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無人島生活15話 「グフフフ、よいではないか」「そんなごむたいな……あれ――――」★

 (こう)三点が水浴びをしていたころ、むさくるしい男たちはと言えば――。


「おい、おまえらは腹が立たないのかッ。女たちは水遊びして、俺っち達だけ額に汗して洞窟探しなんてッ!」


 俳優よりホストやれ、でおなじみの潤弥は余程ご立腹な様子。


「潤弥の気持ちもわかる。僕も水浴びがしたいさ。もう少しの辛抱だよ。彼女たちが入ったら次は僕たちの番さ。もう少し辛抱しよう。仲間割れは一番駄目だよ」


 ゴリッチは潤弥をどうどうとなだめた。

 馬のように鼻息荒く、息を吐きだすホスト。


「チッ。わあったよ」


 湖から歩いて五分ほどで、ストーンヘンジのような巨岩が所かしこに散らかっている岩場に出た。この辺りは崖地帯で、拠点になりそうな洞窟が探せば結構見つかる場所だ。


「あの、洞窟なんてよさそうじゃないか」


 早くも潤弥は見つけたようだ。前方に見える崖の(ふもと)にぽっかりと口を開けた洞窟を指さした。四人は巨岩を縫いながら、洞窟に行き中をうかがう。


「そうだな、七人が暮らすには少し小さいな。だが、他の使い道がある。ここに集めた食料などを保存して置けるのではないだろうか」


 カバー隊長はプラネタリウムの星空を見上げるように、洞窟内を見回す。四人は二手に分かれて、左右から崖の麓を探索することにした。


 チーム編成はゴリッチと潤弥。

 カバー隊長と龍之介だった。


 カバー隊長チームの方は……。

 

「おお、あれはッ! 冥界の入り口ッ!」


「なにッ。本当かねッ」


 龍之介が言うと、隊長はキョロキョロとせわしなく首を回して見つけた。


「おおッ! あれは正に冥界の入り口ッ」


 ※ツッコミが不在。


 二人は冥界の入り口を覗き込んだ。

 それなりに深いようで、奥の方が暗くなっていた。


「ここは使えるぞ」


 一方ゴリッチ、潤弥チームは……。

 崖の麓を歩いているとき、落石に遭っていた。


「うおおおおおおおおっ!」


 ゴリッチの固有スキル、ゴリラゴリラゴリラと百獣の王、両スキルを使って危機一髪、落ちてきた米俵ほどの岩をゴリッチは受け止めて潤弥を救っていた。


 歯を食いしばり、地面にクレーターが生まれるほどの衝撃を受けてさえ、ゴリッチは耐えた。


「お、お、おお……」


 潤弥は地面に尻もちをつき腰を抜かしている。

 当然の反応だ。


「大丈夫だったかッ、潤弥」


 ゴリッチの口調が百獣の王の影響で少々荒っぽくなっている。


「だ、大丈夫……」


 ちびりそうになったのは、黙っておく……。


「そうか」


 潤弥は五分ほどその場から動けずにいた。

 ゴリッチは潤弥を負ぶって洞窟探しを再開する。

 しかし所かしこに落石がある。

 麓を歩くのは危険だ。

 崖沿いを進んでいくと、海に出た。


「こっち側には、洞窟はなかったな」


 ゴリッチの口調はいつもの、やさしい口調に戻っている。


「も、もう下してくれ……」


「あ、ごめん」


 潤弥をゆっくりと地面に下すゴリッチ。


「向こう側はどうだろう」


 潤弥とゴリッチは崖から距離をとり、元来た道を戻ることにした。








 男たちが洞窟を探していたころ、女子たちはと言うと……。


「服が欲しい……」


「ホンマやで」


「以下同文~」


 水浴びをしても海水や土砂、草で汚れた服を着るとせっかくのさっぱりした気分が台無しだった。


 着替えは飛行機の中に置き忘れてきたから何もない。

 これから生活していくにしても、同じ服ばかり着るわけにはいかない……。かといって着る服もない……。どうすればいいのだろう。


 まずはこの服を洗いたいが、もうじき男たちが返ってくるだろうから脱ぐわけにはいかなかった。


「こんなん着とったら、水浴びした意味ないで」


「本当にそうね」


「以下同文~」


 こういうとき、無人島生活を扱ったアニメや映画はどうしていたのだろう……。思い出せる限り、同じ服を着ていたような……。


 いや、同じ服を着ているだろ。

 変わってないよね。アニメキャラの服って? 映画なら大抵漂流するのは男なので裸でも大丈夫だが、女だとそう言うわけにもいかない。


 アニメや漫画ならともかく、生身の人間が同じ服で何年も生活できるわけもない。どうすればいい?


「誰か~服くれないかな~」


「本当にね。男たちは別に服いらないでしょ。はぎ取ってやればいいんじゃない」


「以下同文やで」


 そんなことを言い合っていたとき、「あったぞッ―――――!」と森の奥らか声が聞こえた。潤弥の声だ。樹間の間から続々と男たちが姿をあらわす。

 

「どうだったの? 見つかった?」


「ああ、手ごろな洞窟があったぞ」


 潤弥は何故か誇らしげに胸を張って答えた。

 そこにボケマシーンが割り込む。


「なあ」


「何だよ?」


「その服脱げや」


 突然の恫喝。

 ヤンキー以上に酷い。

 言われていることの意味がわからず潤弥は「・・・・・・」と一瞬固まった。


「は? な、何言ってんだよッ……」


「いいから脱げやッ」


 言ってモーリアンは潤弥に飛び掛かり、服をはぎ取ろうとした。

 脈絡のない展開に戸惑う潤弥。


「イヤ――――――――――やめて……乱暴はしないで……お代官様……」


 女のような悲鳴を上げて抵抗する潤弥。


「グフフフフフフ。よいではないか、よいではないかッ!」


 おっさんのような表情で服をはぎ取ろうとするモーリアン。


「お代官様。ひらに。ひらにご容赦をっ……」


 抵抗する潤弥。


「グフフフ、まあよいではないか」


「おやめください、そんなごむたいな……」


「ん? よいではないかと申すに」


「あれ――――――」


 何ちゅう茶番を見せられているんだ……と、エリーは呆れた。


「服脱げやッ!」


「やめて……乱暴しないでッ!」


 まだ続けるのか……見せられている側からしたら何を見せられているのか、理解に苦しむ。いや、常識的に考えて逆転してるだろ。


 ひと悶着終わって、何とか服を死守した潤弥は肩で息をしながら、「なっ、何なんだよッ。急にッ」と涙目になって怒っている。意外に可愛い――。


「いやな、水浴びしてさっぱりはしたんやけど、同じ服着てたらまた気分悪なるやん。だから、あんたらの服をうちらにちょうだいな」


「何でだよッ。嫌だねッ。何で服やらなきゃなんねえんだよッ」


「おまえの物はうちのもの、うちの物もうちの物やろ」


「何だよッ。その馬鹿なジ〇イアン理論ッ!」


「違うんか……。こんな汚れた服のままやったら、うち気持ち悪いんやわ……。駄目なんか……? 潤弥っち……?」


 モーリアンは上目遣いで、潤弥の顔を覗き込んだ。

 キラキラと濡れた瞳は男を篭絡(ろうらく)させる魔力がある。


「え……いや……駄目ってわけじゃないけどよ……」


 しどろもどろしながら後下がりする潤弥。


「じゃあ、服くれるんか……?」


「ま、まあな……やらねえこともねえけどよ……」


 モーリアンはエリーと紅の方に一瞬振り向き、悪い笑みを浮かべた。このボケマシーン意外と男の扱いに長けている……。エリーは何故か敗北感を抱いた。


「ちょっと、待て」


 そのときモーリアンと潤弥のすき間に割り込んだのは、中二病でおなじみの龍之介。モーリアンは小さく舌打ちをする。


「なんやねん? 邪魔せんといてえな。もう少しやったのに」


 もはやモーリアンの態度はカツアゲするヤンキーのそれだ。


「服なら我がヘパイストス・ザ・クリエイターが作ってやろう」


 変なポーズを決め背景にドドドドドドドドド、ズゥ―――――と擬音を具現化させ龍之介は言った。


「龍之介っち何いっとんや? ボケるのもたいがいにせえや」


 いや、ボケマシーンに言われても説得力がない、と思うエリー。


「服作るって、どう作るゆうんや? 糸も生地もないんやで」


「確かに、糸も生地もない。だが我のヘパイストス・ザ・クリエイターにかかれば不可能ではない。本当のことを言えば、動物の毛皮を集めるといいのだが、今はまだ不可能だ」


「ほんならどう作るゆうんや?」


「葉を使う。この島には色々な材質の葉っぱがある。その葉を所かしこにある蔦などで縫い合わせると、一時しのぎではあるが服にならないこともない。それは正に、イチジクの葉で腰を覆ったというアダムとエバのようにだッ!」


 最後の台詞は理解できなかったが、まあ龍之介の言おうとしていることはわかる。


「そんなこと本当にできるの?」


 半信半疑のエリーだったが、この中二病ならできるかもしれない、と思っている自分がいるから不思議だ。


「可能だ。寒さはしのげないがな。服を洗っている間の着替えにはなるだろう」


 かくして洞窟の話はどこへやら、まず先に服を作ることになったのであった――。

     挿絵(By みてみん)

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