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夜と星空の異世界冒険譚  作者: 麻渚
第一章『フォレシア王国』編
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7/23

第五話『新たな旅立ち』

柔らかな朝日が、王城の窓から差し込んでいた。


「ん……」


ソラがゆっくりと目を開く。


「朝……?」


「おはよう」


既に起きていたホシが静かに声を掛ける。


「おはよ〜……」


ソラは眠そうに目を擦った。


その様子を見ていたヨルも小さく息を吐く。


「起きたなら準備するぞ」


「はーい」


「うん」


三人は支度を始める。


「……忘れてないよな」


ヨルが静かに口を開いた。


「うん」


ホシが頷く。


「元の世界へ帰る方法を探すこと」


ソラも真剣な表情になった。


「そのための旅だもんね」


異世界に来て今日で三日。


まだ分からないことだらけだ。


だが。


立ち止まっている訳にはいかない。


元の世界へ帰る方法を探す。


それが三兄妹だけの、本当の目的だった。


「行くか」


ヨルの言葉に、二人は頷いた。


「うん」


「おー!」


三人は朝食のため、食堂へ向かった。


――――――――


食堂へ入る。


そこには既に、ニクスとアルヴァンの姿があった。


「おはようございます」


ニクスが微笑む。


「おはよう」


「おはようございます」


「おはよ〜!」


「おはよう。ちゃんと眠れたみたいだな」


アルヴァンが穏やかに言った。


「はい」


ホシが頷く。


「昨日は色々ありましたから」


「確かに、昨日は色々あったな」


アルヴァンは小さく笑った。


その後。


皆で朝食を囲んだ。


他愛のない会話。


昨日の王都での出来事。


そんな穏やかな時間が流れていった。


そして。


食事が終わった頃。


ヨルはゆっくりと立ち上がる。


「話がある」


ニクスとアルヴァンが視線を向けた。


「俺達、旅に出ようと思う」


「……!」


ニクスの表情が揺れる。


「もう、出発されるのですか……?」


「はい」


ホシが頷いた。


「冒険者として色々な場所を見て回りたいんです」


「他の国にも行ってみたいし!」


ソラも続ける。


「そうか」


アルヴァンは静かに頷いた。


「寂しくなりますね……」


ニクスは少しだけ俯く。


「もっと皆さんと一緒にいたかったです」


「ニクス……」


ソラが困ったように笑った。


だが。


ニクスはすぐに顔を上げる。


「ですが」


「皆さんが決めたことなら、私は応援します」


「また会いに来てくださいね」


「ああ」


ヨルは頷いた。


「それで」


ホシがアルヴァンへ視線を向ける。


「次の国へ行くなら、どこがおすすめですか?」


「フォレシアから北東へ進めば、水の国がある」


「水の国……」


ソラが呟く。


「湖や川に恵まれた美しい国だ」


「でも、装備を揃えたばかりのお前達には少し厳しいかもしれないな」


「やっぱりか」


ヨルが苦笑する。


「まずはフォレシアの周辺で経験を積んでみるといい」


「初心者向けの魔物も多い」


「レベリングってことだね」


ホシが言った。


「ああ」


アルヴァンは頷く。


「焦る必要はないさ」


「しっかり力を付けてから向かえばいい」


「分かりました」


ヨルは頭を下げた。


「ありがとうございます」


「ふふっ」


ニクスが微笑む。


「皆さんなら、きっと大丈夫です」


――――――――


出発の準備を終え。


三人は城を後にした。


第三層を抜け。


第二層の住宅街を通り過ぎる。


第一層へ降りる。


ニクスを助けた広場。


フィーナの店。


リリーアのいる冒険者ギルド。


数日しか過ごしていないはずなのに、どこか懐かしく感じた。


やがて。


フォレシア王国の大きな門へ辿り着く。


「行くか」


ヨルは振り返る。


視界に映るのは。


三本の巨木。


中央の巨木の頂上には西洋中世風の王城。


王城の下からは巨大な滝が流れ落ち、王都全体を潤している。


「綺麗だね」


ホシが呟く。


「また帰って来ようね!」


ソラは笑った。


「ああ」


ヨルは小さく頷く。


そして。


三人は門の外へ足を踏み出した。


「――待ってください!」


「!」


聞き覚えのある声。


三人が振り返る。


「はぁ……はぁ……」


息を切らしながら駆け寄ってくる。


そこにいたのは。


「ニクス!?」


ソラが目を丸くした。


「どうしたんだ?」


ヨルが尋ねる。


ニクスは呼吸を整える。


そして。


真っ直ぐ三人を見つめた。


「私も行きます」


「「「……え?」」」


三兄妹の声が重なった。


「私も皆さんと旅がしたいです」


「外の世界をもっと知りたいんです」


ニクスは左手の指輪へ視線を落とした。


「それに……」


少しだけ照れたように笑う。


「皆さんのことも、もっと知りたいですから」


「いや、でも……」


ヨルは戸惑う。


「王女だろ?」


「大丈夫です」


ニクスは頷いた。


「ちゃんと許可はもらっています」


「え?」


その時。


ニクスの隣の空間が揺らいだ。


まるで水面に波紋が広がるように。


空中へ円形の魔法陣が浮かび上がる。


「えっ!?」


ソラが目を見開く。


次の瞬間。


魔法陣の中から、一人の人物がゆっくりと姿を現した。


「父様!?」


現れたのは、先程まで王城にいたはずのアルヴァンだった。


「娘を見送るなら、直接言っておきたくてな」


アルヴァンは穏やかに微笑む。


そして。


ニクスを見る。


「ニクス」


「はい」


「本気なんだな?」


「……はい」


ニクスは迷いなく頷いた。


「……分かった」


アルヴァンは優しく微笑んだ。


「気を付けて行ってこい」


「父様……」


「それと」


アルヴァンはヨル達へ視線を向ける。


「ニクスのこと、頼めるか?」


「……いいのか?」


ヨルが尋ねる。


「ああ」


アルヴァンは頷いた。


「ニクスも冒険者として色々な景色を見てくるのも悪くないと思う」


ニクスは嬉しそうに微笑んだ。


「よろしくお願いします」


「やったー!」


ソラが飛び跳ねる。


「また一緒に旅できる!」


「よろしくね、ニクスさん」


ホシも柔らかく微笑んだ。


「こちらこそです」


ヨルは少し困ったように頭を掻く。


「……まぁ、本人がそう言うなら」


「よろしくな」


「はい!」


ニクスの表情がぱっと明るくなった。


フォレシア王国を後にし。


元の世界へ帰る方法を探すため。


そして、水の国を目指すため。


ヨル達は、新たな一歩を踏み出すのだった。


フォレシア王国の門を抜ける。


背後には、三本の巨木に抱かれたエルフの国が広がっていた。


中央の巨木の上にそびえ立つ王城。


その下から流れ落ちる巨大な滝。


「……行くか」


「うん」


ホシが静かに頷く。


「次は水の国だね!」


ソラは嬉しそうに笑った。


「フォンティア王国ですね」


ニクスもヨル達の隣へ並ぶ。


「アルヴァン様のお話では、ここから数日ほど進んだ先にあるそうです」


「途中で野宿もしないとだな」


「レベリングもしないとね」


ソラは新しく買った装備を見下ろした。


「せっかく買ったんだから、早く使ってみたい!」


「張り切りすぎないようにね」


ホシが小さくため息を吐く。


「ソラはすぐ突っ込むから」


「えー! そんなことないよ!」


「昨日も屋台に突っ込んでた」


「それはパイが美味しそうだったから!」


「理由になってない」


「お兄ちゃん! ホシがいじめる!」


「いや、自業自得だろ」


ヨルが苦笑する。


「むぅ……。じゃあ次の魔物は私が最初に倒す!」


「前に出すぎるなよ」


「はーい!」


返事だけは良い。


そんなソラの様子に、ホシは呆れたように息を吐き、ニクスは小さく笑った。


「ふふっ」


「どうした?」


「いえ。こうして皆さんと一緒に旅ができるのが、少し嬉しくて」


そう言って、ニクスは前を向く。


ヨルもまた、視線を進む先へ向けた。


この旅の本当の目的。


――元の世界へ帰る方法を探すこと。


それはまだ、兄妹三人だけの秘密だった。


「まずはレベル上げだな」


「うん」


「頑張ろう!」


「はい」


四人は街道を歩き出す。


青く広がる空。


揺れる草原。


遠くには深い森が見える。


水の国、フォンティア王国を目指して。


こうして、ヨル達の新たな旅が始まる。


ーーーーー


しばらく森の中を歩いていると、


「……止まってください」


先頭を歩いていたニクスが足を止める。


「どうした?」


ヨルが問いかけた直後。


ガサッ。


茂みが揺れた。


次の瞬間。


「グルルル……」


三匹の狼が姿を現した。


緑色の毛並み。


背中には葉のような模様。


鋭い牙を剥き出しにしながら、低く唸っている。


「リーフウルフですね」


ニクスが静かに言う。


「フォレシア周辺の森によく現れる魔物です。単体ではそれほど強くありませんが、群れで行動するので油断は禁物ですよ」


「おっ……!」


ヨルの目が輝く。


「異世界のモンスター!」


そう言うや否や。


「よし、行くぞ!」


腰に下げていた剣を抜き放ち、真っ先に駆け出した。


「あっ、お兄ちゃん!?」


「危ないですよ!」


ニクスが慌てて声を上げる。


一方。


ソラがホシの方を見る。


「え、待ってホシ!魔法の呪文ってなんだっけ?」


「……」


「ホシ?」


「……分からない」


「えっ!?」


ソラは目を見開いた。


「私も分からない!」


すると。


「じゃあ――」


ソラは腰の短剣へ手を伸ばした。


「私も戦う!」


「お兄ちゃん、待ってー!」


勢いよくヨルの後を追いかける。


「ソラさん!?」


「うおおっ!」


「えーい!」


ヨルとソラは無我夢中で武器を振るう。


だが。


「グルッ!」


「うおっ!?」


「わっ!?」


リーフウルフは素早く飛び退き、二人の隙を狙う。


連携も何もない。


完全に個人戦だった。


その様子を見たニクスは、ホシへ視線を向ける。


「ホシさん?」


「……」


「もしかして、魔法の呪文が分からないんですか?」


コクリ。


ホシは小さく頷いた。


「初級光魔法なら、『ルア・ノヴァ』ですよ」


「……ルア・ノヴァ」


ホシの前に三つの光の星が現れる。


「……っ」


放たれた。


しかし。


ドォン!


全く別の方向へ飛んでいった。


「うわっ!」


「お兄ちゃん!」


ヨルとソラの方を見る。


二人とも雑な動きで、ただ必死に武器を振り回していた。


危なっかしい。


そう判断したニクスは、小さく息を吐く。


「ロア・ヴァイン」


その瞬間。


三匹のリーフウルフの足元の地面を突き破るように、太く頑丈な蔦が三本出現した。


薔薇のような鋭い棘を纏った蔦は、まるで意思を持つかのようにそれぞれのリーフウルフへ襲いかかる。


「ギャイン!?」


「ガルッ!?」


「グルルッ!?」


逃げようとしたリーフウルフ達だったが、蔦は瞬く間にそれぞれの身体へ絡みついた。


「ギャアアアッ!!」


薔薇の棘が深く食い込み、継続的にダメージを与える。


さらに、蔦はリーフウルフ達の生命力を吸収し始めた。


暴れていた三匹の動きは次第に鈍くなり――。


やがて。


完全に動かなくなった。


「終わりましたよ」


「……」


「……」


ヨルとソラは固まる。


ニクスはそんな二人へ歩み寄った。


「ルア・フローラ」


柔らかな緑色の光が二人を包み込む。


戦闘中についた細かな傷が癒えていった。


「さて」


ニクスは三人を見渡す。


「一度、反省会をしましょうか」


少し開けた安全な場所まで移動する。


ニクスは振り返ると、三人を見渡した。


「皆さん」


その声に、ヨル達は思わず背筋を伸ばす。


「さっきのあれは何ですか?」


「……」


「……」


「……」


「危ないですよ!」


ニクスはそう言う。


しかし、その表情に怒っている様子はない。


どちらかと言えば、呆れているような、困っているような顔だった。


「特にヨルさんとソラさんです。魔物を見た瞬間に飛び出して行くなんて……」


「ごめんなさい」


「ごめんなさい……」


ヨルとソラは素直に頭を下げた。


「……それに」


ニクスは少し首を傾げる。


「父――アルヴァンに会う前、どこか遠いところから来たと仰っていましたよね?」


「ああ」


「なので、てっきり冒険経験がある方々なのだと思っていたのですが……」


「いや」


ヨルは苦笑する。


「今まで一度も冒険したことありません」


「……そうなんですか?」


「うん」


ソラも頷く。


「魔物と戦ったのも初めて」


「……」


ホシも静かに頷いた。


「不思議な方々ですね」


「ですが、だからこそ説明が必要そうですね」


「良いですか。まず、魔物が現れても飛び出してはいけません」


「はい」


「ごめんなさい」


ヨルとソラは再び反省する。


「最初は少しだけ様子を見ます。相手の特徴や数を確認してから動きましょう。慣れてきたら、すぐに動いても構いません」


「なるほど……」


ヨルは真剣な表情で頷いた。


「それから、ホシさんとソラさんは魔法の呪文が分からないとのことでしたね」


「うん」


「……」


「この世界の魔法には、四つの階級があります」


「初級は『ルア』」


「中級は『レア』」


「上級は『ロア』」


「そして王級は『レクス・ロア』です」


「へぇ……」


「それぞれ、その後に魔法の名前を続けます」


ニクスはホシを見る。


「ホシさんの場合、初級光魔法を使いたいなら――」


「『ルア・ノヴァ』ですね」


「はい」


ホシは静かに頷いた。


続いてソラを見る。


「ソラさんは風属性なので、『ウィンド』です」


「ウィンド……!」


ソラの目が輝く。


そして。


「ヨルさんの闇魔法ですが……」


「ん?」


「闇属性はあまり見かけないんです」


「そうなのか」


「聞いた話では、かつて相手を食べるような技を使っていたと言われています」


「食べる……?」


ヨルは少し考える。


「グラトニーとかか……?」


「さぁ……そこまでは分かりません」


「今度試してみよう」


「危ないことはしないでくださいね?」


「善処する」


「それと言い忘れていました」


「ん?」


「この世界には、味方を強くする魔法も存在します」


「バフも存在するのか」


ヨルが呟く。


「なら、デバフもありそうだな……」


「強化魔法は、確か風魔法にあったはずです」


ニクスは少し考える。


「名前は……ブースト、だったと思います」


「ほんと!?」


ソラはぱっと笑顔になる。


「今度ヨルに使うね!」


「おい、俺で実験するな!」


「大丈夫だよ!」


「何がだ」


ヨルは思わずツッコミを入れた。


「次からは、連携を意識しながら戦ってみましょう」


「おう」


「うん!」


「……分かった」


三人はそれぞれ頷いた。


「では」


「改めて、レベリングを始めましょうか」


四人は再び先程の場所へと戻ってきた。


「……いましたね」


ニクスの視線の先。


茂みの奥から、再びリーフウルフが姿を現す。


「グルルル……」


「ガルル……!」


「グゥ……」


「グルッ……」


「四匹か」


ヨルが剣の柄に手を添える。


「今度は一匹多いですが……」


ニクスは三人を見渡した。


「行けるはずです」


「よし」


「頑張ろう!」


「……うん」


「私は見守っています。危険だと判断したら介入しますので、落ち着いて戦ってください」


「分かった」


ヨルは腰に下げていた剣を抜いた。


「ソラ!」


「任せて!」


ソラはヨルへ手を向ける。


「ルア・ブースト!」


柔らかな風がヨルの身体を包み込む。


「おぉ……!」


身体が軽い。


力が湧いてくる。


「これがブーストか……!」


「いっけー!」


「……ルア・ノヴァ」


ホシの前に三つの光の星が現れる。


放たれた光はリーフウルフへと飛んでいく。


しかし。


「グルッ!」


リーフウルフは素早く飛び退いた。


ドォン!


地面が爆ぜる。


「外した……」


だが。


突然放たれた光魔法に、リーフウルフ達の意識がそちらへ向く。


その瞬間。


ヨルとソラの存在が、リーフウルフ達の視界から外れた。


「今だ!」


ブーストで強化されたヨルが駆ける。


「はあぁぁっ!」


一閃。


一匹の首が宙を舞った。


「グルッ!?」


「ガルァッ!」


残る二匹が、ヨルの隙を狙い飛びかかる。


「まずっ……!」


咄嗟に、頭に浮かんだ言葉を口にする。


「ルア・グラトニー!」


黒い靄のようなものが二匹の身体へ絡みつく。


「グルッ!?」


「ギャイン!?」


ヨルは目を見開いた。


「食わないのか……!?」


予想とは違う。


しかし。


二匹の動きが明らかに鈍くなっていた。


「……HPを吸ってる?」


地面へと落ちた二匹は、体勢を立て直そうともがく。


「今!」


「うん!」


「……ルア・ノヴァ」


「ルア・ウィンド!」


光の星と風の刃。


二つの初級魔法が同時に放たれる。


ドォン!


シュッ!


「ギャアアッ!」


「ガルッ!」


二匹のリーフウルフは、そのまま動かなくなった。


「やった!」


「……」


ホシは小さく息を吐く。


しかし。


「グルルルッ!」


最後の一匹が、驚いて固まるヨルへ飛びかかった。


「えっ」


「ヨルさん!」


「ルア・ヴァイン」


地面から蔦が飛び出す。


リーフウルフの身体へ巻き付き、その動きを止めた。


「ガッ……!」


「ヨルさん」


ニクスが静かに言う。


「最後まで油断してはいけませんよ」


「……悪い」


ヨルは苦笑した。


拘束されたリーフウルフは、そのままニクスによって撃退された。


「終わりましたね」


「……」


ヨルはその場に座り込んだ。


「はぁぁぁ……」


安堵したように、お尻から崩れ落ちる。


「大丈夫ですか?」


ニクスが隣へしゃがみ込む。


「ルア・フローラ」


優しい緑色の光がヨルを包み込んだ。


「やや危なくはありましたけど……」


ニクスは微笑む。


「先程よりも、ずっと良かったですよ」


「……ほんとか?」


「はい」


「皆さん、ちゃんと連携できていました」


「へへっ」


ソラが嬉しそうに笑う。


「私たち、成長したね!」


「……少しだけ」


ホシも小さく頷いた。


その後。


ヨル達は倒したリーフウルフの解体作業を始めた。


最初に倒した三匹も含め、合計七匹。


「そういえば」


ヨルが尋ねる。


「なんで解体するんだ?」


「そのままにしてはいけないからです」


ニクスは答える。


「魔物の死骸を放置すると、別の魔物を呼び寄せることがあります」


「なるほど」


「それに、素材はギルドで売れますし……」


ニクスはリーフウルフを見る。


「お肉は今夜の夕飯になります」


「マジか」


「手伝うよ!」


「……私も」


こうして四人で作業を進めていった。


 

解体が終わった頃には、すっかり日が暮れていた。


「今日はこの辺りで野営にしましょう」


ニクスの提案に、三人も頷く。


少し安全な場所へ移動し、それぞれ準備を始めた。


ヨルはテントを組み立てる。


ソラは薪を集めるため、周囲を駆け回っていた。


そして。


「ホシさん」


「……?」


「火のつけ方を教えますね」


ニクスはポーチから、小指ほどの大きさの赤い石を取り出した。


「これは魔法石です」


「魔法石……」


「魔力を込めることで使えます」


「呪文は……?」


「必要ありません」


ニクスは魔法石へそっと魔力を流した。


すると。


ポッ。


小さな炎が灯る。


「すごい……」


「火起こし用の魔法石なんです」


「戦闘で使えるほどの火力はありませんが、野営ではとても便利ですよ」


「街でも購入できます」


ホシは興味深そうに魔法石を見つめた。


「……やってみる」


「はい」


ニクスは優しく頷いた。


「ニクス」


「はい?」


ヨルが解体したリーフウルフの肉を持ってやって来る。


「これどう料理するんだ?」


「……え?」


ニクスは目を瞬かせた。


「どう料理する、ですか?」


「そう」


「皆さん、料理はできないんですか?」


「できない」


ヨルは即答した。


すると。


薪を抱えて戻ってきたソラが会話へ加わる。


「私もできない!」


ソラは即答した。


「……やったことない」


ホシも小さく頷いた。


「……」


ニクスは三人を見渡した。


しばらくの沈黙。


そして。


「分かりました」


ニクスは小さく息を吐く。


「それでしたら、料理は私が担当します」


「おお!」


ヨルの顔が明るくなる。


「助かる!」


「やったー!」


ソラも嬉しそうに声を上げた。


「……ありがとう」


ホシも小さく頭を下げる。


「その代わり、お二人にも手伝ってもらいますよ?」


ニクスはソラとホシを見る。


「え?」


「……私達?」


「はい」


ニクスは頷いた。


「旅の間ずっと私一人では大変ですから」


「お手伝いしたーい!」


ソラが真っ先に声を上げる。


「……私もやる」


ホシも小さく頷いた。


「ありがとうございます」


ニクスは微笑む。


「では、まずは簡単なことから教えますね」


そう言うと、ニクスはヨルからリーフウルフの肉を受け取った。


その後。


ニクスに教わりながら、ソラとホシも料理を手伝う。


ヨルもできることを手伝いながら、四人で夕食を囲んだ。


食事を終えると、皆で後片付けを済ませ、焚き火を囲みながら少しだけ話をする。


気付けば、すっかり夜も更けていた。


「今日はもう休みましょうか」


ニクスの言葉に、皆頷く。


ソラ、ホシ、ニクスの三人は同じテントへ。


ヨルは一人、自分のテントへ入る。


こうして、四人で迎える最初の夜は静かに更けていくのだった。

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