28話 泣きそうです
カーラに聞きたかった、賢者になる方法は無事に聞け、これから私達は今後に関わる大事な事を決めなければなりません。
「カーラ、部屋割りを決めましょう」
サクラさんが加わり、4人になりましたからね。流石に、1つのベッドでは狭く感じます。
「え?なんで?ボクはメイともサクラとも一緒が良いよ。もちろんキャルシィも」
「カーラ、このベッドに4人で寝るのは狭いと思いませんか?」
結構大きいので、寝れなくはありませんが、カーラの寝相が少々悪い時もあるので、ゆとりがほしいですからね。
「大丈夫だよ。メイもキャルシィも小さいからね!」
「…え。…では、私達はベッドで寝るので、カーラは床で寝てください」
キャルシィはともかく、私まで小さいと言うのは失礼すぎますよ。カーラが少し大きいだけで、別に私が極端に小さい訳ではありませんからね。そんな事を言うカーラは、床で十分です。寧ろ、廊下でも良いですね。
「…メイ、ここボクの部屋なんだけど」
「そうですね。床で寝るのが嫌であれば、部屋を分けましょう」
流石に私も、本気で床で寝させようだなんて、少ししか思っていませんからね。
「でも、他に部屋無いよ?」
「え?」
私が住み始める時も言っていましたが、本当に無いのでしょうか?
「ルナールさんに聞いたら、隣の部屋を使える様にしてくれるって言ってたわよ」
「…だそうですよ、カーラ」
流石サクラさんです。そこまで見通していたのですね。こんなに広い屋敷なのですから、私は部屋が使い放題だと思っていましたよ。いくら貴族の家でも、使ってない部屋まで常に使える状態にはしておきませんもんね。時間もお金ももったいないですし。
「では、部屋割りを決めましょう。皆さん誰が良いか、せーので言いましょう」
そして私は、カーラがこれ以上うだうだ言う前に、話を無理やり進めます。
「せーの!」
「キャルシィ」
「メイちゃん」
「サクラさんです」
「メイ!」
おやおや。私に2票も入ってしまいましたね。少し嬉しいです。まぁ、カーラはカウントしないので、実質1票ですけどね。
私はカーラ以外ならどちらでも良いですが、今回はキャルシィを選びました。なぜなら、私がサクラさんと一緒になると、キャルシィがカーラと一緒になってしまうからです。それは絶対にダメですからね。
サクラさんには悪いですが、キャルシィと私は、お互いを選ぶので、カーラの相手をしてもらう事になります。ここまで完璧に考えている私、凄いです。
そしてキャルシィはもちろん私を………ん?そういえば、『メイお姉ちゃん』と聞こえなかった気がしますね。いやいや、そんな事…。あり得ませんよね?
「キャルシィ…。ど、どうして私では無いのですか⁈」
きっと、言い間違えたのでしょう。キャルシィが私を選ばない訳ありませんからね。そうですよね?
「ごめんなさい。サクラさんなら仕事の事とか聞けると思ったので。それに、カーラさんの相手が出来るのは、メイお姉ちゃんだけですから」
「そ、そんな…」
そんなにしっかりとした理由を言われたら、文句が言えません。
キャルシィは慣れない場所で、受付嬢としての仕事を始めたばかりです。だから、長年勤めていたサクラさんが頼りになるのは当たり前です。仕事熱心で偉いとしか言いようがありません。
「…では、サクラさんはどうして私なのですか?サクラさんが私と一緒になれば、キャルシィがカーラと一緒になってしまうのですよ?」
「寝る前と起きた後にメイちゃんの回復魔法掛けてもらいたいのよ。それに、カーラには常にデバフを掛けてれば大丈夫かなって」
回復魔法を掛ければ、お肌が少し綺麗になります。私は、それの為だけに選ばれたのですね。サクラさんはキャルシィを犠牲にしてでも、その特権を得たかったのですね。ですが…。
「回復魔法くらい、部屋が違っても掛けてあげますよ」
「あら。メイちゃんがそうしてくれるなら、それでも良いけど。そうなると私とキャルシィが同じ部屋になるわね」
「…え?」
…そういえば、キャルシィはサクラさんを選んでいましたね。お互いを選んでいるのであれば、そうなってしまいますね。何だか、私の完璧だと思っていた作戦が崩壊している気がします。
「じゃあ、メイはボクとだね!」
「ちょっと待ってください!」
考えるのです、私!このままでは、私がカーラと同じ部屋になります。別に嫌ではありませんが、より良い選択肢があるのに、カーラと同じ部屋になってしまうのは、ほんの少しだけ納得出来ません。
「…メイちゃん、カーラが泣きそうよ」
「え?」
あぁぁぁあ!!ダメです。これはダメです。私は、なんて酷い事を考えていたのでしょう。これでは、カーラを仲間外れにして虐めているのと変わりありません。人としてやってはいけない事です。
「ごめんなさい、カーラ。違うのですよ。そうです!この部屋にベッドをもう1つ用意して、みんな一緒に過ごしましょうよ!」
「…メイ。…うん、ボクもそれが良い。みんなと一緒に居たいよ」
そうですよ。カーラは最初から、みんな一緒が良いと言っていたではありませんか。私は、それが叶う方法を模索せず、一方的に決めようとしていました。私はなんて酷い人間なのでしょうか。
「サクラさんとキャルシィも良いですよね!」
「はぁ。もちろん良いわよ」
「はい」
サクラさんもキャルシィも文句を言わないのでありがたいです。いや、この状況では言えませんよね。ごめんなさい。
「ほら、カーラ。これからは4人一緒の部屋ですよ!」
「うん!嬉しいよ!」
ふぅ。一件落着なのかは分かりませんが、取り敢えずは大丈夫そうです。自分の意見を通す事も大事ですが、時には他人の意見をしっかりと聞く事も大切という事ですね。勉強になりました。女性を泣かせるなんて、そんな悪魔みたいな事してはいけませんものね。




