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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第四章

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280.畑と薬とポーションと 1



 ロイ兄様との話し合いは次回持ち越しとなった。ただ自分たちができること、誰かにお願いすること。その辺りはしっかりと話し合ったけどね。今までなら自分だけでも、って思っていたけれど疫病に関してはそんなこといっていられない。


 情報の共有と、やることリスト。


 それらをまとめて今後対策していくことになる。もう自分たちの出来る範囲だけ、というのは無理なのだから。手伝ってもらえる人にはどんどん手伝ってもらわなければ!


 そして自分の離宮に戻り、手持ちの衣装の中からイザベラ嬢に渡す衣服を選ぶ。その服をこっそりと届けてもらうように侍女長に頼んだ。侍女長なら抜かりなくやってくれるだろう。

 ついでに髪と瞳の色を変える魔法石は後日渡すとメッセージを添えて。


 好奇心旺盛、という部分は私も彼女と話して感じた部分だからきっと大丈夫だろう。ただ問題はアリシアと鉢合わせないように配慮しなければいけない。さすがに髪と目の色だけを変えたくらいじゃ気づくだろうし。


 それでも、と思う。


「アリシア……領地から戻ってきてくれないかなーでも行ったばかりで、直ぐ戻ってくるのも大変よね」

「そうですね。テスト休みに入って直ぐに戻られたのでしたら……丸二日はかかるでしょうし」

「飛龍で迎えに行けたらいいけど、さすがにそれをやったら怒られそう」

「そうですね。さすがに陛下から許可を頂かないと……」


 ラスールに乗って空を飛ぶのには許可がいる。なぜなら飛龍はファティシア王国では珍しいから。うっかり魔物と間違えられたら事だ。ファーマン侯爵領ならそこまで問題にはならなさそうだけど、問題はファーマン侯爵領と王都の間にあるフィルタード侯爵領。


 フィルタード侯爵は確実に騒ぐ。そして飛龍を操れるのなら、トラット帝国に挨拶に行かれては? とかなんとか言ってくるだろう。想像できるからこそ、ラスールでの移動は気をつけなければいけない。


「……いっそのこと、シャンテに頼んで迎えに行ってもらう? シャンテもだいぶ慣れたし。ラスールもシャンテなら問題なく乗せてくれると思うのよね」

「ですが……アリシア様がまだへっぴり腰ですから。二人乗りになれていないシャンテ様では少々難しいかと」


 リーナの言葉にそれもそうかと思い直す。二人乗りってコツがいる。たしかラステア国で試していたけど、命綱を付けても周りに補助をしてくれる飛龍隊の人たちがいた。

 私とリーナの二人でなら問題ないだろうけど、それでも命綱は必須。慣れない二人では危険だ。それにファーマン侯爵が難色を示すかも。


 一応、表向きはライルの婚約者だものね。アリシアは。

 もちろん婚約者の前に(仮)がつくのだけど。それでもデビュタントを終えている淑女、と考えると外聞はよくない。私の場合は今さらだから気にしないけどアリシアは違うもの。


「そしたら、お父様の許可をもらって迎えにいくとか……籠をつけて乗れば夫人を含めて三人乗れるわ」

「領地に戻っておられるのなら、やることがあるはずです。ルティア様のワガママで戻されては気の毒ですよ」

「うっ……やっぱりそうよね。うん。そんな気はしてた。でもファーマン侯爵領とやり取りできる魔鳥はほしいなぁ。そうすれば手紙のやり取りは頻繁に出来るもの」

「それぐらいでしたら……旦那様にお手配願いましょう」

「うん。お祖父様にお願いしてもらえると嬉しいわ」


 ユリアナが頷き、部屋から出て行く。侍女長に相談すればきっと良いように取り計らってくれる。私はふと思いつきで、小さなマジックボックスが作れないかなと呟いた。


「小さなマジックボックスですか?」

「そう。魔鳥たちに持たせられるサイズのマジックボックス」

「魔鳥たちに……? それはどうしてですか?」

「この間、キャスたちに教えてもらったんだけど……マジックボックスの中には血の契約を結んだ者しか開けられないようにできるものもあるんですって」

「他者からの盗難防止ですね」

「そう。魔鳥たちを連絡係にするなら、小さなマジックボックスを持たせてそこに薬を入れて先行する形で神殿に渡せないかなって」


 一番は神殿の関係者に罹患した人がいたときの対策。いくら聖属性の力が使えるとはいえ、自分が疫病に罹っては上手く力を発揮できない。そして神殿がいち早く機能を回復すれば、薬の評価もあがるしポーションをどのレベルの罹患者に飲ませるかの選別も出来る。


 疫病には段階があるのだから、その段階に応じた対応をすれば必要な薬の量もある程度目算がつくだろう。これはフィルタード派閥の貴族たちが文句をいったとしても、元々国策をしていなかった彼らが悪いのだから王城からの要求には従ってもらう。


 それに小さなマジックボックスなら、作るのにそこまで大量の魔力量は必要ない。魔鳥たちの分ぐらいなら私たちで作れると思う。たぶん。

 たぶんなのはまだ作ったことがないから。明日、カーバニル先生に相談しなければ。きっとロックウェル魔術師団長も来るだろうから、魔術師団長からお父様に奏上してもらえばいい。

 血の契約をするのに必要な魔石はたくさんある。これならロイ兄様やロビンも賛同してくれるだろう。一時的な対策に使うだけだし。



 ***



 翌日――――


 本当にコンラッド様が来た。しかも朝一で。


「朝一よ。朝一。ということは、向こうを夜には出てるわよね!?」


 王城からお父様の使いが来たので、私は急いで謁見に見あう服を見繕ってもらう。まさか朝一で来るとは思わなかったから、朝食も抜きだ。……テスト休みだったから、いつもより起きるのが遅いのもあったのだけどね。


 お父様が寄越した侍従について執務室に向かう。

 当然ならがお父様はすでに仕事を始めているわけで、私は侍従が近衛騎士に声をかけて扉を開けてもらうのを待った。


「?」


 呼び出した割には扉は開かない。軽く首を傾げると、侍従が「もう少々お待ちください」と苦笑いを浮かべながら伝えてくる。


「あ、いいのよ。大丈夫。先に何かお話があるのよね?」

「ええ。少し。姫殿下が来られるまでには……と仰ってましたが、少しだけ長引いていらっしゃるようです」

「そうよね。色々と話すことはあるはずだわ」


 私は小さく頷くと、扉の前で大人しく待つことにした。私が出した手紙には、その前日にロックウェル魔術団長がお父様に報告をあげていることも書かれている。その摺り合わせをしているのかもしれない。


 ラステア国にとっても寝耳に水だもの。疫病を流行らせようだなんて。

 あちらも一枚岩ではないと聞いているけれど、王家の土台が揺らぐようなことはそうないはず。後ろ盾がなくともウィズ殿下の番という立場ならサリュー様の立場も盤石だ。王子殿下も健やかに育っているようだし、あの二人ならきっと今後も子宝に恵まれるだろう。


 そんなことを熟々(つらつら)と考えていると、執務室の扉が開いた。私は背筋を伸ばし、執務室に足を踏み入れる。


「お呼びにより参上いたしました。何かご用でしょうか?」


 裾を摘まみ、スッとカーテシーをしてみせればお父様が「おはよう」と声をかけてきた。顔を上げれば、部屋の中にはお父様とハウンド宰相様。そしてコンラッド様とカティア将軍とネイトさんがいた。


 コンラッド様だけかと思っていたから、驚いて目を瞬かせる。


「コンラッド殿下がね、ルティアからの手紙を読んでお二人にも同行していただくように頼んだそうだよ」

「それは……その、ありがとうございます。カティア将軍にはお願いしたいことがありましたので、大変助かります」

「きっとそうなるだろうと思ってね。飛龍便をファティシア王国で使うなら、カティア家がレイドール領と取引をしているから」

「はい。薬に関しては急ぎますので、コンラッド様や飛龍隊の皆様にお願いできないかと思いましたが……きっと今後も必要になるのではないかと」


 私がそう言うと、お父様とハウンド宰相様も頷く。ロックウェル魔術師団長から事前に聞いて、飛龍便のこともすでに考えていたのだろう。私ならきっとこうする、と。


「我が家としても販路が広がるのは願ったり叶ったりです。それにこちらにお邪魔する理由も出来ますからね」

「いや、仕事優先ですよ?」

「それはまあ……ねぇ?」


 そういいながらカティア将軍が私にパチン、と片目を閉じて見せた。その茶目っ気たっぷりな仕草に思わず笑ってしまう。ネイトさんとも相変わらずのようだ。


「さて、それではルティアも来たことだし話し合いを始めようか」


 お父様の声を合図に、私は小さく頷いた。


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