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第22話 初めての『大出費』

「これが、アイテム交換所よ!」


 案内人の女性に着いていくと、謎の石像があった。


 3メートルもある、天使の羽を生やした女性の像。

 大きな本を抱え、空を見上げている。


 彼女は、得意げにこの石像を指差した。


「案内してくれてありがとう。

 これが、アイテム交換所か。

 すまないが、使い方を教えてもらってもいいか?」


「いいわよ。

 といっても、石像の前に立てば分かるけど」


 というわけで、

 彼女の言う通りに石像の前に立った。


 すると、


――ゴゴゴゴゴ。


 石像の女性が急に動き出して、手に持っていた大きな本を開く。

 そして本の中身が見えるように、しゃがんで俺の目の前に差し出した。


「うお、めっちゃ動くなコイツ!

 少し怖いんだが」


「あははは。

 私も最初は驚いたよ」


 案内人の女性が笑う。


「わたしも見ていい?」


 ルナリアも興味津々のようだ。


「いいぞ」


 2人で開かれた本を見る。


==========

【タッチしてください】

・食料品

・日用品

・冒険用雑貨

・衣服・武具

・医療品

・拠点建築用雑貨

・交換品

・その他

==========


(いや、タッチパネルかい!)


 本だと思ったらタッチパネルだった。

 回転寿司とかにある注文タブレットの巨大ver。


 「石像とか中世ファンタジーっぽくていいな」とか思ってたのに、急に現代チックになって少し萎える。

 ユーザーフレンドリー性は高いけど。


 これは使い方を聞くまでもないな。


「じゃあ、食料品から見てみるか」


――タッチ。


==========

【食料品】(232件)

・鉄板乾パン (50G)

・レッドボアジャーキー (100G)

・薬草クラッカー (160G)

・携帯マナバー (160G)

・携帯スープ瓶 (200G)

・清水ボトル (50G)

・硬焼きチーズブロック (200G)

・香骨スパイス (150G)

・羊麦パン (170G)

・苔蜜ジャム (100G)

……(他222件)

==========


(品揃えがすごい!

 もうこれスーパーじゃん!

 どうしよう、選べない!)


 巨大タッチパネルに表示された数多の商品。

 冒険に持っていく携帯食料から、パンや麺類などの主食、果ては鮮魚から特産品まで取り揃えている。


 これだけ商品があると、何を買えば良いのか分からなってしまう。


 半額シール弁当(俺の相棒)は……ないか。


「そういえば、自己紹介がまだだったわね。

 私はソフィア、スペイン出身よ。

 さっきの生意気なガキは、ミゲル。

 わたしの弟ね」


 何を買おうか「うーん」と唸っていると、

 ここまで案内してくれた女性、ソフィアさんが思い出したように自己紹介をしてくれた。


 俺はいったんタッチパネルから目を逸らし、ソフィアさんへ向き直る。


「俺は田中汰一(たなかたいち)、日本人だ。

 そんで、この子はスウェーデン出身のルナリア。

 人見知りする子だからフードを被っている。

 許してやってほしい」


 俺が『佐藤太一』だとバレないように、前もって設定しておいた偽名『田中汰一』を名乗る。

 あと、ルナリアがエルフであることを隠すために、耳を覆うフードについても一言謝っておいた。

 我ながら完璧な立ち回り。


 ちょうど話すタイミングができたので、ずっと気になっていることについても話を聞こうと思う。


「ソフィアさんもミゲルさんもすごく日本語が達者だが、前の世界で日本留学とかしていたのか?」


 この世界に来てからまだ片手で数えるほどしか人に会っていないが、ルナリア含め、全員が日本語を話している。


 その理由が気になっていたので聞いてみた。


 すると、

 ソフィアさんは少し驚いた顔を見せた後、


「驚いたわ、アイテム交換所を知らない時点でもしかしてと思っていたけど、あなたたち2人とも、この世界に来てから初めて他の人に出会ったのね。


 この世界では、日本語が標準語なの。

 前の世界で日本語が喋れなかった人たちも、この世界に来てから急に日本語が使えるようになったわ」


 なるほど、

 そんな気がしていたが、やっぱりそうなのか。


「そうなのか、それは知らなかった。

 教えてくれてありがとう。

 ソフィアさんのお察しの通り、他の人と会うのは初めてだったんだ」


「へぇ、すごいわね。

 もう転移から39日も経っているのに。

 今までどこで何をしていたの?」


――ん?


 転移から39日も経っているのか?

 体感、5〜7日ぐらいと思っていたのに。

 このタイムラグはなんだ?

 考えられる理由は、


 あぁ、魔王に殺されかけた後、俺はずっと眠っていたが、たぶんそこで30日以上経過したんだろう。


「実は、転移した場所が迷宮の中だったんだ。

 2人で命からがら逃げてきたが、そのせいで、これまで他の人と出会うことがなかった。

 ソフィアさんさえよければ、ちょっと外の世界について教えてもらえないだろうか?

 ちゃんと金は払う」


「いいわよ」


 というわけで、

 俺はいったん話を聞くことにした。


「わたし、買い物したい」


「いいぞ、はいスマホ」


 ルナリアは交換所に興味津々な様子。

 なので、買い物は彼女に任せる。

 俺は情報収集に専念する。


 まず、人々の異世界生活について聞いてみた。


 現在、人々はアイテム交換所の周りに集まって、集落や町をつくっているらしい。


 この場所も、そんな集落の1つだ。

 住民は300人ほど。

 10万人を優に超える町もあるみたいなので、ここはかなり小さな集落に属している。


 300人だとどうしても人手が足りないので、新たな住民を応募しているらしい。

 暗に誘われたが、断らせてもらった。

 俺たちの目的は、迷宮探索だからな。


 話を戻す。

 アイテム交換所に人々が集まっているのは、アイテム交換所がとても便利だから。


 本当になんでも売っているらしい。

 異世界版ウォルマートだ。


※ウォルマート。

 世界最大のスーパー・小売店。


 人々はモンスターを倒して得た素材を金に換え、その金で交換所の商品を買っているようだ。


 基本的にはその日暮らしなので食料品や日用品を中心に買っているが、住民の多い大きな町は資金が潤沢なため、町の発展にも金を投資できる。


 異世界でも、地域格差は生まれるらしい。

 世知辛いな。


 と、そんな話を聞いている俺の後ろで、ルナリアがすごくはしゃぎながらショッピングを楽しんでいる。


「買い物をするには……。

 あ、ここにスマホを近づければいいのね」


――ティリン♪ ティリン♪(決済音)


「わ、すごい!

 急にへんなものが現れた!

 これ、食べれるのよね?

 どれどれ……あ、甘い!

 しかも、魔力がちょっと回復したわ!」


 買ったのは『携帯マナバー』かな?

 楽しそうでなにより。


「次は……これね」


――ティリン♪ ティリン♪(決済音)


「これで体を洗うと綺麗になるのよね?

 どれどれ……あ、いい香りがする!」


 買ったのは『ボディソープ』かな?

 楽しそうでなにより。


「次は……ちょっと待って、面白そう!

 これは買うしかないわ!」


――ティリン♪ ティリン♪(決済音)


「へぇ、これがゴーレムなのね!

 すっごく大きいわ!

 家を建ててくれるなんて、すごいじゃない!」


 買ったのは『建築用ゴーレム』かな?

 楽しそうでなにより。


「――いや、ちょっと待て!」


 驚いて振り返ると、

 全長10メートルほどもある巨大なゴーレムが、どっしりと仁王立ちしていた。


(いや、あの、それ冒険に必要ないよね?)


 価格を見ると、2000万G。

 バカ高い。


 ソフィアさんも唖然としている。


「おいおい、どうした!

 ――って、なんだこれ!」


 急にゴーレムが現れたので、他の住民もぞくぞくと集まってきた。


 最悪な状況だ。


(さて、どうしたものか?)


 深呼吸して、打開策を考える。

 が、そんなものはない。


 唯一できることといえば、


「あの、これ使わないんで、あげます。

 なので、大事にはしないでもらえますか?」

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