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転生者3

「見つからないな…」


思わず吐いた息が夜の空気に溶けて消えた。

足の裏がじんじん痛む。


「当たり前だろ。こっちの方が日本より治安が悪いんだ」

アキは周囲を一瞥してから続けた。


「浮浪者対策は万全、横になれそうな場所なんて片っ端から撤去してるだろ」


俺とアキは、病院を出てからずっと街を彷徨っていた。

だが、どれだけ歩いても状況は変わらない。

ベンチはもちろん、腰を下ろせる段差ひとつない

余程浮浪者のような貧困層が嫌いなのか

壁はすべて角が落とされ、階段は微かにギザギザしている。


「なあアキ?」


俺はなんとなくの提案を思いつく。

いや薄々は考えていた提案、アキも思いついてそうな。


「……もう平原の方、行こうぜ

そこで寝るしかない」


言葉にした瞬間、腹の奥がきゅっと縮んだ。

本当の本当に最後の手段。

しかしそれ以外全く検討もつかない。


アキも一瞬だけ黙り込んだ。

苦虫を噛み潰したような顔で短く息を吐く。


「……まあ、それしかないか」


納得というより、諦めに近い声だった。


そこからは無言で歩いた。

時間の感覚が曖昧になる。

足は重く膝の裏が張って歩くたびに鈍い痛みが走る。

息を吸うと夜気が肺の奥まで冷たく刺さった。


平原に着くと本当にあたりが真っ暗だった。

街灯も何も無い月光のみで照らされている。

薄っすらと見えるぐらい、地面のでかい落とし穴があったとしても

全く気づかないだろう。


微かに見えた一本の木の下で、俺たちは立ち止まる。

そのまま、ほとんど倒れ込むように地面に寝転がった。


草が服越しにちくちくと刺さる。

地面の冷たさが、背中から一気に体温を奪っていく。

思わず肩をすくめた。


「……寒っ」


体を丸めても、冷えは逃げてくれない。


「そういや」

沈黙を破るように、アキが言った。


「あんたさ…結局なんて呼べばいいん?」


アキはずっと思っていた疑問を俺にぶつけた。

確かにずっとあんたとかで呼ばれてたな。


「日本にいたときの名前は……佐藤俊介」

口にすると、胸の奥が少しだけ痛んだ。


「じゃあシュンでいいだろ」


「いや、なんか気恥ずかしいから嫌だ」


「外国風の名前を自分で考えて名乗る方が、よっぽど恥ずかしいと思うけどな」


「それ言うなら、あんただってアキ・オスローとか名乗ってるじゃないか」


「うっせ……」


アキは一瞬だけ黙り、夜空を見上げる。

そしてふっと息を吐いて言った。


「じゃあ【ゾイ】だ」


「ゾイ?」


「初めて会ったとき、死にかけだったろ」


「……良く分からんけど…じゃあそれにするよ」


夜空の下で冷たい風が吹き抜けていた。

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