表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
25/26

第24章 前世 銀 約束の果て

外部層――


星々の境界が

薄い靄となる


時間が

ねじれていた


上も下も

距離さえ


もう正しくない


黒煙の中心で

暗金の瞳が

人型となって揺れている


ダーク星の王――ゾフ


形は曖昧


だが

意志だけが濃い


ヴィヴィ

マリア

レイラ


三つの光が

転生の門へ吸い込まれていく


ゾフは

その光景を静かに見ていた


「時は来た……」


煙が揺れる


外部層が軋む


三つの光が消える

残滓が拡散する


喪失と終焉


だが

ゾフの瞳は

ただ静かだった


「始まる」


その一言だけで

外部層の温度が落ちた


✦ ✦ ✦


戦場は

音を失っていた


灰が舞う


ヴィヴィのガントレットだけが残る


三つの光が

転生術へ吸われる


世界の呼吸が止まった


シューの拳が

ギリ……と鳴る


「ヴィヴィ……!」


ユジャの表情が

強張る


「……最悪の

悪趣味ね」


空気が

張り詰める


カイザーが

歯を食いしばる


「……何が起きてる」


誰も

全容を掴めない


だが

誰も動けない


もう

戻らない


その中で――


ジンだけが

呼吸を乱さなかった


銀の瞳が

ただ現実を見ている


「……あいつらの帰りを待つ」


低い声

揺れはない


「それまでは

我々で星を守る」


その瞬間――


ボウッ


黒煙が

ジンを包んだ


銀光が反転する

闇へ沈む


――暗銀


シューが

誰よりも早く

その異変へ動く


「ジン!下がれ!」


暗銀の煙が

シューの背後へ回る


ザシュッ


反応できない


暗銀の剣は

未来の動きを

先に切り取るみたいに


胸の中心を貫いた


盾が滑り落ちる


落ちるより早く


シューの翠光が

煙みたいに吸われていく


「…………ッ!」


生命が霧となって散った


翠が消える


場の前面が

一気に脆くなる


「ジン!!

やめな!!」


ユジャが叫ぶ


同時に――


《ヴィオレット・ヴェイル》


多重魔術障壁が

展開される


空間が紫に染まった


ユジャとカイザーの周囲だけ

空気の法則が変わる


カイザーが地を蹴った


赤鬼の百二十の力を乗せたこん棒が

空気を爆ぜさせながら

ジンの頭上へ振り下ろされる


最強の防御魔法

最強の一撃


二つの色が交差する


その中心で――


……スッ


《月影》


銀の影が消えた


世界と世界の狭間へ


ジンの存在が沈む


身体が影みたいに

こん棒をすり抜けた


ユジャの障壁さえ

煙みたいに抜ける


暗銀の剣士は

その交差の瞬間に


一度だけ

剣を水平に薙いだ


――ザシュッ


ただ一音


紫の壁が

ガラス細工みたいに砕ける


カイザーの胸から

鮮血が噴き出した


ラヴィの笑顔が

一瞬だけ浮かぶ


「……ラヴィ」


「約束……

守れなかったな……」


カイザーの声が沈んだ


赤光が

静かに消える


ユジャは

カイザーを見ていた


だから


気づかなかった


いつ斬られたのか


――パキ……


紫の障壁が

胸の奥から割れる


ユジャが

静かに笑った


「……そう」


一拍


「私まで

斬れていたのね」


紫の瞳が

わずかに細まる


指先が胸へ触れる


温かい


(ああ……本当に……)


ふわりと息を吐く


「酷い幕引きね」


紫の瞳から

光が零れ落ちた


紫光が砕ける


紫と赤が

同時に崩れ落ちた


生命の気配は

もう残っていない


暗銀の剣を握る手が

わずかに震える


「……違う」


声は

ほとんど冷気だった


拒絶


暗銀の剣を握る指が

わずかに震える


まだ


ジンは

奥で抗っていた


一拍


闇の底から

古い声が浮かぶ


――いずれ必ず

こちらへ来る


ジャンの声だった


銀の瞳が

最後に揺れる


違う


違うだろ


俺は――


二度目の拒絶は

声にならない


黒煙が

その思考ごと呑み込んだ


瞳は完全に

闇へ沈んだ


✦ ✦ ✦


暗銀の剣士ジンは

口笛を吹く


――ヒュウゥゥゥ……


黒い空を裂き

巨大な黒のワイバーンが降りた


ジンは無言で乗る


光が消える


森が燃える


大地が泣く


ゾフの声が

外部層から落ちてきた


「最期だ……」


暗金の瞳が

微動だにせず

世界の崩壊を眺める


「銀の死神よ

次は

イヴを墜とせ」


沈黙


そして――


「終わらせろ」


その短さだけで

世界が冷えた


ジンは答えない


答えられない


✦ ✦ ✦


――ドォォォン!!


空間が

雷鳴とともに爆ぜた


ゴゴゴゴ……


世界が止まる


セピアの戦場を裂き

白光が逆流してくる


(父上……約束だよ)


レイラの声が響いた


幼い


だが強い


(ジンを……助けて)


その声は

祈りであり

鍵だった


ユジャが

ガントレットへ仕掛けていた魔法が発動する


龍神の魂が動く


白光が黄金へ変わり

ジンの前へ集中する


その中心から――


現代で事故に遭い

死の淵を彷徨う

ヴィオの魂が


数千年を超えて

呼び戻された


ヴィヴィ


黄金が

現実を押し広げる


「……ジン」


低い声


だが

迷いはない


「約束を覚えているか?」


暗銀に染まった瞳へ

かつての友の光が映る


だが――


ジンの身体から溢れる黒煙が

うごめいた


ズル……


ゾフの残滓


侵入者であるヴィヴィを

排除しようと牙を剥く


黄金の光が

残されたガントレットを

ヴィヴィへ導く


ガントレットは二つへ分かれ

両手へ収束する


龍神の光が唸る


現代のヴィオが振るう

二刀《龍》の原点


ゾフの呪縛に沈むジンが

反応した


感情の消えた瞳


暗銀の剣が

蛇みたいに

ヴィヴィの喉元を狙う


(消えろ)


黒煙がうごめく


(世界の外側へ)


――キィィィィン!!


空気が爆ぜた


ジンの最速の一撃を

ヴィヴィは動かずに

出現したばかりの

黄金のガントレットで受け止める


火花が散る


闇と光が

至近距離で噛み合った


「相棒」


ヴィヴィが笑う


「……そんな鈍い剣じゃ

俺は斬れないぜ」


ジン


《月影》――


世界と世界の狭間へ


再び

ジンの姿が

影へ溶けた


ヴィヴィの背後を

完全に捉えた


だが


ヴィヴィは

振り返りもしない


考えるより先に

黄金の左拳が

真後ろの空間を殴り抜けていた


――ドゴォォン!!


影の出現と

拳の到達が

完全に同調する


ジンの瞳が

わずかに見開かれた


光が

影の隙間を許さない


「ジン」


黄金が脈打つ


ヴィヴィが地を蹴る


速い


ジンの動体視力すら

置き去りにするほどだった


黄金の閃光


ジンは

必死に剣を振るう


暗銀の連撃が

空間を縫う


だが――


ヴィヴィの二刀龍は

その全てを

弾かず

包み込むように

無力化していく


(黙れ……)


黒煙が揺れる


(消えろ……!)


ジンが

全魔力を込めた


巨大な暗銀の斬撃


空間そのものが裂ける


戦場が悲鳴を上げた


だが――


次の瞬間


黄金が

ジンの懐へ飛び込む


剣を振るう隙さえ与えない


圧倒的な黄金の圧


だが


恐怖じゃない


懐かしさだった


ジンの動きが

一瞬だけ止まる


黄金の瞳と

暗銀の瞳が


至近距離で交差する


「来いよ――ジン」


――ズシャァァァン!!


黄金の拳が


ジンの胸の中心


闇の核を

正確に貫いた


黒煙が

内側から裂ける


「……おそい……」


血を吐きながら


ジンが

微かに笑う


「んだ……よ……ヴィヴィ」


その表情には


もう


闇だけじゃないものが

戻っていた


身体が足元から

光の粒子へ変わっていく


崩壊じゃない


解放だった


「待ってるぜ」


ヴィヴィは

最後に

悪ガキみたいに笑った


「次は

地球の酒場でな」


ジンは目を細めた


静かに答える


「……ああ」


その一音で

銀が戻る


冷たい声


だが

闇ではない


「次は……

斬るべきものを間違えない……」


言葉の終わりが

光へほどけていく


ヴィヴィの姿も

現代へ引き戻され始める


時間が

場所を取り戻す


ジンの魂は

先に消えていった


マリアと

レイラを追うように


銀の光は

もう迷っていない


約束は

未来へ続いている

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ