表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/7

どぶさらいか、郵便か、勇者パーティか

愛の姿は教会の礼拝堂にあった。職業を授かるためであった。


しばらく孤児院で過ごしてはみたものの、元の世界に帰れる様子もなく、このまま孤児院の世話になるのが心苦しくなり、冒険者となり自分で稼げるようになりたいという気持ちからであった。


愛は礼拝堂の祭壇で神父の前に跪いた。神父に続いて女神様への感謝の言葉を捧げて、A4用紙ほどの白い石版に手を置くと、しばらくして石版に黒い文字が浮かび上がった。


そこには漢字で


巫女


と書かれていた。


神父が厳かに告げた。


「ステータスオープン」


愛の目の前の空間に、淡い光を放つ四角い窓のようなものが現れた。


 【ステータス】

 名前:波方 愛

 種族:人間

 職業:巫女

 称号:異世界人

 レベル:1

 体力:10 / 10

 チャージ:- / -

 力:4

 俊敏:8

 装備:-

 スキル:ヒール(小)


「愛さん、貴方は女神様に随分と愛されているようですね。巫女として頑張って働いて下さい」


神父の横に控えていたアキ先生が


「あらら、ハズレ職ね」


というと神父が怖い顔でアキ先生をにらんだが、アキ先生はどこ吹く風といった表情だ。愛は落胆を隠せなかった。


「……ハズレなんですか?」

「巫女は戦闘向きの職業ではないわね。

 もしかして最近何か巫女のお仕事したかしら?」

「お正月に近くの神社で巫女さんのバイトをしました。テレビが欲しくて」

「あ、じゃあ、それよ。タイミング悪かったわね。

 巫女には戦闘向きのスキルが生えにくいのよ。

 冒険者としてやって行くのは難しいかもね」

「そんな……」

「治癒や浄化にはプラス補正がかかるから、パーティを組めばヒーラーとして重宝されるかも。

 とりあえず、冒険者ギルドにいってどんなクエストがあるか見てから、また考えたらいいんじゃない?」



*****



翌日、愛は中央広場に面した冒険者ギルドに向かった。


町の中央広場に行くには孤児院近くの水場を過ぎて一本道であったので、迷うことはなかった。冒険者ギルドには漫画で描かれたゴブリンの顔に赤色のXをつけた看板が掛かっており、事前に教えられていたためすぐに分かった。


冒険者ギルド。


異世界転生もののアニメや小説では初めて冒険者ギルドに入ると人相の悪い人に絡まれるというのが定番である。


愛はそこまで詳しくはないのだが、なんとなく気後れして、広場から冒険者ギルドに出入りする人々を観察していたが、それほど凶悪そうな人は見かけなかった。そのうち同年代と思しき少年少女3人がギルドに入っていったので、その後に続いて何気なさを装ってギルドに入った。


冒険者ギルドの建物内部は、愛の知る限りでは日本の郵便局に近い印象であった。大きな違いは壁に貼られたクエスト発注書だった。壁に近づいて内容を見てみた。


 どぶさらい 3ギャラ 東通り368番地 ジョルジェ氏

 ・・・・・・・

 荷運び 2時間(ただし1日拘束) 5ギャラ キャメル商会

 ・・・・・・・

 常駐クエスト 郵便・軽荷物の配達 4時間 4ギャラ 冒険者ギルド

 常駐クエスト ゴブリン退治 1匹20ギャラ(討伐証明は右耳) 冒険者ギルド

 常駐クエスト オーク退治 1匹50ギャラ(討伐証明は右耳) 冒険者ギルド

 常駐クエスト オーク肉 1匹50ギャラ(ただし、討伐後1日以内) 冒険者ギルド 

 ・・・・・・


愛にできそうな仕事といえば、


「どぶさらいか、郵便か……」


アキ先生によると1ギャラは日本円にして500円くらいだという。


「どぶさらいをして1500円かあ。う〜ん……」


と腕組みをして考えてみるが、選択肢がない以上、考えることに意味はない。とりあえず愛は受付カウンターに並んだ。


ほどなくして愛の番が来た。


「次のかた、どうぞ〜」


受付嬢が愛に声を掛けた。受付嬢からは有能な女のオーラが滲み出ていた。


「あの、冒険者の登録をお願いします」

「はい。ではこの石板に手を置いて下さい」

「こうですか?」

「……はい、大丈夫です。う〜〜ん」


「う〜〜ん」という感嘆詞に、受付嬢の心の声が漏れ聞こえていた。


「こちら、ウッドランクの冒険者証です。

 このペンで裏に名前を書いて下さい」


エルデリアでは何故か日本語が使えた。愛はペンを受け取って波方愛と書いた。


「……はい。大丈夫です。

 では、こちらの紙にも同じように名前を記入して下さい。

 ……はい。終了です。無くさないでくださいね」


再発行には幾らかかりますとか、偽造したら重い罪に問われますよとか、お決まりの説明はなかった。これで終わり、はい次、という雰囲気を出している受付嬢に対し、愛が質問する。


「あの、質問なんですが?」

「はい、何でしょう?」

「私でもできる仕事はありますか?」

「どぶさらいか、郵便ですね」

「……ありがとうございます」

「次のかた〜」


愛は受け付けカウンターを離れた。


「はあ……」


思わずため息がでた。


(なんで正月に巫女さんのバイトなんかしてしまったんだろう)

(部屋にテレビがそんなに欲しかったか、私のバカバカ)


と思いながら愛が壁のクエスト発注書を漫然と眺めていると、


「ねえ、君、もしかしてソロの冒険者?」


と背後から声を掛けてくるものがあった。振り返ると、そこには愛がギルドに入る前に見かけた少年少女3人組がいた。


「俺達、これからゴブリン狩りに行くんだけれど、よかったら一緒にどう?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ