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ポンコツ王太子のモブ姉王女らしいけど、悪役令嬢が可哀想なので助けようと思います〜王女ルートがない!?なら作ればいいのよ!〜【WEB版】  作者: 諏訪ぺこ
第四章

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237.風が吹く


 アリシアがイザベラ嬢と言い合いをした翌日。

 どことなくだけど、教室の空気が変わったような気がする。


 遠くからチラチラ様子を伺う視線から、ソワソワと伺う視線に。

 アリシアはちょっとだけ苦笑いを浮かべて「珍獣になった気分ですね」といった。


 珍獣……珍しい動物。たしかに珍しいのかも??

 腕組みをして考えていると、アリシアのお友達のカスティエラ・カナンは横を向いて吹き出していた。ファラは知り合いらしくて、ツンツンと肘で彼女を突っつく。


「ご、ごめんなさい……」

「いいのよ。気にしてないわ。それより、私ともお友達になってもらえる?」

「えっ……!?」

「え!? ダメなの??」


 私の問いかけにカスティエラ・カナンは「お姫様とおともだちぃ?」と変な声を上げた。

 そんなに変なことを言っただろうか? だってアリシアのお友達なら、私だってお友達になりたい。


「お姫様のお友達が、平民ばかりってどうなんです?」

「そんなの気にしないわよ? それに、私一つだけ野望があるの」

「野望?」

「王都をお友達と遊びに行くの!」

「えっと……それ、大丈夫なんですか?」

「……まあ、たぶん?」

「私じゃ責任負えないので、ちょっと……」


 荷が重い、といわれてしまう。でも一回、いや二回? 三回とか? ともかく一緒に出かけてみたいじゃない? 


 お父様から許可が出れば平気かしら? アレコレ考えてしまう。だけど私が真剣に悩み出したことでカスティエラ・カナンはちょっと顔色が悪くなり、左右に頭を振った。


「ダメ、ダメですよ!? 私、ホントに無理ですからね??」

「何も今すぐってわけじゃないのよ?」

「それでもですよ!!」

「さすがにお父様から許可はもらうし……」

「でも……行きたいのって、下町とかですよね?」

「それはもちろん!」


 しかし何でわかるのだろう? 私、特に何もいってないわよね?? そう思っていると、ファラが苦笑いを浮かべる。


「姫殿下は、普通では満足できなさそうですからね」

「そ、そんなことはないのよ?」

「普通で満足しておくべきですよ」

「でも気になるんだもの」


 カスティエラ・カナンにやめときましょう、と諭されてしまう。

 ファラは苦笑いを浮かべるだけだ。


 そりゃあね上位貴族御用達、といったお店は何度か行ったことがある。

 でも馬車で乗り付けて、馬車で帰るだけ。歩くのは馬車から入り口までとお店の中くらい。


 それってつまらないじゃない? もちろん警備面を考えれば、それが正しいことはわかる。だけど普通のお店を巡って、今どんなものが売っているのか? 値段はどのくらいなのか?


 昔、ベルやアリシアが教えてくれた物価をちゃんと見たいのだ。

 

 魔力過多の畑が人工的に作られるようになって、作物の流通量も増えた。そんな今だからこそ、自分がやったことの結果がどうなったのか? それを見てみたい。


「ほら、物価をね……見てみたいの」

「それって一回で済む話じゃないですよ?」

「そうよね……そこが問題なの」

「いーやーでーすー! 私はね、嫌って言える子なんですよ。商人なんで!!」

「商人なら尚更、私に見せておいた方がよくない!?」

「そ、いや……ダメです。私はリスク管理もできる子なんで」


 口をとがらせて不満を示すと、アリシアが「まあまあ」と私たちを取り成す。


「ルティア様、さすがに王都の下町を何度も出歩くには色々問題がありますよ」

「でも、でもね……知らないことを知ることは大事だわ」

「そこはやはり、陛下に提案をして許可取りをしてからでないと……護衛の配置も必要ですし」

「そうなのよね。そこが問題よね。護衛……護衛かぁ」


 王族の警護は基本的に近衛騎士。近衛騎士にはあまり良い思い出がない。

 離宮の警護はちゃんとしてくれているけど、だからといって普段離宮を警護している騎士たちに街での警護をお願いはできない。専門外だし。


 そして近衛騎士は良いところの子息子女が大半だ。カレッジに騎士科があり、そこに入学できた貴族家の子たちが付く職業ともいえる。

 良いところの子息子女に、警護とはいえ下町に行きたい私の護衛は難色を示されそう。


 そこでハッとなり、カスティエラ・カナンを見る。


「あのね、私は別に案内をしてもらいたいからお友達になりたいわけじゃないのよ?」

「あー……お友達がいないんですもんね?」

「そう! そうなのよ!! 普通にお話できるお友達がほしいの!!」

「それこそ貴族の子でも良くないですか?」

「忌憚なくおしゃべりできる子が良いの!」

「忌憚なく……?」

「そう。忌憚なく」


 おべっかを使われたいわけじゃない。学園は平等であるのだから、その平等の元に今しかできない交流を持ちたいのだ。


 そんな私を援護しようとアリシアが口を開く。


「あのね、キャスちゃん……ルティア様はおしゃれにまだ興味がないの」

「興味が、ない……??」

「ないの。お洋服も、まだ着れるから増やさなくて良いわよって方なの」

「え?」


 カッ! とカスティエラ・カナンの目が開く。まるで猫みたいだ。そんなことを考えていると、彼女が私の肩を掴んだ。


「おしゃれに、興味がない……?」

「そ、そうね。あまりないかも……?」

「年頃の女の子が!?」

「その、でもね……着られるなら、まだいいかなって思うじゃない?」

「それは庶民の考えですよ!? 何のために品位維持費があると!?」

「それね、ルティア様は毎月余るんですよ」

「あまる!?!?」


 まるでアレだ。猫がフレーメン反応したかのように、目をカッと見開き口をポカンとあけている。私、そんなに変なのだろうか……?


 たしかに年頃の女の子に比べればちょーっとズレてるかもしれないけど。

 でもちょっとよ。ちょっと。


「アリシア様。大問題ですよ。大問題」

「ね、問題でしょう?」

「どうりで制服もそのままなわけですよ。私たちですら、ちょっと手を加えているのに!!」

「制服って、そんなに手を加えるものじゃないでしょ!?」

「そこが個性ですよ! こ・せ・い!! やり過ぎなければ良いんです」


 な、なるほど? 力説されて、私はみんなから視線を外し他の子に目を向ける。

 確かに教室にいる大半の子が制服に手を加えていた。


 ブラウスの襟や袖、ボタン、リボンの結び方。スカートの裾からチラリと見えるレース。

 翻って自分を見ると、スタンダードな制服姿だ。


「私、てっきり姫殿下は模範となるべきと思われてそのままなのかと……」

「全然違います。単純に興味がなかっただけですね」


 ファラの言葉にアリシアがキッパリと答える。え、もしかしてアリシアもおしゃれしたかった? 私に合わせてくれていたの!? それなら悪いことをしてしまった。


 思わずアリシアを見ると、実は……といって制服の袖を見せてくれる。


「……綺麗なカフス? ボタン??」

「カフスです。気分によって変えられるかなって」

「たしかにこのぐらいなら……かわいい……」


 以前退学処分になってしまったフィルタード派の縦ロールの子は、すっごい改造していたから……あの印象が強いのよね。制服なのにフリルとレースが沢山の魔改造された制服だった。改造するにしても限度がある。


 でもこのくらいなら、控えめだし可愛いわ。日によって変えられるなら、気分も上がるだろう。

 私は周りでソワソワとしてる女の子たちみんなに聞こえるようにいった。


「ねえ、みんなはどんな風に制服を可愛くしているの? よかったら教えてもらえないかしら」


 一瞬の間の後、おしゃれ好きな女の子たちは一斉に話しだした。

 それはもう目が回るほどに。


 レースはどこ産のものを。ボタンを色違いに、袖に少しレースを足している。襟に足している。襟の角に刺繍を……などなど沢山の意見が聞けた。


「み、みんなおしゃれ好きなのね」

「むしろこの年頃で興味ないのは不味いですね」

「そうなの!?」

「そうですよ。お茶会とか夜会とか困るじゃないですか」

「そ、それは……さ、さそわれないからなぁ……」


 小さく呟くと、一人の子が小さく手を上げ「お誘いしてもよろしいのですか?」と聞いてくる。

 私は日程が合えば参加させていただくわ、と伝えた。


「放課後とかは全然大丈夫なの。学園がお休みのときは、色々あって……予定の確認がいるけど」

「承知いたしました! その、お声がけさせていただきたいです」

「ええ、よろしくね」


 今まで全然話すことのなかった子たちが、どんどん話かけてくる。

 私はにっこり笑って、カスティエラ・カナンの上着をツンツンと引っ張った。


「あのね、おしゃれは……あまりよくわからないの」

「それならうちにお任せください!」

「ええ、よろしくね!」


 商売人としての血が騒いだのか、彼女は――――キャスはグッと握りこぶしを作り、腕を振り上げる。



 私に新しいお友達が増えた瞬間だった。



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― 新着の感想 ―
平和で良いな。青春したまえよ。
姫様、よかったね。
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