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夜と星空の異世界冒険譚  作者: 麻渚
第二章『フォンティア王国』編
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第九話「激闘」

「ソラ!」


地下空間へヨルの声が響く。


「全員にブーストだ!」


「えっ……!」


突然の指示にソラは一瞬戸惑う。


その隣で、ニクスがすぐに声を掛けた。


「ソラさん! ロア・ブーストです!」


「ロア・ブーストなら、この場にいる全員を強化できます!」


「……分かった!」


ソラは右手に持ったステッキを胸の前へ構える。


肩までの髪がふわりと揺れる。


風の魔力がソラの周囲へ集まり始めた。


「――ロア・ブースト!」


優しい緑色の風が地下空間を吹き抜ける。


四人を包み込んだ風は身体へ溶け込むように消え、それと同時に身体が軽くなる感覚が走った。


ヨルは剣を握り直す。


(動ける。)


身体が軽い。


力も自然と湧き上がってくる。


「行くぞ!」


ヨルだけが地面を蹴り、一気に男達へ向かって駆け出した。


その背中を見送りながら、ニクスは左手にはめた緑色の魔法石の指輪へ魔力を流し込む。


魔法石が淡く輝いた。


「――ロア・ヴァイン。」


足元へ緑色の魔法陣が広がる。


ゴゴゴゴ……


地下が小さく揺れた。


「なんだ……?」


男達が足元を見る。


次の瞬間。


バキィッ!!


木の床を突き破るように三本の巨大な蔦が勢いよく飛び出した。


薔薇のような鋭い棘を纏った蔦は、生き物のようにうねりながら男達へ襲い掛かる。


「うわっ!」


一本目の蔦が男の身体へ巻き付き、そのまま強く締め上げた。


「ぐぁっ!」


二本目は逃げようとした男の足へ絡み付き、勢いよく地面へ引き倒す。


三本目は別の男を壁際まで押し込み、逃げ道を塞いだ。


鋭い棘が食い込み、男達は苦痛の声を上げる。


さらに蔦は、拘束した男達から少しずつ生命力を吸い取っていく。


「ホシ!」


「うん。」


ホシは一歩前へ出ると、杖を静かに掲げた。


「――レア・ノヴァ。」


杖の先から六つの光球がゆっくりと浮かび上がる。


六つの光球は標的を捉えると、一斉に飛び出した。


「やめ――」


ドドドドォォン!!


六つの爆発がほぼ同時に起こる。


木の床が激しく揺れ、土煙が一気に舞い上がった。


その隙を逃さず、ヨルは右手を前へかざす。


「――ルア・グラトニー。」


黒い魔力が煙の中を駆け抜け、拘束された男達を包み込む。


「な、何だこれは……!」


男達の身体から力が抜けていく。


腕に力が入らない。


視界も徐々に暗くなっていく。


レア・ノヴァの爆発。


ルア・グラトニーによる弱体化。


二つの魔法が同時に襲い掛かり、男達は次々と意識を失って倒れていった。


やがて土煙がゆっくりと晴れていく。


「……こんなもんか。」


低い声が静かに響いた。


「!」


四人は同時に視線を向ける。


そこには、一人の男が静かに立っていた。


足元には倒れた部下達。


しかし、その男だけは蔦に拘束されたまま、傷一つ負っていない。


男は身体へ巻き付いた蔦へ視線を落とした。


「――ロア・ブレイズ。」


ボォッ……


次の瞬間、三本の蔦は激しい炎に包まれ、一瞬で燃え尽きた。


「そんな……!」


ニクスが思わず声を漏らす。


ヨルは剣を構えたまま男を見据える。


「……お前は何者だ。」


男はゆっくりと巨大な斧を持ち上げる。


「ガルド・ヴォルク。」


それだけ告げると、左手を斧の刃へ添えた。


ゴゥ……


赤い炎が刃を包み込む。


「何、あの魔法……。」


ソラが思わず呟く。


ホシはガルドから視線を逸らさない。


「……炎属性の魔法。」


ガルドは炎を纏った斧を肩へ担ぐ。


「これは俺だけが使える固有魔法――獄炎斧(ヘルフレイム・アックス)という技だ。」


ヨルは剣を握る手に力を込める。


(ここで倒す。)


(王女を助けるためにも。)


ヨルは一気にガルドとの距離を詰めた。


ガキィィィン!!


剣と炎を纏った斧が激しくぶつかり合う。


火花が飛び散る。


ヨルは必死に踏ん張る。


だが、その力は徐々に押し返されていく。


(重い……!)


ブーストで強化されているはずなのに、それでも押し返される。


ガルドはヨルを見つめ、小さく鼻で笑った。


「……フッ。」


その瞬間。


ガルドは大斧を力強く振り抜く。


ドゴォォォン!!


「がっ……!」


ヨルの身体は勢いよく吹き飛び、木の壁へ激突した。


鈍い音と共に壁が大きく軋み、木片が辺りへ飛び散る。


「「お兄ちゃん!」」


ソラとホシが同時に駆け寄る。


ニクスもすぐにヨルの元へ駆け寄る。


「――レア・フローラ。」


柔らかな緑色の光がヨルを包み込む。


傷付いた身体が少しずつ癒えていく。


ヨルは荒い呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと立ち上がった。


視線の先では、ガルドが炎を纏った斧を肩へ担ぎ、静かにこちらを見据えている。


(正面からじゃ勝てない……。)


ヨルは剣を握り直し、突破口を探すように静かに思考を巡らせた。

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