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風来坊  作者: 蔵町ユキ子
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05

俺には幼なじみがいる。

昔から体が弱くて、ろくに学校に通えない奴だったけど、いつも笑みを絶やさない人だった。

どれだけ周りから同情されても、自分を可哀想な子供だとは思ってなかったよ。

自分が自分の事を可哀想だって思ってしまう方がよっぽど可哀想だっていつも言っていた。



「涼介、今日もお話してよ」



そんなあいつが一日のうち一番楽しみにしていたのは俺が学校であった出来事を話す時だった。

その時は俺も子供だったしおもしろ可笑しく話して聞かせることは出来なかったけどそれでもあいつは喜んでくれた。

すごく熱心に聞いてくれてた。


中学に上がっても病状は良くならなくて、逆に悪くなってたたらしい。

それでもあいつは弱音一つ吐かず、治療に専念してたよ。

相変わらず俺の話を楽しみにしてな。

中学生になってからは勉強も教えるようになったんだ。

いつ退院しても良いように、俺が教えたことは何でも学んでいった。


勉強を教えるとあいつが喜ぶから、俺も嬉しくなって勉学に励むようになった。

そしたら自然と成績も上がってったんだ。

話のネタにするために部活動にも入って、部活も懸命にやった。

すこしあいつといる時間が減ったけど、それでもあいつは俺の話と勉強を楽しみにしててくれたから頑張ろうと思えた。



「涼介無理してない?毎日病室にこなくてもいいんだよ?」

「無理なんてしてねえよ。それより毎日勉強しないと置いてかれるぞ?中学の勉強のスピードは速いんだからな!」

「はーい。でも無理はしないでね」

「はいはい」



正直俺じゃなくて自分の心配しろって話だよな。

もうその時既に結構危ないところまで来てたんだ。

でも、あいつが何も言わないから、泣きもしないから、俺は全然気付かなかった。


高校受験の時は一緒にパンフレット見ながら制服の話をしたんだ。



「セーラー!絶対セーラーでしょ学校と言ったら!」

「そうかあ?クラスの女子はこっちのブレザーの方が可愛いって言ってたぞ」

「絶対セーラー!私もし受験出来たらこの高校行きたい!」

「制服で学校決めんのかよ」

「残り少ない人生好きに生きたっていいじゃん!」

「……」

「あ…ご、ごめん」



その言葉に俺が不機嫌になっちゃってさ。

俺をフォローするのにあいつ必死だった。

俺も大人げないが、あいつもあいつだと思う。

フォローなんてしてないで、弱音吐けばよかったのに。

大泣きすればよかったのに。



「涼介これあげる!」

「何これ…」

「合格祈願のお守り!手作り!」



俺が受験する前にはお守りも作ってくれたんだ。

夜なべして作った!と自慢げに渡されたお守りは赤いビーズで出来た五角形のストラップ。

この発想はなかった。

結局あいつは高校受験できなくて、俺はこっそりその高校を受験した。

もしあいつの病状が良くなって、編入試験に受かったら同じ学校に通えると思ってな。

教師や親にはもっと上の学校行けるって言われたけど、別に上の学校に行くために勉強してたわけじゃないから、そんな言葉は無視してた。


高校に入っても必死に勉強した。

あいつに勉強教えられるように。


でも、俺は知らなかったんだ。

あいつの病状が悪化の一途を辿ってるとか。

余命が後半年とか。

何にも知らなかった。




「涼介ー」

「何?」

「私たちって風鈴じゃない?」

「は?」

「風香と涼介。風鈴の風と涼の文字。ね、風鈴でしょ?」



得意げに言ってみせるあいつに、正直この時は何言ってるんだこいつ、って思ったけどな。

二人で一つの風鈴って言われたのがすごく嬉しかった。



「風が吹かないと動かないけどな」

「ばーか」

「んだよ!」

「風がないなら手でならしなさいよ」



そう言って、あいつは短冊を揺らして風鈴の音を鳴らした。

また無邪気な顔で笑いながら、どや顔までしてた。

こいつはまだまだ前向きに人生を歩もうとしてるんだ。

またこいつのために頑張ろう、明日も明後日も、こいつのために。

ずっと頑張ろう。


そう思い直した矢先だよ。

あいつが、風香が、死んだって言われたのは。

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