表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/13

2 少し語っても良いのかしら


 聖女様と衝撃的な出会いをしてしまったから、気持ちを落ち着かせるためにも私の国の事でも語ってみようかしら。



 私たちの国、ロワイトス国は、レクシュトル神様を信仰しているの。 神様の祝福のおかげで大地は潤い皆平和に生きられるのよね。


 では悪意である『 ゲシュール 』がどうして存在するのかしら? ……そもそも、ゲシュールはレクシュトル神様から派生した神様らしいの!


 ではなぜ派生した神様が『 悪意 』と呼ばれているのか? 不思議に思うわよね? ――えぇ、私も幼い頃から文献を読んで知るまで、不思議でしょうがなかったわ。


 記録の文献によると、神はレクシュトル神様お一人だったそうなの。 この世界が創造されて以来、祝福により潤った大地で生きる生きとし生けるものの繁栄を神様は見守ってこられたそうよ。 ただ、人族は他のどの生き物と比べても業が深く、私利私欲の為に争いを起こして必要のない殺生まで際限なく繰り返したらしいの。


 人族の行いに心を痛めたレクシュトル神様が、その心の痛みを抱えきれず派生した存在。 ――それがゲシュール神なのですって。



 ゲシュール神は残虐な思考の塊で、生きとし生ける者たちを精神支配したそうよ。 ――結果、世界はゲシュール神によって醜い争いが激化し、混沌と化してしまったと伝えられているわ。


 世界を平和に戻す為、レクシュトル神様はゲシュール神を世界に干渉できないよう封印したそうなの。 ……けれど、ゲシュール神は抵抗の末、世界に自身の一部を『 悪意 』として残してしまったのですって。 ――すごい執念よね……。


 世界に残った『 悪意 』のことを、今では『 ゲシュール 』と畏怖の念を込めて呼ばれているらしいわ。



 残された『 悪意 』は人族の負の感情を取り込んでいったみたい。 その増幅された悪意である『 ゲシュール 』は、精神支配に弱い小動物から感染していったらしいの。


 感染した生き物は、ゲシュールの悪意によって狂暴化して暴走したそうよ。――文献には狂暴化した生き物の事を『 ゲシュール化 』と記載しているわ。


 ゲシュールの感染が広まると、野生の生き物の多い各地の森はゲシュール化した生物で溢れ、守り手の少ない人族の村は次々と壊滅してしまったそうよ。



 レクシュトル神様は『 ゲシュール化 』を厄災と捉え、その厄災から世界を守る為に選定した人族に加護をお授けになったそうなの。 ――それがロワイトス王家とオルフェルク家の初代当主様たちと伝えられているわ。 ……そういえば、その加護を授かった者の中に『 聖女様 』もいたらしいわ。



 初代ロワイトス国王陛下がレクシュトル神様から加護を授かった際に、王弟であるオルフェルク公はレクシュトル神様の眷属に認められて、教会を設立したと伝えられているわ。 それに、心神深かった一人の少女が特別に神様の祝福を受け、『 初代聖女様 』になったと文献に記載されていたわね。


 初代聖女様の能力は神聖力だけじゃなくて、神様と心を通わせる能力も授かったらしいのだけれど、本当なのかしら?


 記録が残っているのだし、嘘ではないのでしょうけれど……



神様から授かった力は血で引き継がれるそうなの。 だから、建国以来ロワイトス王家の血を継ぐ者が王位を継承していて、それは教会も然り。 眷属としての力を次代に継がせる為に、教皇様もオルフェルクの血を継ぐ者が継承しているのよ。 ――だから、この国は建国から三千年近く経っても変わらずロワイトス王家による王権国家が続いているらしいわ。



 ――そして、私イリス・ロワイトスは王家唯一の直系王女なのだけれど、なぜ唯一なのか? 気になるかしら?


 実は、現国王陛下の子供はメル兄様と私の二人とされているのだけれど、私とメル兄様は実の兄妹ではないのよ。 今はとっても仲良しなメル兄様と私だけれどね。


 元々は仲の良い兄妹っていう関係なんかじゃ全然なかたのよね――。



 ずっと私の体が弱くて病弱だったから、メル兄様は私に会いたくても会えなかった。……と言えば美談に思えるかもしれないけれど、実際はただ単にやっかまれて気にしてすらもらえなかっただけなの。



 生まれて物心ついた頃には自分が前世の記憶を持っているって私はすぐ気づいたわ。 ――しゃべれもしない赤ちゃんが、知識多いなんてあり得ないもの。

 

 頭の中では『 あれしたい! これしたい! 』って思うことは沢山あったのに、体が弱すぎるし赤ちゃんだしずーっとベッドの上で寝たきりだったわ。



 最初はね? 我慢していたのよ? ……だって私まだ三歳にもなっていなかったもの。 でも、沢山の知識があるのに、何もできないなんてつまらないじゃない? ハイハイも、タッチもさせてもらえないのよ⁈


 ただ身体が弱すぎたのよね……。 自分の思うように身体を動かそうとすると、すぐに熱が出ちゃうの。 ――それでも結局我慢できなかったのだけれどね。


 『 折角王女に生まれたのだから人生楽しみたい!病弱引きこもり生活なんて嫌! 』


 我慢の限界を超えて心の中で自分の生き方を決めてからは早かったわ!


 ――とはいえ、最初は上手くいかなかったの。 いきなり動こうと思っても寝返りすらできなかったからね。 まずは寝たきりでも出来る事から始めることにしたわ!



 暇さえあれば手先や足先をちょこちょこ動かして体の血流が良くなるように努めたの。 それすらも最初は無茶すると熱が出たのだけれどね。


 慣れてきたら会話できるように顔のマッサージを自分でしながら、口を動かす練習と発生の練習を皆が見ていないところで頑張ったのよ。 ――まともに会話できるようになったのは三歳過ぎた頃だったかしら。


 快活に話すから随分と周りに驚かれたのを覚えているわ。 ふふふ。



話が出来るようになってからは早かったわね。 意思疎通が出来るのって本当に素晴らしいのよ。 寝たきりであっても身体の血流を良くするために、全身のマッサージを侍女に頼めるようになったし、全身浴しながら身体を動かす練習も手伝ってもらったわ。


 食事も食べやすいようにカットサイズも全部細かく指示を出したし、ちゃんとよく噛んで栄養の吸収が良くなるよう努めたのよ。


 前世では健康維持には気を使っていたみたいで、ある程度知識があったのが功を奏したわね。 ――だからかしら? 前世とは全く違う世界でも出来る事はたくさんあったのよ。


 侍女たちの介助もあって、三歳を過ぎて半年たつ頃には十五分程度なら歩けるようになったの。 頑張った甲斐があったわ!



 動けるようになったら外にも出たいじゃない? だから私庭園までは抱っこしてもらって、十五分弱だけれどお庭のお散歩もするようになったの。 ――実はそこで初めてお会いして、メル兄様が私のお兄様だとわかったのよ。



 あの時のメル兄様ったら酷かったのよ? 目の前に妹がいるっていうのに無視するんだもの!


 傍にいたザッシュを連れて立ち去ったメル兄様を見て、侍女に「 あの子だあれ? 」って聞いて初めて自分のお兄様だってわかったのだもの!


 「 挨拶位お兄様ならしてくれてもいいじゃない! 」ってちょっとだけあの時は私も臍を曲げてしまったわ。


 ――でもね? それからちょっとずつ体力もついてきてお散歩の時間が増えたら、メル兄様たちに会う回数も増えていったのよ。


 兄妹なんだから、お話したっていいじゃない? 私は気弱なお姫様じゃないから、堂々とお茶にお誘いしたの! ――そうしたら応じてくれたのよ。


 私のお誘いには応えなきゃいけない。としぶしぶお茶に付き合ってくれていたのだと、後から知ったけれどね。


 最初は不承不承な態度を露骨に出していたけれど、私はふてぶてしかろうと会う度にお茶にお誘いしたわ!


 断られてもしょうがなかったとは思うの。 ――けれど、メル兄様は余程の事がない限り私を優先して下さったわ。


 段々メル兄様も私に心を許してくれるようになって、同行していたザッシュとも仲良くなれたの。 ――四歳になる頃には仲良し三人組になっていたわね!ふふ……。



 三人のお茶会が当たり前になってきた頃には、いつの間にかアランも共にティータイムを楽しむようになっていたのよ。 ザッシュが連れてきたのだけれど、最初は苗字も言わないし、がりがりだし、平民のような服も着ていたから、訳ありだと私はすぐに気づいたけれど何も言わなかったわ。 ――まぁ、とんでもない訳ありだったと後から本人に教えてもらったけれどね。


 私の身体作りにはメル兄様たちが積極的に継続して協力して下さっていたわ。 朝一緒にゆっくり走ってくれたり、剣術の練習やダンスも教えてくれたの。 ――気づけば病弱王女じゃなくて、お転婆王女になっていたわね! ふふ…… 微笑ましい思い出ばかりよ。


 後からお父様に教えてもらってわかったのだけれど、メル兄様が私を避けていたのには理由があったのよ。



 私のお父様、国王陛下は、五年以上子供に恵まれなかったらしいの。 ――まぁ、こればかりは天からの授かりものだから計画的に、とはなかなかいかなかったのでしょうね。


 平民なら「 ゆっくり待ってみよう。 」とも思えるかもしれないけれど、王国の後継者に関しては悠長なことは言っていられなかったみたい。 それで、お父様のお兄様である大公様に白羽の矢が立ったのよ。 ――大公夫妻が子供に多く恵まれていたかららしいわ。


 お母さまである王妃陛下の不妊を周りが騒ぎ始めてから数年後、大公夫人の五回目の懐妊の知らせがお父様の許へ秘密裏に届いたらしいの。 そこで、大公夫人のお腹の中にいた子供を、お母様が産んだことにすることになったのよ。 ――凄い話でしょう? この秘密を知っているのは国王陛下の気を許した者だけらしいわ。


 大公夫人と、お母様はそれぞれ社交界から一時期身を引き、大公夫人の出産予定一カ月前に王妃の出産間近という情報を公開したそうなの。


 出産は無事に済んで、その場ですぐに生まれた赤ん坊は王妃の出産場所に届けられ、王妃が王子を出産したと発表したそうよ。 ――その王子がメル兄様なのよね。


 もしメル兄様だけが国王陛下の子供なら大した問題にはならなかったでしょう……。 でも、その三年後に私が生まれてしまったのよ。 初代国王陛下と同等の神聖力を保持した直系の王女である私が、ね。


 身体が弱くて外には出られなかったけれど、生まれた時から私の神聖力は強かったらしくて、産声を上げた時から淡い光を身体から放っていたらしいわ。 ……幸い私が王女で身体も弱かったから、後継者争いは激化しなかったけれどね。



 王族もオルフェルク家も、子供が生まれたら一歳で神聖力の有無の確認をするのよ。 ――神の石と言われるクルスという奇石を触わって光るか見るの。 光り具合で神聖力の保持量や質もおおよそがわかるらしいわ。


 残念ながらメル兄様は私と違い、神聖力が僅かしかなかったらしいの。 そして、たった一歳で神聖力を僅かにしか持たない残念な王子になってしまったそうなのよ。


 それなのに、私が生まれたことでメル兄様は更に出来損ないだと侮蔑の眼差しで周りから見られたのでしょうね。 ――だからメル兄様は私を避けて会いに来てくださらなかったのよ。 私に会うのが嫌だったのも頷けるわ……。


 自分自身を【いらない存在】とメル兄様は思ってしまったのではないかしら。 ――でも私が外に出るようになってから変わったの! 最初はともかくとしても、仲良くなれたのは本当に嬉しかったわ。


 メル兄様はとっても優しいの。 後追いする私を放置しなかったし、構っている内に情も沸いたのでしょうね。



 今では過保護な程に優しいし、私を守るために勉学も剣術もありとあらゆる王に必要な教養は身に付けているの。 メルお兄様は、神聖力が僅かでも、それ以外は完璧すぎる王子様なんだから!


 だから、今夜のこの夜会での聖女との出会いがヘレインへの想いより大きいものになるのなら、不承不承であっても二人を認めることはやぶさかではないと思っていたのよ。


 


 ――今は認めたい……とはとても思えないのだけれどね!




―――――――――――――

昨日更新できなかった分です。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ