27話 おかえりなさい
「メイィィ!!ただいまぁ!!!」
ギルドに海聖龍が舞い降り、一通り騒がれた後、私達は家に帰って来ました。そして、玄関で待ち構えていたカーラに遭遇してしまいました。
明日の朝に帰って来ると思っていましたが、どうして居るのですかね。1人で帰って来てしまったのでしょうか?まぁ、カーラですからね。
「おかえりなさい、カーラ」
今帰って来たのは私達ですし、おかえりとただいまが逆な気もします。ですが、カーラが1週間ぶりに帰って来たという意味では、これで正しいのかもしれません。
「あれ?どうしてサクラが居るの? …まさか、ボクが居ない間にメイを奪う気だったの⁈」
一緒に居るサクラさんを見て、カーラは、よく分からない事を想像している様です。カーラの頭の中はどうなっているのでしょうね。不思議です。
「カーラ。実はですね、サクラさんも…」
「そうよ。もうメイちゃんは私のよ」
「え?サクラさん?」
どういうつもりでしょうか?私が言おうとした事を阻み、サクラさんはカーラの意味不明な発言に乗っかります。…これは、絶対に楽しんでいますね。顔を見れば分かりますよ。
「な…。そんな!酷いよ、メイ!ボクが居るのに!」
そして、サクラさんが冗談で言っている事にすら気付けない、素直なカーラ。
「カーラ、メイちゃんはカーラが嫌になっただけよ。だから、社交界に付いて行かずに私と遊んでたのよ」
「え…。違うよね?メイ…」
はぁ。何なのですかね、この茶番は。サクラさんは楽しそうで何よりですが、少しカーラを虐めすぎではないでしょうか。…いや、今までの事を考えれば、仕方ないのかもしれません。受付嬢という立場が無くなった今、サクラさんは自由ですからね。
ですが、これ以上は面倒な事になりそうなので、そろそろ本当の事を伝えましょう。サクラさんも満足した様な顔をしていますし、もう邪魔しないはずです。
「カーラ、サクラさんは私達のパーティーに加入しました。受付嬢を辞めて、冒険者になったのですよ」
「………え?…えええええぇぇぇぇぇ!!!」
そんなに驚く事ですか?…驚く事ですね。
私も最初は驚きましたが、カーラの驚き方は、それの比では無いと思います。まぁ、7年もの間、受付嬢としてのサクラさんを見てきた訳でしょうし、これくらい驚くのは無理も無いかもしれませんね。
「じゃ、じゃ、じゃ、じゃあ、ボクはサクラとも一緒に冒険出来るの⁈」
「そうよ。嫌かしら?」
「嫌な訳無いよ!凄く凄く嬉しいよ!!」
カーラの顔が少しだけ気持ち悪いですが、嬉しいと思っているのは伝わってきます。カーラの中で、サクラさんは一番の友人ですからね。無理も無いでしょう。
「ふふっ。改めてよろしくね、カーラ」
「うん!じゃあ、サクラの歓迎会をしよう!」
…あれ?私がカーラとパーティーを組んだ時は、歓迎会なんてしませんでしたよね?私とカーラは、ほぼ初対面だったからですかね?…きっとそうです。別に、悔しいとは思っていません。そんな事されなくても、ご飯は毎日美味しいですからね。
「歓迎会なら、もうしてもらったわ」
執事のルナールさんをはじめ、皆さんに歓迎されましたからね。…私とは違って。
「ボクはしてない!直ぐに準備してもらうね!」
そう言って、カーラは私達を置いて家に入っていきました。よっぽど嬉しいのでしょうね。どんな理由であれ、ご飯が豪華になるなら嬉しいですし、私も楽しみです。
♢♢♢
お風呂に入り、前回より更に豪華な歓迎会を終え、私達はカーラの部屋で寛いでいます。晩御飯はドラゴンのお肉が沢山使われていて、凄く豪華で美味しかったので、もうこのまま寝てしまいたい気分です。
ですが、私達は大事な話をしなくてはなりません。カーラに確認する事と、決めなくてはならない事がありますからね。
そして私は、早速カーラに質問します。
「カーラ、賢者の称号を得る方法をご存じですか?」
「うん、知ってるよ。メイは賢者にもなりたいの?」
カーラは、おかしな事を言ってきましたが、やはり知っている様です。私は賢者になりたいなんて、一切思っていませんけどね。
「違うわよ。私が賢者になってしまったの」
「…へ?どうして?」
…それを聞いているのですけどね。カーラは、もう私が聞いた事を忘れたのですかね?もしそうなら凄いです。
「私が聞きたいわよ。だから、聞いているの」
「賢者になる方法は知ってるけど、ボクが知ってる方法はサクラには当てはまらないよ?」
あぁ。だから、聞き返したのですね。カーラの事を、少しだけアホだと思ってしまいましたよ。ごめんなさい、カーラ。
「因みに、その方法は何なのですか?」
サクラさんに当てはまらないとはいえ、近い条件かもしれませんからね。一応聞いておきましょう。
「賢者になる方法は、100レベル以上で、聖女が恐怖するほどの強敵から聖女を守り抜く事だよ」
…ん?ばっちり当てはまっていますね。どうしてサクラさんに当てはまらないと思ったのでしょうか?
「メイちゃん、ドラゴンが怖いって言ってたわよね。…本心だったのね。そのレベルで」
「もちろんですよ。レベルは関係ありません」
怖いものは怖いですからね。私がいくら強くなろうとも、ドラゴンの大きさと怖さは変化しませんからね。
「え?どういう事?」
「カーラ、私の今のレベルは143よ」
そう言って、サクラさんはSSランクのギルドカードをカーラに見せます。
私の実家でサクラさんのレベルを聞いた時は96レベルでしたが、随分と上がりましたね。ドラゴンをいっぱい倒しましたし、クラーケンも倒したので妥当だとは思いますけど。
「………………え?…サクラがSSランク冒険者??」
「そうよ」
「ええぇぇぇぇぇえ!!!!!!どうして⁈ そんなに強かったなら、もっと早く教えてよ!」
カーラは目を輝かせて、そう言います。きっと、サクラさんも戦える相手だと認識されてしまったのでしょうね。今のサクラさんは、七聖龍に近い実力を持っているでしょうし、カーラならそう思っても仕方ありません。
「ふふっ、カーラを驚かせたかったのよ」
「驚いたよ!明日勝負しようね!」
やはり、カーラの考えている事は単純ですね。強い相手が居れば、戦いたい。それを一番に考えてしまうのでしょう。ですが、いくらサクラさんが強くなったとはいえ、サクラさんがそれを承諾するとは思えませんね。
「良いわよ」
「え…?」
「やった!楽しみだね!」
…あれ?良いのですか?殺されますよ?
…もしかしたら、私のバフとデバフを前提で承諾したのかもしれませんね。そうに違いありません。それなら、私が勝たせてあげますよ。サクラさんがカーラに殺されるのは、絶対に見たくありませんからね。




