでも乾くだろう。


「それでは、その服を全員分用意しよう。我が服を用意している間に、洞窟を見てくるといい」


「うん。ここは龍之介君に任せて、私たちは仕事をはじめよう。食料を集めたり、洞窟の掃除をしなければ」


 湖のほとりに龍之介を残して、皆は洞窟に向かうことにした――。

     挿絵(By みてみん)

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