盲信者
#日記:地球歴 残存記録 第195日
#場所:独立星系連合 主要拠点惑星 『エレーナ』ガデール共和国首都近郊航空基地
格納庫
「…マジで置いてきやがった。」
ルークはともかく、エドワードが俺の意見に歯向かうとは思わなかった。だが、よく考えてみれば当然なのか?彼からすれば、俺も奴隷部隊の指揮官も大して変わらないのか。無理やり奴隷として帝国に連れてこられた。
あいつの信念は生き残ること。生き残って、故郷に帰ること。不時着した機体からあいつを助け出したとき、胸元に入っていた家族写真。そこに軍人としてのプライドなんて微塵もない。泥臭かろうと生き残れば勝ち。
今になってみれば、彼奴等の言っていたことは間違ってない。俺は自分の思いのために姫様を囮に使おうとしていた。命令違反なんて言える立場じゃない。なら俺は、皇族侮辱罪…死罪に当たる大罪を犯した。
「もう…ルークのことを笑えないな。」
結局…俺に人を率いる能力はなかったってことだ。皆、俺よりもあいつの指揮下に入ったことがそれを表しているよな。
俺はブリーフィングルームへと戻った。
「ザビーダ大尉!航空軍の奴ら俺たちを置いて帰還しやがったんですか?」
「敵前逃亡だ!航空軍はなにしてんだ!?」
「彼奴等は悪くない。」
「何!?」
「だが、別に君たちが悪いわけでもない。考え方の違いだ。君たちはエルシャル大佐の直属の部下だった。だから恩ある上官の敵を討ちたかった。」
「あぁ…そうだよ。」
「だが、航空軍からすれば、この作戦に参加した時点で誰かが死ぬのは分かっていたこと。この作戦は姫様を無事に送り届けることが最大の肝。彼らはそこを重要視しただけ。彼らを一方的に悪者扱いするのは間違っている。」
「ここで奴らを待ち受けりゃよかっただろ!航空軍には"赤い彗星"だっていんだからよ!」
「なら、その間に姫様を奪われたらお前達はどうやって陛下と総司令閣下に謝罪するつもりだ?精鋭部隊だったからこそ、ここまでお連れできた。奪い返されたら、2度目はない。」
「そんなことにはならん!」
「まぁ…私でも君等を納得させることができないんだ。航空軍としての考え方の彼奴等が君達の思いを汲み取れなかったのはしょうがないと言えるかな。」
「別にいいさ。総司令閣下にお伝えすれば…」
「もし、バカ正直にお伝えしたら君達は全員揃って皇族侮辱罪及び命令違反により軍人としての階級を取り上げられて奴隷落ちだ。」
「なぜそうなる!俺達は大佐の!!」
「エルシャル大佐とシェリーナ皇女殿下はどちらが帝国で上位にあたる?」
「…何が言いたい。」
「簡単な話だ。下級貴族と皇族ではどちらが優先されるか答えてみろ。どちらが希少価値が高い?」
「人は価値じゃない!」
はぁ…エルシャル大佐はこいつらから盲信されてたんだろうな。だから、親を殺されたヤクザ者のような考え方になってしまっている。
「…もういい。お前らと話すのはつかれる。ただ、ひと言言っておくが、敵は間もなく軍勢を連れて到着するだろう。こちらの戦力は航空機は俺の機体のみ。お前達は歩兵のみ。」
「援軍が来れば…」
「慎重な総司令閣下のことだ。部隊を整えて、航空軍に休憩を与えて、皇帝陛下と協議をした後に軍を送ってくるだろう。」
「つ…つまり?」
「援軍が来るのは、早くても明朝ってことだ。そして敵さんは夕方〜深夜当たりには到着するだろう。援軍が来る頃にはここは落ちてるかもな。」




