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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第四章

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281.畑と薬とポーションと 2



 手紙に綴られた内容だけでなく、現状ファティシア王国としての対応を話し合う。

 フィルタード派閥の貴族たちが乗り込んできた件は、ロックウェル魔術師団長から話を聞いてはいるがだいぶ感情的だったしね。その辺も含めて現状を理解する必要があるからだ。


「……そういえばロイ兄様は、呼ばれなかったのですか?」

「ロイには別のお願いをしているからね」

「別のお願い?」

「そう。でも大丈夫だよ。あとでちゃんと共有するからね」


 お父様の言葉に頷くと、ハウンド宰相様が事の経緯を話しだす。

 フィルタード派閥の貴族たちの言い分とは――――


「謎の奇病が領地で流行っている、と。だからポーションが大量に欲しい。謎の奇病なのだから、ポーションを用意するのはこちら側がすべきだ。とのことでした」


 謎の奇病。まあ土地由来の疫病とロイ兄様が言っていたから、たしかにそうなのだろう。

 発熱や、発疹。そして一端治まったかのように見えて、また高熱が続く。死亡率も著しく高く、薬で対策しなければ生き残ることも難しい。


 元々、トラット帝国で疫病が流行っていることは知られていた。だからこそレナルド殿下は食料をファティシア王国から融通してもらっているのだ。病に大事なのは何よりも体力。

 その日の食事にも事欠く人々では生き残ることは出来ない。


 その食料を、レナルド殿下の兄姉たちは「施しは受けない」と突っぱね。皇帝は献上して当然とばかりに半分以上奪っている。たぶん奪われた物の一部は兄姉たちの領地にも多少渡っているのだろう。レナルド殿下からではなく、皇帝からの施しなら受けない理由はない。


 しかし食料は有限。徐々に近づく疫病の影に、皇帝の周りに侍(はべ)る貴族たちは焦ったはずだ。たとえ食料があっても、疫病に罹れば死ぬかもしれない。それは皇帝にも言えること。

 トラット帝国側が唆したのか、それとも聖なる乙女の予言を真実のものとするためか……どちらかはわからないけど利害が一致した。


 ポーションがないなら、疫病を流行らせ奪えばいい。


 ついでにラステア国でも疫病が流行れば、二国同時に国力を下げられる。ポーションが作れるとはいえ、ポーションとて有(・)限(・)だ(・)。ポーションが間に合わないほどに疫病が流行れば、国内は混乱する。しかもファティシア王国では国策として広めようとしているわけで……肝心なときに役に立たない薬、と噂でも流せばポーションを売る人たちは躊躇するかもしれない。


 ただポーションがある、ということは他の薬がないと同義なのだ。

 いまさら元の薬を作るにも、ポーション用の薬草ばかりでは意味がない。そもそも奇病とされる病に薬があるのか? ポーションはなんのために?? いろんな噂が駆け巡れば、ポーションの歴史が浅いファティシア王国内の混乱は必至。


 その隙に廃棄されようとしていたポーションをトラット帝国に横流しする。神殿の神官たちを拐かして薬草と共に連れて行くのもあるかも……? そんなことを考えてながら、ハウンド宰相様の進行で進んでいく話に耳を傾ける。


「まず、ファティシア王国で疫病を流行らせようとしたのは……ポーションが目的でしょう。ラステア国よりもファティシアの方が場所も近いですし、交易もある。海路で運べば、大量に迅速に運べます」

「その意見には我々も賛同します。ファティシア王国ではポーションの効能も広まってますからね。ポーションを用意できない王家を非難し、火種を燻らせるつもりでは?」

「そうですね。国策をちゃんとしていなかった領主よりも、助けてくれない王家に非難を向ける作戦でしょうから……下手をすると奪う方向に領民を誘導するでしょうね」

「……国策をしてないのに、王家を非難するのってなんだか狡くないかしら?」


 思わず呟くと、お父様は苦笑いを浮かべた。そして「国策は間に合わなかった」ということにすればいいんだという。


「間に合わないって……」

「魔力を大量に保有するのは貴族だけど、貴族はそんなに暇ではない。それが彼らの言い分だったからね。神殿に先に作るように促しておいてよかったよ。商業ギルドにも頼んではいたけれど……上に睨まれてまで積極的には、ね」

「他の領地ではきちんと作られている、そう数字で根拠を示せば良いのですよ。領主の仕事は多岐にわたりますが、他領の領主ができて特定の領地だけが出来ないのであれば職務怠慢です」


 ネイトさんはそういうと、ポーションの年間産出量と消費量。それらはもちろん取り纏めていますよね? とハウンド宰相様に確認した。これはラステア国とポーションを作るときにきめた取り決めの条項に入っている。


 産出量だけでなく、消費量も取り纏めているのは他国へどれだけ流れたのか確認するためだ。下級ポーションはラステア国同様、数本であれば国外に持ち出せる。それは冒険者などのどうしても必要な人たちのため。


「ええ、各領地の神殿が管理、報告してくれています。主に作るのは彼らですから。それと花師ギルドですね。産出量と消費量、繰り越しているもの。その辺もぬかりなく。これがその報告書です」

「それではその文句を言ってきている領地と似た領地を選び出して、統計を取りましょう。文句を言っている領地の神殿でも作られているのであれば、差は歴然でしょうから」

「貴族の義務を放棄しているのに口だけは達者な人たちって本当に困るわねぇ」


 ハウンド宰相様が差しだした報告書をカティア将軍がじーっと見ている。そして私にペンを貸してほしいと言ってきた。私はお父様にペンを貸してもらい、それを将軍に手渡す。すると将軍はいくつかの場所に印を付けだした。


「……どうして印を付けているの?」

「消費量のおかしいところに印を付けているのよ」

「消費量が、おかしい?」

「そう。この五年分でしょう? もちろん国策とはいえ、直ぐに取りかかれるものではないのは理解している。でも……この消費量は変。特にここ」


 そういって一点を指さしたのは、騎士団の消費量だった。


「変、かしら? 騎士団は魔物討伐に行くから……そのときに消費するのよ。それに訓練とかで怪我をしたときとか」

「その辺の報告がキチンとされてるのは、ここから三つ。だけどこの二つは別」

「別?」

「購入したものが綺麗に使われている」

「そりゃ、無駄には購入しないじゃない?」

「でも他の三つは、ちゃんと繰り越しが書かれている」


 カティア将軍の示す騎士団は第四と第五騎士団だ。ついこの間も、ランドリック団長がカーバニル先生にポーションの追加を頼んでいた。だけど数字に違和感がある。

 魔物討伐を専門とする、第四と第五騎士団。そこで消費されるポーションがこんなに少ないわけがない。魔物討伐は下手すれば一カ月もかかる場合がある。


 この間作ったポーションだけで、記載されているポーションの五分の一の量だ。年間で魔物討伐に行く回数を考えれば少ないといえるだろう。


「……この報告書、変だわ」

「でしょう?」

「違うの。第四と第五騎士団が討伐に向かうなら、ポーションの総量はこれじゃ足りない。だって定期的に魔物討伐に行っているのよ? 神官を伴わないなら、ポーション頼りになるし……それにこれに書かれている五分の一の量をこの間作ったわ」

「ここは魔物討伐専門の部隊なの?」

「ええ、そうです。第四と第五は魔物討伐の専門ですね。ポーションのおかげで離職率が下がったので、騎士の数を考えてもこれは少ないな……」


 ハウンド宰相様も私の指摘に同意してくれた。これだけじゃ、本当に必要最低限だ。魔物討伐なんて不測の事態が起こるもの。多めに持っていかないと、何かあったときに困る。

 逆に、繰り越しているという第一から第三のポーションの総量の方が多いのではなかろうか? 買い取る量が多いし、繰り越してはいるけれど……中級、上級のポーションは繰り越されていない。


 使用方法として、とてもおかしいのだ。第一から第三は王族の警護や城の警護、それに王都の警護も担っているけれど……中級や、上級を使うような大事件は早々起こらない。

 そんなことがあればお父様やハウンド宰相様の耳に入っている。だから使われるとしたら初級ポーションが中心になるはず。


 逆に魔物討伐中心の第四と第五は、魔物相手に戦う。腕を噛みちぎられたり、爪で引っかかれたり、ともかく大怪我を負いやすい。新人がいるなら尚更だ。だからこそ、中級や上級のポーションが必要となる。腕も生えちゃうわけだし。


「これは、調べた方がよろしいですねぇ。特定のポーションだけ繰り越されないというのはちょっと……」

「そうですね。数字だけに気をとられていました。申し訳ない」

「いいえぇ~それに、こういうの探すの得意なんです。……残りも見ても?」


 カティア将軍の言葉に、ハウンド宰相様はチラリとお父様を見る。お父様は小さく頷き、それを合図に将軍が報告書に印を付け始めた。


モブ姉王女、オーディオブック化します。

ご予約はこちらから

audible.co.jp/pd/B0H44YJPLN

配信日:2026年7月27日

朗読は声優の七海結理さんです。


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
なぁんか、きな臭いですね〜。いろんな部署でチリツモしてそうですね〜。
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