エース候補
# 日記:地球歴 残存記録 第194日
# 場所:南部方面軍本部 航空軍専用区画 演習用シミュレーション機内
ザビーダ大尉の「始め!」の合図で、二人は一斉に離陸していった。彼らの会話は無線越しに聞こえてくる。
俺は離陸すると彼らのちょうど真下を飛行していく。できるだけ低高度で。
「軍曹はどこにいる!?見えたか…ゲイン?」
「見えないけど、気をつけろよ。軍曹はネームドだ。"赤い彗星"。あの人の強さは人間離れした軌道と速さ。少しでも隙を見せたら即座に食われる。」
「わかってる。編隊軌道を取るぞ!互いに見える距離を保ったまま、行くぞ!」
彼らの連携は確かだ。それなら、一言伝えてから始めよう。
「それでは…始めよう。」
「「はい!」」
俺は全速力で彼らの間を抜け、両機の背後を取り、ロックオンした。
「うっそだろ…」
「アレックス左に回避しろ!」
左に操作桿を傾けようとした瞬間、違和感が走った。これは罠だ。 そう思った俺は右に切った。 ゲイン一等兵の機体が右に曲がる。当たりだ。
「嘘だろ…どうしてこの戦術がわかるんだ…誰にも言ってないのに!」
「アレックス!俺が限界まで軍曹を引きつける…。お前が決めろ!行きますよ!エドワード二等軍曹!」
ゲインが加速する。自己犠牲精神は嫌いだが、相棒を信じて戦う姿はカッコいい。
乗ってやる。その勝負に。
「まずは君からかな。ゲイン一等兵!」
ゲインは機体限界の中でぶん回すような軌道を飛ぶ。マニュアル操作でない機体であそこまでやるのは感嘆するほどだ。それに特殊スキルもないのに、この動きができるとは。相棒を完全に信用していなきゃできない動きだ。羨ましいよ…君たちが。
だが、その動きは相当苦しいはず。そろそろ決めてやるのが優しさだろう。
そのためには、アレックスに狙いやすくしてしまうことになる。
そんなピンチの中で勝ち抜くこと。これが…エースとしての存在意義だと信じている。 イルメシアス一行に信頼されている。この信頼を無駄にはできない。
「ゲイン一等兵。素晴らしい動きだった。自己犠牲精神は直してほしいが、君は合格だよ。私が保証する。」
「…ありがとうございます。でも、軍曹は初めて負けます。アレックスによって。」
そういいながら彼の機体は爆発した。
俺はゲインの機体を爆散させた後、心の中で呟いた。
「弱きものを守るために…今後、多くの同胞達を守っていくために…使わせてください。この力を!」
すると、頭に声が響く。
『肉体強化、精神統一、兵器支配』
『これほど早く誰かを守る存在となるとは。これから君はより多くの命を救っていくだろう。彼らを守れる存在となれるよう…新たな力を与えよう。』
俺はその声に従い、新たな能力を口にした。
『未来視』
未来視が示す映像では、アレックスが俺の背後を取り、左から回り込んで撃墜する。
つまり…左に行くと見せかけて右から急旋回すれば、背後を取れる。
うっ…頭が痛い。この能力は負担が大きい。まぁ…当たり前か。
さて…魅せるとするかな。
「これで終わりだ!」
アレックスが背後を取り、俺が回避行動を取ろうとしたとき、彼は未来視通り左に銃撃した。
俺は右から急加速し、彼の背後を取った。
「…これでも撃ち取れないなんて…」
「ゲイン一等兵もそうだったが、アレックス一等兵もこれまで対戦した南部方面軍のパイロット達よりも実力がある。今後も精進するように。」
俺は彼の機体を爆散させ、シミュレーションは終了した。
ゲイン一等兵、アレックス一等兵。
ダブルトップ合格。
今日、彼らは確かに成長した。そして俺も…新たな力を手に入れた。この力が、いつか守るべきもののために役立つことを願っている。




