第31話 いざ『ラスボス戦』
ルナリアのおじいちゃんが体験した『災厄』。
その話を聞いた俺は、複雑な気持ちになった。
(すべての迷宮主&魔女と一度に戦えるのは戦闘狂冥利に尽きるが……挑んだら絶対死ぬな俺)
☆2ダンジョンの迷宮主でさえなんとかギリギリ勝利できたくらいの強さなのに、☆3〜☆5ダンジョンの迷宮主まで同時に来られたら、どう考えても太刀打ちできない。
冷静に考えれば、挑まないのが正解だ。
社会人時代の冷静沈着な俺なら、
速攻でダンジョンコアを叩き割っている。
「何この物騒なアイテム!こんなんいらんわ!」と。
ただ、今の俺は冷静ではなくて。心のどこかで災厄に挑んでみたいと考えている自分がいる。
(まぁ、一人で悩むことでもないな。
ルナリアに相談してみよう)
ひとまず俺は、相棒であるルナリアに『ダンジョンコア』の説明をすることにした。
「ルナリア、聞いてくれ。
この『ダンジョンコア』なんだが、☆1〜☆5の全種類を集めると『災厄』に挑戦できるらしい」
彼女に☆2ドラゴンボ○ルを手渡す。
「すごく綺麗な宝玉ね。
これをあと4種類集めると災厄に招かれるの?」
「そういうことになるな」
「じゃあ、これは捨てるべきね」
「え、なんで!?」
「なんでって……。
おじいちゃんでも逃げるので精一杯だったのよ。
わたしたちなんてイチコロに決まっているわ」
(まぁ、そりゃそうだよな。
分かってました、すんません)
「それに、もし本当に攻略できちゃったら、この世界から迷宮がすべて消えてしまうのよ?
そんなの、すごく勿体無いじゃない」
(なるほど、たしかに。
迷宮好きのルナリアはそう考えるよな)
すべての迷宮主が現れるということは、裏を返せば、向こうも総力をかけて挑んでくるということ。
迷宮主を失った迷宮は消えてなくなるので、もしも『災厄』が攻略されれば、すべての迷宮が消えることになる。
諸刃の剣ってやつだ。
「まぁ、たしかにルナリアの言う通りだな。
ひとまず、『災厄』は保留にしよう」
どう考えても、彼女の意見が正しい。
『災厄』への挑戦は諦めるべきだ。
(まぁでも、せっかく手に入れたアイテムを捨てるのは勿体無いよな!)
ルナリアは「ダンジョンコアは捨てるべき」と言ったが、俺はちゃっかりポーチに戻しておいた。
――挑戦する気マンマンである。
次の日の早朝。
「よし、行くか!」
再び、俺たちは☆1ダンジョンに潜る。
メンバーは前回と同じ20名の精鋭たち。
正直、ルナリアと2人だけで十分だが、ミゲルがラスボス戦を観戦したいと駄々をこねた結果、結局、全員で行くことになった。
「アニキのために情報を仕入れておきました!」
そう、得意げな顔で話すミゲル。
初対面のときは、まるで野犬みたいに殺気立っていたのに、今ではすっかり、飼い犬みたいに丸くなっている。
その変わり身の早さに、皆もドン引きしていた。
まあ、1番驚いているのは俺なんだけど。
彼が集めてくれた情報は、以下のとおりである。
・中ボスは3週間ほどで復活する。
・中ボスが復活するまでの間、中ボス部屋にはモンスターが出現しないので避難所として活用できる。
・第2階層からは敵が強くなることが多い。
「上位ランカーたちは中ボス部屋に仮のキャンプを立てて、次の階層の攻略を目指しているらしいっす。
アニキなら予定通り1日で迷宮を攻略できるとは思いますが、一応、キャンプを設営する準備はしといた方がいいっすね」
「そうなのか。
じゃあ、いろいろ追加で買わないといかんな」
「大丈夫っす!
もう買っておきました!」
「お、おう、ありがとう」
意外とミゲルは有能であった。
さすが、舎弟一号。
気が利くな。
とりあえず、準備は万端。
俺たちはダンジョンへ向かった。
「敵も強くなっているけど――そんなの関係ないくらいに佐藤さんが強すぎて、話にならないわね」
次々と討伐されていくゴブリンたちに、ソフィアさんが同情の目を向ける。
ソルジャーゴブリン(兵士)。
ゴブリンメイジ(魔法使い)。
キャヴァリィゴブリン(騎兵)。
あっという間に第2階層へ到達した俺たちの前に、ゴブリンの上位種たちが立ちはだかった。
第1階層にいた雑魚ゴブリンとは違い、彼らはスキルを使ったり、変なモンスターに騎乗して襲ってくる。
――が、ゴブリンは所詮ゴブリンである。
早くラスボスと戦いたくてウズウズしている俺に瞬殺され、アイテムへと変換されていった。
俺とルナリア以外のメンバーは、武器を取り出す暇もなく、ただただ俺たちの後をついてくるのに精一杯である。
ちなみに、走るのが嫌なルナリアは、飛行スキルを使って優雅に移動している。
もうちょっと進行速度を抑えたほうが良いのかもしれないが、今日中にラスボスと戦いたいので、彼らには申し訳ないがペースは落とさない。
というか、落とせない。
ウズウズが止まらないんだ。
(オラ、ウズウズすっぞ!)
もしかしたら俺は、魔王によって戦闘民族サ○ヤ人に作り替えられたのかもしれない。そろそろ髪の毛が金色になってもおかしくないな。
俺たちはどんどん突き進んでいく。
ダンジョンに入ってから約5時間後、
俺たちはラスボス部屋の前に到達していた。
「はぁはぁ……さすがに速すぎるぜアニキ」
5時間ずっと走りっぱなしだったので、ミゲルたちは息を切らしてその場にへたり込んだ。
「悪い、悪い。
悪いついでに申し訳ないが、
もう行っていいか?」
「ちょ、もうちょっと待ってくださいよ」
「……そうか」
ラスボスと戦うのは俺1人。
だから、俺が戦っている間にゆっくり休んでもらえば良いと思ったが、ラスボス戦ともなれば、何か不測の事態が起こってもおかしくないだろう。
休息は必要か。
俺もアイテムポーチから水を取り出して水分補給する。ルナリアには、水と携帯マナバーをあげた。
携帯マナバー。
食べると魔力が回復するカロリ◯メイトである。
10分後。
「じゃあ、開けるぞ」
休息を終えた俺たちは、
ついに、ラスボス部屋に足を踏み入れた。
――次の瞬間、
『『『ギャギャギャギャギャギャギャッ!』』』
ひどく醜悪な『大歓声』に包まれる。
扉の向こうは、巨大な『地下闘技場』であった。
観客席を埋めつくすゴブリンたちが、挑戦者たちに嘲笑じみたエールを送る。
挑戦者、つまり俺たちのことだ。
そんな、大熱狂に包まれた闘技場の対面。
石造りの壁を背にして、黒鉄の玉座がそびえ立っていた。
そこに腰かけているのは、
『レウー・テヴァフ
《殺戮の刻だ、刮目せよ》』
闘技場の王。
つまり、この迷宮のラスボスである。




