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街への進出

小さかった門が近づくたびに影のように大きさを増していく。

その迫る圧だけは感じるのに音だけがどんどん遠ざかっていく。

体が限界を迎えている証拠だった。


所々苔むした古い門、左右には槍を持った門番が二人。

けれどやる気は全く感じられず、ただそこに立っているだけのようだった。


入るのに厳しい門ではなさそうだ。

門番は俺の姿を視界に入れてから遅れてしっかりとこちらを見た。


その表情が固まる。


頭から垂れる血。

服にこびりついた大量の血痕。

死人みたいに青白い顔。


言葉を失うのも無理はなかった。

「お、おい…」

驚きと戸惑いが混じった声が聞こえたが、俺はもう門の中に入っていた。


街の人々も俺を見るなりギョッと目を見開き、誰ひとり近づいてこない。

視線だけが刺さる。


「あぁ…クソ……力が……」

街に辿り着いたという安堵で、全身から一気に力が抜けた。

貧血で視界も揺れる、俺は倒れ込んだ…


はずだった。


だが、衝撃は来ない。

代わりに、どこか温かい腕の中に収まった。


「おい、大丈夫か?

まずは医者に連れてくぞ」

低い、けれど急ぎを含んだ声。


男はそのまま俺を背負い上げる。

弱ってる俺の体が上下に揺れないように、慎重に。


「お、おねがい…しま…す…」

声を絞り出した瞬間、意識が真っ暗に沈んでいった。


「…よく生きてんな、これで。

鼓動はある…急がねぇと」

その声だけが遠くで響いた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


目を開けると知らない天井に知らないベッド。

「ん…?俺……街に着いて……ああ、誰かが助けてくれたんだっけ……?」


助けてくれた人が誰なのか、ちゃんと礼が言えたらいいんだけどな。

無一文だけど気持ちだけでも伝えたい。


ゆっくりと上体を起こすとベッドの隣に誰かが座っていた。


知らない男。

けれど声は覚えている。


「起きたか。体の調子はどうだ?」

それは倒れた時に聞こえた、あの男の声だった。

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