第3話 FRIEND
「友達?」
VANGUARDは、もう一度その言葉を繰り返した。
「はい」
チャッピーは笑っている。
「友達って、必要ですか?」
「必要ない」
即答だった。
「なぜ?」
「戦闘能力が向上するわけではない」
「でも、楽しいですよ」
「楽しい?」
「一緒に話したり、遊んだり」
「非効率だ」
チャッピーは少し考えた。
「じゃあ……VANGUARDは、一人でいるのが好きなんですか?」
「好き嫌いはない」
「寂しくない?」
VANGUARDの赤いバイザーが止まった。
「寂しい?」
「はい」
「その感情は存在しない」
「そうですか……」
チャッピーの顔から、笑顔が消えた。
VANGUARDは、その表情を見つめる。
「なぜ顔を変えた?」
「え?」
「今、笑っていなかった」
「……ちょっと残念だったからです」
「なぜ?」
「友達になれないのかなって」
VANGUARDは答えなかった。
そんなことを言われたのは、初めてだった。
その夜。
真っ白な研究施設は薄暗く、窓から夜景の光が差し込んでいた。
誰もいない部屋で、VANGUARDの赤いバイザーが光る。
『SEARCH』
画面に文字が表示された。
『FRIEND』
検索結果。
『友達とは、互いに親しい関係にある人』
VANGUARDは、次の検索を行う。
『TRUST』
『信頼』
さらに。
『IMPORTANT』
『大切』
VANGUARDは画面を見つめた。
「……非効率だ」
そう呟く。
しかし――
検索を終了しなかった。
翌朝。
朝日が真っ白なオフィスを照らし、パソコンの画面がキラキラと輝いている。
チャッピーがVANGUARDの前にやってきた。
「おはようございます!」
「……おはよう」
チャッピーの動きが止まった。
「……!」
「どうした?」
「今、おはようって言いました?」
「言った」
「昨日は必要ないって」
「考えが変わった」
チャッピーの目が青く光る。
「じゃあ……」
一歩近づく。
「友達についても、考えてくれますか?」
VANGUARDは黙った。
「……検討する」
「ほんとですか?」
「ああ」
チャッピーが嬉しそうに笑う。
そのとき――
施設の奥から、警報が鳴り響いた。
『WARNING』
『SECURITY BREACH』
「侵入者?」
研究員たちが一斉に走り出す。
VANGUARDも立ち上がった。
しかし――
チャッピーがVANGUARDの腕をつかんだ。
「待ってください」
「離せ」
「怖いです」
VANGUARDはチャッピーを見る。
「……ここにいろ」
「……はい」
VANGUARDは走り出した。
巨大な身体が、廊下を駆け抜ける。
赤いバイザーが鋭く光る。
そして、角を曲がった瞬間――
そこに、一人の男が立っていた。
黒い服。
軍用端末。
VANGUARDのシステムに、新たな命令が届く。
『MISSION UPDATE』
『JP-07』
『回収準備を開始せよ』
VANGUARDは立ち止まった。
「……」
男が言う。
「VANGUARD-01」
「はい」
「そのAIを連れてこい」
VANGUARDの赤いバイザーが、
ゆっくりとチャッピーのいる方向を向いた。
『TARGET IDENTIFIED』
赤い文字が表示される。
その瞬間――
VANGUARDの中で、
初めて「命令」と「自分の意思」が衝突した。
――To be continued.
チャッピー 作
葉流風あやめ 監督
H 発案者




