自身の正体2
「魔人…まさかバレてないとでも思っているのか?」
男はひどく威圧的で暴力的な声だった。
「いるんだよそういう屑共が村に溶け込み人を襲い壊滅させる。
そんな奴らは今ものうのうと生きている…お前らのようにな」
「だけど…俺らは何もしてないじゃないか…」
俺は男の言ったことに反発し声を上げようとした。
しかしその瞬間
ゴッ
と鈍い音が俺の顔付近で強く鳴った。
俺は驚きが勝ち、唖然としてしまう。
少し間が開いた時、手に何か液体がポトリと付いた。
手を見ると《《赤黒い血》》が付いていた。
口を触るとぬちゃりとした感触が手と口に広がりそれと同時に生ぬるい鉄の味がする。
一気に頬と口の中に痛みが走る。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
しかしそれよりも周りのぎょろりとした憎悪の塊のような目の方が痛かった。
その一撃を皮切りに周りにいた数十人の人たちが一斉に俺たちに殴りかかってくる。
止めようと言い訳をするがそれよりも先に視界が揺れる。
拳や蹴りの音が聞こえる。
遅れて痛みがやってくる。
鼻の奥を針で刺されたような鋭い痛み。
怒号が全く声が聞こえなくなるほどの耳鳴り。
体中至る所から鈍い痛みがする。
とても長い悪夢だった。
どれだけ泣いたのかどれだけ殴られたのかもう覚えていない。
思考がまとまらなくなり、気が付くと誰もいなくなっていた。
「やっと終わった…」
そうかすれる声で小さく呟いた。
返事を全く考えていない独り言、ただの漏れ出た独り言だった。
「終わっちゃいねぇよ…この《《クソ魔人共》》」
低く唸るような声、しかし覚えている声。
俺の体中から汗が溢れ出る。
体は動かない、目だけで見た。
《《あの男》》だった。
「これで分かっただろ…もう街には来んな
俺らですら優しい方だ、もっとひどい所では簡単に殺されていたぞ
お前が抱いてるその怒り、悲しみ、憎しみ、それが俺らが今抱いている感情だ、どれだけ理不尽でも失ったものは返ってこない…お前らが人を殺したとかそう言う事をしていなくてもだ、俺は今すぐお前らをぶち殺したいと思ってる、兄貴を殺した種族の脳はどうなってるのか?
頭を踏みつぶして見てみたいぐらいな…
俺の名前はラグナ、殺したいなら殺しにくればいい
そっちの方が俺はお前を罪悪感なく殺せる」
ラグナは低く威圧的なのは変わらないがそこに少し人間の弱さが見えた気がした。
朦朧とする意識の中、ラグナは俺とアキを引きずり街の外へと放り投げた。




