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第19話 実戦評価

 基地へ帰還したシェパードは、エリアスのもとへ報告に向かった。


「帰ったか」


「はい」


「被害は?」


「こちらは軽微です。問題ありません」


「そうか」


 エリアスは頷き、少し笑った。


「相変わらず、お前はよく狙われているようだな」


「どうも敵から人気者になったみたいで」


「喜ばしいことだな」


「全然嬉しくないですが」


「それで、研究所の試作機はどうだった?」


「ああ……」


 シェパードは少し考えてから答えた。


「実際に見ましたが、我々の戦い方の参考にはなりませんね」


「参考にならない?」


「機動が違いすぎます。我々の機体と同じ感覚で見ても、真似はできません」


「……なるほど」


 エリアスは腕を組んだ。


「連携は?」


「取れます。攻撃前には連絡がありましたし、こちらの射線も避けていました」


「なら、その点は問題ないか」


「はい。互いの動きを把握して、あとは自由に動いてもらうのが良さそうです」


「元々、その予定ではあるがな」


「ですね」


 エリアスは報告書へ目を落とした。


「そもそも今回程度なら、お前の小隊だけでも十分だったか」


「そうですね」


「随分余裕だな」


「自惚れないようにはします」


「そうしておけ」


 エリアスは再び顔を上げた。


「で、あれは強いのか?」


 シェパードはすぐには答えなかった。


「分からんか」


「なにぶん、まだ一回ですからね」


「一機、ほとんど一撃だったそうだが」


「はい。速さも、一撃の威力も相当なものです」


「それでも判断できんか?」


「今回は、こちらと交戦していた敵への奇襲でしたから。最初からあの機体を警戒している相手にも、同じように戦えるかは分かりません」


「なるほどな」


「今後も見てみます」


「そうしてくれ」


     *


 その少し前、スタンリーは小隊と別れ、《誉》を研究所専用格納庫へ向かわせていた。


「……なあ、エディ?」


『はい?』


「俺、さっき人を殺したんだよな?」


『はい』


 スタンリーは自分の胸へ意識を向けた。


「なんというか、もっとこう……何かあると思ってた」


『心理的な動揺ですか?』


「まあ、そうだな」


『それでしたら、少し私が精神状態を安定させています』


「……は?」


『戦闘時の過度な緊張や動揺は、操縦へ悪影響を及ぼしますので』


「ちょっと待て。お前、俺の精神まで勝手に弄ってるのか?」


『抑制しているだけです』


「それを弄ってるって言うんだよ!」


『とはいえ、今回はそれほど強い抑制は必要ありませんでした』


「……」


『元々かなり安定されていたようです』


「おい」


『はい?』


「その言い方だと、俺が殺人鬼みたいじゃないか」


『そのような意図はありません』


「本当か?」


『はい』


 少し間があった。


『およよ』


「絶対わざとだろ」


 スタンリーはため息をついた。そこで、帰り道の妙な飛び方を思い出す。


「……ていうか、お前」


『何でしょうか?』


「そんなことまでできるくせに、さっき帰投する時、姿勢制御は随分適当だったよな?」


『……』


「途中、後ろ向きのまま進んでただろ」


『あら?』


「『あら?』じゃない!」


『そのようなこともありましたか』


「あったよ! ついさっきだよ!」


『《誉》は機体姿勢と進行方向を独立して――』


「その説明はもう聞いた!」


『では問題ありません』


「問題は、お前がわざとやったかどうかだ!」


 エディは答えなかった。


「エディ?」


『格納庫へ到着します』


「逃げるな!」


『進入ガイドラインを確認しました』


「話を逸らすな!」


 《誉》は何事もなかったかのように向きを整え、静かに格納庫へ入っていった。

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