過去のもう一人
「どうぞ……」
「お、おう」
俺は今、桃花の家に来ている。
本来なら桃花のお母さんがいるはずなのだが……
「私、買い物し忘れたものがあるから二時間は戻ってこれないからあとよろしくねーー!」
「え?ちょっとお母さん!?」
そう言って俺と桃花を置いて出かけてしまった。
部屋には二人っきり。
部屋には時計の音がはっきり聞こえる。
この空間はまずい。
俺の心臓は早鐘のごとくなり、鼓動を強める。
「も、桃花」
「は、はい!?」
二人で固まっていた俺はとんでもないことを聞く。
「好きな体位は何ですか?」
「は?」
し、しまったなんて言うことを!?
完全にそのことで頭いっぱいなのがばれ……
「わ、分かんない……です」
「え?」
まさか答えてくれると思っていなかった。
しかも、答えは分からないって?
「ど、どうしてなんだ?」
「だって気持ちよくなったのははじめだけで後はなかったし……」
「ど、どういうことだ?」
「えっと、はじめは光のこと忘れてたんだけど、その……徐々に思い出して来たら気持ちよくなくてただの作業になって……」
おう……
「じゃあ、試すか?」
「え!?」
「い、いや。間違えた!」
また俺はてんぱった挙句とんでもないことを。
「わ、忘れてくれ」
すると桃花は俺の服のすそを引っ張る。
「その、光がしたいなら…いいよ?」
「ぐっ!?」
なんて破壊力だ。
だが負けてはいけない。
俺は桃花の肩に手を置く。
「それはやらない」
「え?なんで?やっぱり初めてじゃないとだめだった?」
「えっと、それは確かに初めてがよかったけど、そうじゃなくて……」
俺は一息おいて告げる。
「大切だからこそ、しっかり順序を守っていきたい。流れでは嫌なんだ。ごめん」
俺はゆっくりできる限りはっきり彼女に伝える。
桃花は静かに首をふる。
「いいの。私もそれがいい」
そう言って彼女は頭を俺の肩に預けてくる。
「いいのか?」
「うん。大切にしたいから私も」
「ありがとう……」
俺は桃花の手を握る。
「なあ、桃花。アルバムでも見ないか?」
「うん。いいね!」
そうして二人は仲良くアルバムを見る。
そこには彼女たちの歩みがあった。
「ふふ、この写真、桃花がおねしょしたときのだな?」
「うー、はずかしいなあ」
照れる彼女は世界一可愛い!!
「これは飴玉落として泣いてるやつだな?」
「うー」
ついついからかいたくなる。
そんな可愛い生き物だ。
「そ、そんなこといったら、これは光が私を見失って泣いてるやつじゃない!」
「おお、懐かしいな」
この時は確か遊園地で……
「そういえばこの時、だれかいたような気がするな?」
「あーそういえばもう一人近くに住んでいた、男の子がいたね」
「そうだったような……」
「覚えてないのも無理ないよ。小さな時のことだしね」
それもそうか。
そうしてしばらくアルバムを見て楽しんでいた。
ピンポーン!
「誰か来たな」
「私出るよ」
「ああ、待ってる」
そうして玄関に行く桃花。
少しして桃花の声が聞こえた。
「え?い、嫌やめて!?」
桃花!?
俺は急いで玄関に向かう。
そこにはイケメンにキスされかけている桃花がいた。
「この野郎!」
俺はイケメンに殴り掛かる。
だが軽くあしらわれる。
「ふ、しょせん君は変わらないね?」
「な、何のことだ!?」
男は俺を拘束しながら答える。
「海斗だよ。忘れたかい?」
「海斗?」
「光、さっき話してた子だよ!」
「お前が……」
「思い出したようだね?」
「えっと、いや、ごめん……」
男は固まっており、桃花も目をそらしていた。
「そ、そんな二人とも僕を覚えてないのかい!?」
「えっとごめんね?」
「うん。すまん」
「そ、そんな……」
男は拘束を解き膝から崩れ落ちる。
「えっと、その。落ち込むなよ。飴いるか?」
「いる……」
男は飴をおとなしくなめていた。
それから十分後。
「俺は帰ってきた!約束を果たすためにね!」
「えっと、約束とは?」
「仕方ないから話してやろう」
なんでいちいち上からなんだ?
なんとなく腹が立ってくるな。
「僕と光君どちらが桃花にふさわしいか!」
「はあ」
「なんだその反応?」
「いいか桃花はな……」
俺はこれまでの経緯を話す。
「……」
男は怒っていた。
それは明確だった。
次の瞬間桃花に男はビンタした。
「このくそが!!」
「!?」
桃花は床に倒れる。
「おい!やりすぎだぞ!」
「何がだ!この女は言うに事欠いて光君を僕を裏切り適当な男と寝た最低な女だぞ!?」
「そ、それはそうだが、お前も桃花は好きだろ?なら……」
「ならなんだ?許せと?いや!許さない!」
男の怒りはとても強かった。
「ご、ごめんなさい……」
「ふん!」
さらにおなかに蹴りを入れる。
「うっ!?」
「桃花!?」
俺は駆け寄り桃花を抱きしめる。
「この野郎!何考えてるんだ!」
「君は許せるのかい!」
「許す!」
両者は平行線だった。
「分かった……なら覚悟するんだね」
男はそれだけ言って立ち去った。
翌日学校。
「ねえ、あれが噂の?」
「うん。ビッチの」
桃花の話は虚像も混ざり大きく醜く流布していた。
「な、なんで……」
「桃花……」
桃花はその日から地獄を見る。
きっとそれは忘れないものだった。
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