いずれ来る罰だった。
「あれやばくない?」
「ふふ、あれが噂の……」
学校に入るとさらに強く陰口が聞こえてくる。
「桃花大丈夫か?」
「……うん」
とても大丈夫な顔ではない。
顔面蒼白だった。
そうして教室に入る。
クラスは静まり桃花だけに視線が行く。
だが、それは一瞬ですぐに元の喧騒に戻る。
それに少し安心したのがいけなかった。
「みんなおはよう」
「……桃花……」
桃花の友達はみんな固まり言葉を発さない。
「み、みんな?」
「桃花、本当なの?西木君を裏切って堂本と付き合ってたって……」
彼女はためらいだがはっきり告げる。
「……本当だよ……」
クラス中が静まり返る。
「私、噂は嘘だって思ってた……最低だよ……」
それだけ言って桃花の前から友達たちは去っていく。
俺はすかさず桃花の近く。
「桃花、席に着こう……」
「……」
返事はない。
ただ力なく席に座る桃花。
担任がひどく苦い顔で教室に入ってくる。
「沢渡、放課後職員室に来なさい」
「……はい」
そこでみんな事実だと再度認識する。
そうしていじめは始まった。
放課後、靴箱の前で桃花は固まっていた。
「桃花どうした?」
「……何でもないわ」
そういう桃花の顔は今にも泣きそうで見ていられないほどだった。
桃花は手を後ろに回し何かを隠していた。
「なんだよそれ?」
「なんでもない!」
「いいから見せろ」
俺は叫ぶ桃花から強引に取る。
「桃花、これ……」
典型的ないじめだった。
桃花の靴には画びょうがびっしり入っていた。
そして紙が入っており中には「ビッチ、死ね」など安易な悪口が書かれていた。
「桃花、教師に言おう」
俺が教員室に行こうとすると桃花は俺の服の裾をもって止める。
「いいの……」
「何がいいんだよ!!これも海斗のせいだろ!?」
「かもしれない……けど」
桃花はつかむ手を強く握る。
「私がいけないから……」
「桃花……」
彼女はこれを罰だと思っている。
確かに彼女のしたことは許してはいけない。
だが、何の関係のない他人からここまでやられるいわれもないはずだ。
「やっぱり……」
「光、私受け止めるから……だからやめて?」
その顔は今にも泣きそうで必死に耐えているそんな様子だった。
俺はそんな顔させたくなくて止まる。
「分かった……」
「……ありがとう」
そうしてその日はおとなしく帰宅した。
だが、いじめはエスカレートしていきついに桃花は学校にこれなくなった。
陰から聞こえる。
「やっと来なくなったね?」
「うん。ざまあないね?」
何も知らないやつらが自分の怒りを解消するためだけに怒る。
そして、責める。
よくあることだ。
よくあることで、桃花が悪い。
そう、思えるはずもなかった。
俺は帰り際桃花の家に行った。
インターホンを押すと桃花のお母さんが出る。
「おばさん、俺です」
「光君……入って」
俺は家の中に入るとリビングには疲れ切ったおばさんがいた。
「おばさん……」
「いいの……これはいずれ桃花が受けないといけないことだから」
おばさんは分かっている。
桃花はそれ相応のことをしたと。
だが、そんな言葉で納得できるはずない。
娘が苦しむ姿を納得できるわけがないのだ。
「光君……私は仕方ないことだと思っているの」
「はい」
「でもね、それでも、私の娘なの……一番の被害者のあなただからこそ言うわ。絶対に桃花を助けないで」
それはきっと、おばさんなりの答えなのだろう。
自分の犯した罪に向き合ってほしい。
自分で這い上がって答えを見出してほしい。
そういうおばさんなりの願いなのだろう。
「……分かりました。ただちょっとだけいいですか?」
俺はあるものをおばさんに渡す。
「これを渡せばいいのね?」
「はい、彼女なら立ち上がれるって俺は知ってますから」
「分かったわ。ありがとう」
そうして俺は桃花の家を去った。
その様子を桃花は窓から見ていた。
「光……ごめん」
彼女は今も戦っていた己の罪と。
そして、彼への愛のはざまで。
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