命の危機…
それからは、俺も早かった。
放置されていた牽引車で基地内の滑走路まで機体を運んだ。
コックピットとは、年月を感じさせないほどピカピカで匂いも一切しなかった。
臭いまま乗るのは、さすがに気が引けたので、軍人用のシャワールームを利用して身綺麗にした。
軍人の制服も奪ってやろうかと思ったが、死んだ後に発見された時に軍人が操縦していたということ、奴隷の一般人が操縦していたのとでは、驚き方が違う。
俺はこれも基地内に残されていた新しい奴隷服を着込むと戦闘機に乗り込んだ。
これで、俺の人生も終わる。
銃弾に撃たれて死ぬくらいなら、撃墜されて死ぬほうがいい。
こう見えても、航空自衛隊の戦闘機パイロットになる夢があった。視力が悪すぎて挑戦することなく、あきらめたけど。
俺はエンジンを点けようとしたが、ふと嫌な予感がして、倉庫を出た。
窓を覗くと、敵の大部隊がこちらの基地に向かって行進してくるのが見えた。
「やばい…」
このままだと、花火を上げることなく銃殺されて終わりだ。
俺はすぐに倉庫に戻り、機体にカバーをかけると、牽引車を元の位置に戻し、倉庫を施錠した。
そして、地下シェルターを使用したと思わせるように解錠し、少し開け放った。
そして、すでに電気がストップしたことで常温になっている冷凍庫に上官の死体を持っていき、左こめかみから発砲して、左手に銃を握らせた。
俺は、奴隷の独房に入り、隙間から鍵を閉めて、鍵を棚にしまった。
ここではキズを負った奴隷たちが最期を迎えた場所だ。彼らは火葬して部屋には居ないが。
俺はそこの一室で隠れながら、祈った。
誰も来ませんように…