第7話 研究所所属
翌日。
スタンリーは《誉》に乗り、研究所周辺の空を飛んでいた。
今日は中低速域での操縦訓練だ。エディの補助を受けながら、自分の操作で上昇と旋回を繰り返す。
「実際に《誉》へ乗ってみて思ったんだけど」
『はい?』
「この技術、かなりのものだよな」
『そうですね』
「だったら、やっぱりここって国営の研究所なのか?」
『いいえ』
「……違うのか?」
『はい』
「じゃあ俺は?」
『はい?』
「俺は皇国の所属になるのか?」
『いいえ』
スタンリーは思わず聞き返した。
「……どういうことだ?」
『研究所は独自の技術を保有しておりまして、皇国とは持ちつ持たれつ、といった関係です』
「持ちつ持たれつ?」
『皇国側は研究所へ場所や資材、各種便宜を提供します。研究所側は、その代わりに技術や研究成果を提供します』
「……なるほど」
『ただし、研究所そのものが皇国の組織というわけではありません』
「じゃあ」
スタンリーは少し嫌な予感を覚えた。
「俺の身分は?」
『研究所所属のテストパイロットです』
「……」
『正式な皇国軍人ではありません』
「え?」
『皇国政府の職員でもありません』
「……つまり?」
『研究所のテストパイロットです』
「いや、それはもう分かった!」
『まだご理解いただけていないのかと思いまして』
指定された地点へ近づき、スタンリーは《誉》を減速させた。昨日よりも滑らかに止まれた気がする。
『良好です。次は右方向へ移動してください』
「了解……って、待てよ」
操縦桿を動かしながら、昨日見た契約内容を思い出す。
「じゃあ、契約にあった皇国の市民権って」
『試験完了後に付与される条件ですね』
「俺、今は皇国の市民でもないのか?」
『はい』
「……なんか急に怪しくなってきたぞ」
『現在は研究所の所属者として、皇国での滞在を認められています』
「今ここにいる分には問題ないってことか?」
『はい。市民権は、研究所との契約が終了した後も、皇国で身分を保障されて生活するためのものです』
「研究所を辞めた後のためってことか?」
『はい。報酬を受け取っても、その後の生活が研究所との関係次第では困るでしょう』
「……まあ、それはそうだな」
『非常に理にかなった契約条件です』
「理屈は分かったけど……」
スタンリーは少し考えてから、口を開いた。
「俺、もしかして、国じゃなくて研究所に拾われた人間なのか?」
『契約上は、志願して雇用された人間です』
「言い方!」
『正確さを重視しました』
「正確なら何でもいいと思うなよ……」




