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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第四章

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284.畑と薬とポーションと 5

 


 そのまま細々とした決め事を確認し、コンラッド様にはランカナ様宛に親書を持ち帰ってもらうことになった。そしてカティア将軍とネイトさんは暫くこちらに滞在してもらえる。カティア家の飛龍便をどこに配置するか、それをお父様たちと確認するためだ。


 現状、飛龍便はレイドール領のみ。

 次にお願いするなら、たぶんローズベルタ侯爵領。ローズベルタならそんなに導入も難しくないだろう、という判断だ。ローズベルタ領は将来的にプラスになることなら、きちんと説明すれば受け入れてもらえる。その説明はネイトさんが担当してくれるそうだ。


 カティア家から人が来るのかと思っていたけれど、どうやらカティア家以外の飛龍便を運営している商家にも声をかけたらしい。初めはカティア将軍が国同士の話として、飛龍便の運営を担当する。飛龍という、ファティシア王国では見慣れない生物の説明をするには商人ではなく国として話した方が良いだろうとのランカナ様の心遣いだ。


「そうだ。お父様、実はお祖父様に頼んで魔鳥を融通してもらおうと思っているの」

「魔鳥を?」

「ええ。魔鳥がいれば、神殿とのやり取りも手早く出来るでしょう?」

「それはそうだけど……レイドール伯爵が?」

「ロイ兄様がお願いすれば融通してくれるって」


 普段、あまり中央に関わることのないお祖父様(レイドール)が手を貸すのが珍しいのだろう。たしかに珍しくはあるけど、疫病は国難だもの。魔鳥の融通ぐらいはしてくれる。

 それに魔鳥を育てている領地はレイドール領ぐらいだし。レイドール領の隣にある森で捕まえているみたいなのよね。


 クアドもあの森の出身だとロビンが言っていた。魔物を退治することも大事だが、使えるものは使う。という方針らしい。魔物食もあるらしい。もしかしてそうかな? って名前の食べ物あったわね。屋台ではすでに処理されたあとだからわからなかったけど。


「それは……助かるな。魔鳥の調教はとても難しいんだ」

「そ、そうだったの!?」

「そうだよ。だからうちにいるのはクアドだけだろ?」

「そういえば……」


 魔鳥はあんなに利口なのに、王城で飼育されているのはクアド一羽だけ。討伐に行くときとか、視察に行くときとか連れて行ったら便利なのにと思っていたが……そんな理由があったとは思わなかった。


「ラステア国でも魔鳥は育ててるけど、そう数は多くないな。まあうちは飛龍がいるからだけど」

「魔鳥と飛龍だと飛龍の方が早そうだものね」

「そうだね。それに人が騎乗出来るのも強い。もしも飛行系の魔物に襲われてもある程度は処理が出来る」

「ラステア国だと魔鳥は襲われてしまうの?」

「可能性はあるね。もちろん飛行系の魔物がいない地域なら大丈夫だけど」


 ファティシア王国では飛行系の魔物はほとんど見かけないから、魔鳥を連絡係にしても問題ないだろう。国によって魔物の生態系も違うのはちょっと面白い。

 トラット帝国は魔物が出るのだろうか? あんまり聞いたことないかも?? 今度シュルツ卿に聞いてみよう。


「ひとまず、魔鳥をお借りできる……ということで話を進めても?」

「ええ。たぶん大丈夫だと思うわ。それで、その魔鳥用に小さなマジックボックスを用意したいの。あと血の契約? というのかしら……それを使えば、秘密裏に事が運べないかしら?」

「なるほど。だが神殿関係者に拘る必要はないかもしれないよ?」

「どうして? 薬を担当するのは神殿でしょう??」

「神殿にもフィルタード派はいるだろうからね。それなら領主に頼んだ方が良い場合もある」

「でも……他の神殿では神官が選ばれて、その領地では領主が選ばれたとなれば問題にならないかしら?」


 フィルタード派のやっかいなところは、どこにいるかわからないことだ。脅されて手を貸している可能性もあれば、自ら進んで手を貸している可能性もある。それを見分ける手立てはない。


 人の心の中なんてどうやったって見えないもの。こればかりは仕方がない。


「ポーション政策に積極的な領に対しては、領主を信じよう。そうでない領地は神殿に。一定の方向性があれば彼らも文句は言わないはずだ」

「たしかに、ポーション作りに積極的な領は自領のことをきちんと考えている。となりますね。それに領主がきちんと手を貸していることになる」

「フィルタード派の領地だと手伝ってないものね……」

「ただ……マジックボックスを用意するのは数がいるんじゃないかい?」

「大きな物を作るのは無理でも、魔鳥が運べるサイズなら私たちでも作り方がわかれば大丈夫だと思うの」

「ルティアたちが作るの?」

「そうよ。それぐらいしか役に立てないでしょう?」


 十分役に立っているよ、とお父様は言うけれど……魔力量が多く、それでいて手が空いてる人間が作る必要がある。街のマジックボックス職人たちは、普段の仕事で精一杯だろうし。そもそも数が必要なわけだしね! 私とライル、それにリーンやロイ兄様がいるから大丈夫だろう。


 そう考えていると、ポンポンと軽く膝を叩かれた。ニコニコとしたカティア将軍が自身を指さしている。


「ルティア姫、私も! 私も手伝えますよ!!」

「え! いいの!?」


 思わず声を上げて立ち上がると、コホン、とハウンド宰相様が咳をした。私は大人しく座り直し、ニコッとハウンド宰相様に笑みを向ける。淑女らしくなかったわ。ものすごく。

 でもカティア将軍の申し出はとてもありがたい。魔鳥をどれだけ借りられるかわからないけれど、領地の数だけマジックボックスを用意しておく必要があるからだ。


 しばらくカティア将軍が滞在してくれるのなら、これほど心強いことはない。そう思っていると、お父様が少し考え込む仕草を見せた。その姿に首を傾げていると、お父様は将軍に一つの提案をする。


「カティア将軍、もしよろしければ第四と第五騎士団に顔を出していただけますか?」

「もちろん。大丈夫ですよ」

「そして……コンラッド殿下、もし可能であれば何方かカティア将軍のように勘の働く将軍をもう一人方お借りしたい。男性であれば尚良いですね」

「男性限定ですか?」

「第一から第三騎士団は貴族家出身者が多いのです。女性の将軍では舐めてかかるでしょう。もちろん実力的にそちらの方がお強いのでしょうが……精神的ショックで自棄になられても困りますから」

「まあ、それは……無きにしも非ず、ですね」


 コンラッド様はチラリとカティア将軍を見る。当のカティア将軍はニヤリと笑みを浮かべるだけだ。たぶん、将軍にお願いしたらぶっちぶちに叩きのめされて、騎士たちが職を辞す可能性がある。貴族家出身といえども、騎士になるのが必ずしも武門家の者だけではない。


 カレッジで適性があれば、文官家でも騎士科へ進むことがあるからだ。もちろん女性の騎士も僅かながらいる。武門家出身の女性騎士が。だけど彼女たちが男性騎士を叩きのめすことは殆どないと思う。


 翻(ひるがえ)ってラステア国は老若男女、非常事態には皆戦士。という国だ。女性の将軍も騎士も多くいる。魔力量が多いから、身体強化も問題なくできるし。だから女性だと侮れば痛い目を見るのは我が国の騎士たちだろう。


 だからこそ、同じ将軍でも男性の方が良いのだろう。とはいえ、だ。ラステア国の将軍という時点で、叩きのめされるのは確実なのだけどね。カティア将軍も容赦ないだろうけど、男性の将軍はもっと容赦ないはず。同性だし、尚更徹底的にやるだろう。もしかしたら、お父様はそれも狙っているのかもしれない。


「ラステア国とファティシア王国。有事の際に足を引っ張ることのないように、交流を図る必要がある。そう以前から話はしていたのですよ。ですので、これはちょうど良い機会です」

「そうなの?」

「ええ。それに第一や第二に所属しているからと、他の所属騎士たちを下に見る発言をする者も少なくありません。ぜひとも、遠慮なく叩きのめしていただけると助かります」

「おや。それなら一小隊連れてこようかな」

「それはいいですね」


 ふふふふふ、と不気味な笑い声をハウンド宰相様があげる。どうやら腹に据えかねた、何かがあるようだ。それが解消されるのなら、まあ……いいのかな。

 第四と第五はたぶん、カティア将軍が相手でも気にしない。彼らは強者と対峙することで自分たちの腕が上がることを知っているから。


 普段相手にしてるの、魔物だものね。どんなに強い女性将軍だろうと、魔物に比べればずっとやりやすい。


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