第十六話「学校案内」
生徒会長に案内され、ヨル達は学校の廊下を歩いていた。
校舎は木材を多く使った造りになっており、どこか懐かしさを感じさせる雰囲気がある。
教室が並ぶ廊下や大きな窓、木製の床や扉。
見慣れたような造りではあるものの、ここは異世界の学校。
ヨル達にとっては、どこか不思議な感覚だった。
「改めまして、自己紹介をしておきますね」
生徒会長が歩きながら振り返る。
「私はトニア。この学校の生徒会長を務めています」
「3年生で、雷魔法を得意としています」
「よろしくお願いします」
トニアが軽く頭を下げる。
「よろしくお願いします」
ヨルも頭を下げた。
「俺はヨルです」
「それで、こっちがホシ、ソラ、ニクス、ヘリアです」
ヨルに紹介された四人も、それぞれ軽く頭を下げる。
「よろしくお願いします」
「よろしくね!」
「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「ところで」
トニアがヨルへ視線を向ける。
「ヨルさん達は、どうしてこの学校へ来ようと思ったのですか?」
「学校に興味があったからかな」
ヨルは素直に答えた。
「魔法や剣術を学べる学校と聞いたので、どんなところなのか見てみたかったんです」
「そうでしたか」
「気に入っていただけましたら、入学もぜひ検討してください」
「この学校では、魔法や剣術だけでなく、冒険者や騎士として必要な知識も学べますから」
「入学か……」
ヨルは少しだけ考える。
そんな話をしているうちに、最初の教室へと辿り着いた。
「こちらは1年生の教室です」
教室の扉は開いており、ヨル達は廊下から中を覗き込む。
何人もの生徒達が席に座り、教師の話を聞いている。
「1年生では、まず基礎から学びます」
「魔法なら魔力の扱い方や属性魔法の基礎、それから魔法には初級・中級・上級・王級という階級があることなども学びます」
「なるほど」
ヨルは頷く。
「それはニクスから教えてもらったな」
「はい」
ニクスも頷く。
「私達が最初に魔法を使った時にも説明しましたね」
「1年生では、実戦の授業もあります」
トニアが続ける。
「その中では、一通り様々な属性魔法を使ってみて、自分が最も得意とする属性を見つけていきます」
「あー、それなら私達もギルドで鑑定してもらったよねー」
ソラが思い出したように言う。
「そうだったな」
ヨルも頷く。
トニアは頷きながら説明する。
「冒険者ギルドで登録する際には、鑑定を受けることになります」
「学校で自分の得意属性が判明していたとしても、冒険者ギルドへ登録する時には改めて鑑定を受けるんです」
「なるほど」
ヨルは納得したように頷いた。
「2年生になると、自分の得意属性をさらに伸ばすための応用や、中級魔法などを中心に学ぶようになります」
「そして3年生では、選択科目になります」
「選択科目?」
ヨルが尋ねる。
「はい」
「剣術を伸ばすのか、魔法を伸ばすのか」
「自分の得意な方を選択して、より専門的に学んでいきます」
「中には魔法と剣術、両方を得意とする生徒もいます」
「そういう生徒は、両方の科目を選択することもできます」
「へぇ……」
ヨルは感心したように頷く。
「ただ、両方を高いレベルで扱える生徒は、あまり多くありません」
「それだけ難しいということです」
トニアが静かに説明する。
「ちなみに、3年生の選択科目では単位を落としてしまうと、卒業できません」
「その場合は留年になります」
「……」
ヨルは少しだけ黙った。
(マジで日本の学校みたいだな……)
思わずそんなことを考えてしまう。
「では、次へ行きましょう」
トニアが歩き始める。
ヨル達もその後を追った。
――――――――
2年生、3年生の教室もいくつか通り過ぎた。
それぞれの教室では、生徒達が授業を受けている。
トニアは、学年が上がるにつれて授業内容が専門的になっていくことを簡単に説明した。
そして。
「こちらが食堂です」
大きな扉の先には、広々とした食堂があった。
テーブルと椅子が並び、多くの生徒が食事を取れるようになっている。
「食堂では曜日ごとにメニューが違います」
「定食や麺類、中華料理、和食など、様々な料理が用意されています」
「和食もあるんだ」
ヨルが思わず反応する。
「はい」
トニアが頷く。
ヨルは食堂を見渡した。
(……全部知ってる料理だな)
定食も。
麺類も。
中華料理も。
和食も。
どれもヨルが知っている料理だった。
(この世界にも、こういう料理が普通にあるんだな……)
少し不思議に思いながらも、ヨル達は食堂を後にした。
――――――――
次に案内されたのは、保健室だった。
扉の上には室名札があり、そこには大きく「保健室」と書かれている。
「ここは、魔法や剣術の実戦などで大きな怪我をした場合に治療を受ける場所です」
「学校にある医療施設のようなものですね」
トニアが説明する。
「ただ、『保健室』という名前については、私達も詳しく知りません」
「この名前を付けたのは校長先生です」
「校長が……?」
ヨルは室名札へ視線を向ける。
「はい」
「どうしてこの名前にしたのかは、私も聞いていません」
ヨルは少しだけ考える。
(保健室……)
またしても、元の世界を思い出させる言葉だった。
だが。
(……考えすぎか)
ヨルはそれ以上考えるのをやめた。
「では、最後にこちらを見ていただきましょう」
トニアが廊下の先へ進んでいく。
やがて。
大きな扉の前へ辿り着いた。
扉を開く。
その先には、広大な決闘場が広がっていた。
中央には広い戦闘スペースがあり、その周囲には観客席が設けられている。
「ここが決闘場です」
トニアが説明する。
「魔法や剣術の実戦授業、模擬戦などに使われています」
「すごい……」
ソラが目を輝かせる。
「ちなみに、ここでは実戦で壁や床などが破壊されても、自然に修復される魔法が使われています」
「えっ、すご!」
ソラが驚く。
「それなら思いっきり戦えるね!」
「はい」
トニアが頷く。
その時。
決闘場の奥から、水の弾丸が勢いよく飛んだ。
バシュッ!
水の弾丸が標的へ命中する。
続けて、別の場所では炎が上がり、剣と剣が激しくぶつかり合う音が響いた。
「授業中なんですか?」
ヨルが尋ねる。
「はい」
トニアが頷く。
「現在は2年生の実戦授業を行っています」
「少し見学していきましょうか」
「いいの?」
ソラが嬉しそうに尋ねる。
「もちろんです」
トニアに促され、ヨル達は決闘場の端へ移動する。
そこでは、何人もの2年生が実戦形式の授業を行っていた。
魔法を放つ者。
剣を構える者。
互いに距離を取りながら、相手の動きを見極める者。
その中に。
小柄な少女が一人いた。
青い髪を二つに結び、大きめのフードを被っている。
手には杖を持ち、目の前の相手をじっと見つめていた。
「……あの子は?」
ヨルが尋ねる。
「あの子はミィナです」
トニアが答える。
「2年生で、生徒会の書記を務めています」
「生徒会のメンバーなんだ」
ヨルは少し驚いたように少女を見る。
小柄な身体で杖を構え、静かに魔力を集中させている。
真剣な表情だった。
「……召喚します」
小さな声が決闘場に響く。
次の瞬間。
ミィナの足元に、水色の魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣から大量の水が噴き上がる。
その水の中から、一匹の小さなイルカのような精霊が姿を現した。
「わぁ……!」
ソラが目を輝かせる。
ヨル達は驚きながら、その戦いを見つめる。
こうしてヨル達は、決闘場で行われているミィナの実戦授業を見学することになった。




