30話 サクラさんはNo2
「サクラ!!」
「あらあら。良かったわぁ。生きていたのね、メイちゃん」
…何でしょう、いきなり。ギルドに入るなり、ソフィー様と神官様が声をかけてきました。何故こんな場所に居るのですかね?そして、またしても私は、命の心配をされています。今度は何なのでしょうかね。
「あれ?ソフィー?どうして居るの?あ!もしかして、ボクに会いに来てくれたの⁈」
「はあ?違うわよ」
ソフィー様は、カーラの言葉に嫌そうな反応を見せますが、私は騙されません。カーラに会えて喜んでいますよね。絶対に。もぅ、どうしてそんな態度をとってしまうのでしょうね。カーラには伝わりませんよ。
「…そうだよね。ボクはソフィーに会えて嬉しいけど、ソフィーは違うもんね」
「は? ……私だって嬉しいわよ」
おや?ソフィー様が少しデレています。ぼそぼそと小さな声だったので聞こえませんでしたが、カーラ以外には分かりますよ。
「あらあら。ソフィーちゃんとカーラちゃんが仲良くなって嬉しいわねぇ。でも、ゲイツちゃんを待たせてるから、取り敢えず行きましょうね」
そして私達は、訳が分からないまま、ギルドの奥に連れて行かれました。どうやら、ギルドマスターが待っている部屋に行かなければならないみたいです。
♢♢♢
机を挟んだ向かい側に、神官様とソフィー様とギルマス。そして私の右にはサクラさんとカーラ。サクラさんが真ん中に座る様にと言われたので、今日の主役はサクラさんみたいです。受付嬢を辞めた事か、称号の事かレベルの事か。いろいろありますものね。
「これを見なさい」
そして、ソフィー様が出した紙は、お馴染みのランキングです。わざわざこれを持って来たという事は、ランキング上位に変動があったという事ですかね。
さて、サクラさんは何位でしょうね。私は載っていないので、気楽に見る事が出来ますよ。
1 ユリアール・カーラ 366 『勇者』
2 サクラ 226 『大賢者』
3 サイレンツ・シルフィア 186 『神官』
4 ケルディ・サイコス 171 『大賢者』
5 シュレイダー 163
6 ソフィー 160 『大聖女』
7 イルケード 159
8 ミューリン 151
9 レズリア・ジャイアント 150
10 カドリア・ゲイツ 149
おぉ! 2位です!凄いですね。大賢者の先輩の、サイコス様を抜いてしまっていますよ。神官様も余裕で超えてしまいましたね。まぁ、昨日はサクラさんの独壇場で、私とカーラはやられまくりましたからね。最後の方はバフを解除しましたが、それでもいい勝負でしたし。
「あら、ギルマスは国王様を抜いているじゃないですか!おめでとうございます!」
「…あ、あぁ。…サクラに言われてもな」
もちろん、サクラさんは自分のレベルを把握していますし、ランキング上位のレベルも把握しています。このレベルですから、自分の順位は予想出来ていたでしょうし、驚きは無いようです。それよりも、ギルマスのレベルが上がった事に注目しているみたいです。
ギルマスは、私のせいで10位と11位を行ったり来たりしましたからね。サクラさんが入ってきて11位になるところでしたが、1人抜いて10位をキープしたみたいです。まぁ、本人は嬉しそうに見えませんけどね。
「…新しい『大賢者』が誕生したから、魔王が殺されたのかもしれないと思ったわ。…でも、生きてた」
そう言って、ソフィー様が私を見つめてきます。やっと理解出来ましたよ。私が死んだと思われた理由が。
どうやら私は、カーラとサクラさんに討伐されたかもしれないと思われたみたいです。あながち間違っていませんが、私は倒されたくらいで死ねませんからね。聖女の神聖魔法で自動回復してしまいますし。魔力が残っている限り、即死と寿命以外では死にません。カーラは寿命以外では死なないので、少し似ていますね。
そして、ソフィー様は続けて言います。
「そもそも、受付嬢を辞めた事すら知らなかったのに、いつの間にか冒険者になって大賢者って。それに、あり得ないレベル。きちんと説明しなさいよ!」
まぁ、サクラさんが受付嬢を辞めたのは、ほんの1週間前ですからね。知らなかったのも無理はありません。
なんだかソフィー様は、怒っているというより、少し悔しそうな顔をしています。ソフィー様が冒険者の時は、カーラと一緒だったのでサクラさんが担当受付嬢ですからね。 相談は疎か、教えられていなかった事が悔しかったのかもしれません。ソフィー様は、口は少々悪いですが、本心はお優しい方ですからね。
そして、それからサクラさんは話していきます。受付嬢を辞めた経緯、私との冒険で賢者になった事。それから大賢者になった事。とても1週間の内容とは思えない濃さで、皆さん驚きが隠せない様です。
まぁ、カーラだけは目を輝かせて聞いていますけどね。カーラに聞かれたら不味い事は伏せていますが、それでも異常な内容ですからね。
「…あらあら。メイちゃんの時も驚いたけど、それ以上だわ。サクラちゃんも魔王になったりしないわよね?」
「なれませんよ。メイちゃんには適いませんから」
おやおや。サクラさんは謙遜なされていますね。ご自身の実力を理解していない様です。私なんて、直ぐに抜かれてしまいますよ。魔王の座が欲しければ、直ぐにでも譲りますし。そういうのは、サクラさんの方が向いていそうですしね。
「…サクラ。ギルマスやらないか?」
「え?やりませんよ。せっかく受付嬢を辞めたんですから」
サクラさんは人気者ですね。ギルマスまでもが認めていますよ。ギルドでの知識もあり、このレベルですからね。冒険者を引退したら、ギルマスになってしまいそうです。まぁ、私が冒険者やっている間は、サクラさんはパーティーを抜けさせませんけどね。
「…そうか。そうだよな。俺も辞めたい…」
「ふふっ。ダメですよ。…あ!でも、私に勝てたらギルマス変わってあげますよ」
「…くそっ!勝てねぇよ!一昨日戦った時でさえ危うかったってのに、それより100レベル近く上がってんじゃないか!」
サクラさん…。これは少し、ギルマスが可哀そうです。
「まあまあ。ゲイツちゃんだって強いんだから」
「…神官様。…この中で、俺が一番弱いんですけどね」
…ヤバいです。かなり、ギルマスが可哀そうです。
単純な戦闘であれば、ギルマスは神官様やソフィー様にも勝てると思います。ですが、レベルだけで考えると、明らかに負けていますからね。ソフィー様でさえ、ギルマスより10レベルも上ですから。
「…あらあら。きっとゲイツちゃんなら、直ぐに追い越せるわ。さ、そろそろ帰りましょうか、ソフィーちゃん」
そして、神官様は席を立ち、部屋を出ていかれます。神官様でも、上手くフォロー出来ない事もあるみたいですね。まぁ、ギルマスですし大丈夫でしょう。レベルもしっかりと上げている様ですし、もっと強くなれるに違いありません。…サクラさんには追いつけないでしょうけどね。
「…カーラ、またね」
「うん!!またね、ソフィー!!」
おやおや。ソフィー様が可愛いです。年上の女性に、こんな事言うのは失礼かもしれませんが、可愛いです。もう、ずっとその感じでいてほしいですね。
そんなこんなで、空気が少し重いですが、話は無事に終わりました。そして私達も、ギルマスを残して部屋を出ていきます。
「サクラ、闘技場行こっか!」
「えぇ、良いわよ」
そして、この後は2人が戦うみたいです。昨日した約束を、早速実行するのですね。普通であればカーラが勝つと思いますが、どうなるのでしょうかね。




