第六話「水の国」
朝食を終えた四人は、再び森の中を進み始めた。
道中で現れるリーフウルフを相手に戦闘を重ねる。
「左!」
「任せて!」
ソラの声に合わせ、ヨルが前へ飛び出す。
ホシの「ルア・ノヴァ」がリーフウルフの注意を引き、その隙をヨルが剣で仕留める。
ソラも「ルア・ウィンド」で援護し、必要に応じて「ルア・ブースト」でヨルを強化する。
昨日までとは違う。
三人は互いの動きを見ながら、自然と連携を取れるようになっていた。
「皆さん、本当に上達が早いですね」
ニクスは微笑みながら見守る。
危険な場面では助言をする程度で、自ら戦うことはほとんどなくなっていた。
最後のリーフウルフを倒すと、ヨルは大きく息を吐く。
「これで終わりか」
ニクスは三人のもとへ歩み寄る。
「皆さん、お疲れ様です」
三人の体には、戦闘でできた細かな切り傷や擦り傷が残っていた。
「ルア・フローラ」
優しい緑色の光がヨル、ホシ、ソラを包み込む。
傷はみるみるうちに塞がり、疲労も少しだけ和らいでいく。
「これで大丈夫です」
「ありがとう」
ヨルが礼を言う。
「どういたしまして」
ニクスは微笑んだ。
「そういえば皆さん、冒険者カードは確認しましたか?」
「確認?」
ヨルが首を傾げる。
「冒険者カードに魔力を流すと、現在のステータスを見ることができますよ」
「そんな機能があったのか」
三人は揃って冒険者カードを取り出した。
魔力を流し込む。
すると、カードの表面に淡い光が浮かび上がる。
「おぉ……」
ヨルは思わず声を漏らした。
「レベルが20になってる!」
ソラが嬉しそうに声を上げる。
「……ほんと」
ホシも小さく頷いた。
「一日でここまで上がるなんて……」
ニクスは少し驚いたように三人を見る。
「皆さん、やはり成長が早いですね」
「レベル20か」
ヨルはカードをしまう。
「このままフォンティア王国を目指そう」
「おー!」
「……うん」
四人は再び歩き始めた。
森の中を進みながら、時折現れるリーフウルフを倒し、フォンティア王国への道を進んでいく。
「そういえば」
ヨルがニクスを見る。
「フォンティア王国ってどんな国なんだ?」
「フォンティア王国、ですか?」
ニクスは少し考え、言った。
「一番の特徴は、水ですね」
「水?」
「はい」
「王都全体が美しい水に囲まれていて、国中には透き通った水路が流れています」
「楽しみだね!」
ソラが目を輝かせる。
「それに、王都の中央には大きなお城があります」
「そのお城の下から大量の水が湧き出ていて、大きな滝となって王都全体へ流れているんです」
「お城の下から?」
ヨルが驚く。
「はい」
「その水のおかげで、フォンティア王国は豊かな国として知られています」
「なんかすごそう!」
ソラが笑う。
「王都は東西南北の四つの区画に分かれていて、お城へは一本の大きな橋が架かっています」
「晴れた日の夜は、星空が水面に映るんです」
「まるで星に囲まれているみたいで、とても綺麗なんですよ」
「……楽しみ」
ホシが小さく呟く。
「早く見てみたいな」
そんな話をしながら、四人はフォンティア王国を目指して歩き続けた。
――数時間後。
森を抜けた先で、ニクスが足を止める。
「見えてきました」
「!」
ヨル達が視線を上げる。
そこには、一面に広がる青い海。
そして、その海に囲まれた巨大な王国が姿を現した。
街中には透き通った水路が張り巡らされ、中央には巨大な滝を背にした王城が堂々とそびえ立っている。
「すご……」
ヨルは思わず言葉を失った。
「綺麗……!」
ソラが目を輝かせる。
「……すごい」
ホシも静かに見入っていた。
そんな三人の反応を見て、ニクスは嬉しそうに微笑む。
四人は南側の大門をくぐり、王都の中へ入っていく。
透き通る水路。
行き交う馬車や人々。
どこを見ても美しい景色が広がっていた。
しかし。
「……ん?」
ヨルはふと足を止める。
「どうした?」
ソラが振り返る。
「いや……」
ヨルは周囲を見回した。
「兵士、多くないか?」
その言葉にホシとソラも辺りへ視線を向ける。
確かに、鎧を身にまとった兵士達が街中を慌ただしく行き来していた。
住民達もどこか落ち着かない様子で、小声で何かを話している。
「確かに……」
ニクスも辺りを見回す。
「私も、こんなフォンティア王国を見るのは初めてです……」
四人は小さな違和感を抱きながら、王城へと向かうのだった。




